「2時間ドラマであれば良いのだが、映画としては...」ドクター・デスの遺産 BLACK FILE バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
2時間ドラマであれば良いのだが、映画としては...
いきなり冒頭で映し出される、逆に今時代には使わなくなってしまった様な「いかにも」なテレビドラマ的オープニングから、不安を煽ってくる作品である。
huluやWOWOWのドラマ選考試写というのであれば、ドラマと納得したうえで観に来ているわけだから良いのだが、映画として観に来ているのにも関わらずドラマテイスト全開というのは、いかがなものだろうか。
結果的にテレビドラマの延長線みたいなドラマだと感じること自体も良いことではないが、冒頭からそれが感じられてしまう映画というのもなかなか珍しい。
日本テレビが制作しているから、テレビみたいだという理由にはならない。好き嫌いはあるにしても、同じ日本テレビ制作の『カイジ』や『デスノート』は、映画として成り立っているからだ。
さすがモデル出身ということを感じさせる北川景子のスタイリッシュなスーツ姿は画になるが、どこかで観た感じがしてならないし、綾野剛のやさぐれた役は、どこかで観た感じがする。画としてのおもしろさにも欠けてしまっているのだ。
何故か登場するキャラクター達の演技から、古臭さを感じてしまい、表情やセリフのひとつひとつがコミック化されているようでならない。
「安楽死」という非常にデリケートな題材を扱った作品で、白黒はっきりするようなものではないはずなのに、綾野剛演じる主人公犬養の性格がかなり大味という部分がスートリー上でかなり違和感を残すし、どうも頭の悪いキャラクターという印象しか残らない。
犬養というキャラクターは、妻に先立たれて、娘が移殖を受けなければ生きるが難しいという難病を抱えているという設定で、実は「死」に対して、一番敏感でありながら、刑事という仕事上の葛藤を描く器とされている、かなり重要な立ち位置にいるのだ。
ドクター・デスの依頼主とされる遺族は、被害者の苦しみ、周りの家族の苦しみを取り除くために依頼しているだけに、サイコパスによる猟奇殺人ではない。法律上では、違法とされる「安楽死」は、本人や家族にとって苦しみを取り除く手段だとしたら、それを「悪」や「殺人鬼」と分類することができるのだろうかという、一番重要な「描き所」というものが、全体的にスベってしまっている。
主人公側も犯人側も倫理的に白黒つけられないことが多く転がっているだが、それを無理に白黒つけてしまっていることでキャラクターに深みがなく、観ている側の倫理観を掻き立てようとは、一切しようとしていないのか、全体を通しておいしい具材があるのにスルーしてしまっているという非常に勿体ない作品だ。
原作はシリーズものであっても、映画はあくまで単発で終わるわけだし、補足ミニドラマがあるわけでもないのに、キャラクター達の関係性や過去のエピソードなどが雑でわからない部分が多い。だからドラマの1エピソードとしてなら、良いのだが、映画としては大味すぎるのだ。
重圧なテーマがこんな安っぽくされてしまったことに対して、原作者は怒っていいと思う。