劇場公開日 2020年10月16日

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「中国版、オバマケア?」薬の神じゃない! オクやんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5中国版、オバマケア?

2020年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

別れた妻と息子の親権で揉めている精力剤専門店の店主が高額報酬に目がくらみ白血病のジェネリックをインドから密輸入して貧困層の患者に売りさばいていくのだが、暴利をむさぼる製薬メーカーや同業の詐欺師の存在を知るにつれ義賊のように変わっていくヒューマンドラマだ。
最初はタイトルとチラシの構成を見た時は、てっきりコメディ映画かと思ったほどである。
この映画の当初のテーマは、ずばり「貧乏に治療法はない」
格差社会は今に始まったことではないが、金持ちが生きながらえて貧乏人は早死にする社会は矛盾だらけである。エンディングで語られていたが中国でも健康保険が成立し、今では庶民でも手の届く価格でこの薬が手に入る。個人の力が患者たちを動かし国家を巻き込んで社会環境を変えた、民主主義や社会主義などと言ったイデオロギーを超越したところで本作の草の根運動は成功したのだ。これが主人公が成し遂げた最大の功績と言えるだろう。
慢性骨髄性白血病の生存率は当初30%だったのだが、本作で登場した特効薬のおかげで85%まで向上したそうだ。さらに詐欺罪で5年の実刑判決を受けた主人公は3年で出所したことがラストで紹介される。裁判後に護送車に乗った主人公を大勢の患者たちが感謝を込めて見送る場面は、あざとい演出なのだがやっぱり泣かされてしまう。最初は金銭欲、最後はヒューマニズム。その途中にあった悲喜劇を手際よくさばいたエンタメ作品だった。

オクやん