「季節は雄弁である」チィファの手紙 しんぐちゃんぐさんの映画レビュー(感想・評価)
季節は雄弁である
4連休の最終日。チッタデッラは4か月遅れの「はいさいFESTA」で賑わっていた。名画通りのアメリカンダイナーでも、この日ばかりは沖縄音楽が流れ、泡盛やオリオンビールが提供されていた。映画館の座席も通常販売されるようになったが、こちらは依然として客足が鈍く、心配である。
岩井俊二監督の「チィファの手紙」は、正月に公開された自身の監督作「ラストレター」のリメイクである。正確には中国版の方が先に撮影され、中国映画として公開されたらしい。当然であるが、登場人物やストーリーどころか、セリフも殆ど変わりはない。
それなのに、これらは趣きの異なる別個の作品であった。もちろん、舞台となる日本と中国の違いがある。役者や言語や文化も異なる。けれども、所詮は人間の営みであり、それは大した相違にならない。
決定的に異なっていたのは、季節である。季節は雄弁である。夏の陽光が瑞々しい日本版と、冬の弱い日差しが重苦しい中国版と。2つの作品を並べてみると、見事なまでに、季節が映画の中に切り取られている。改めて季節の凄さ、重要さを実感した。
岩井俊二の甘美なセンチメンタリズムが鼻につき、離れた時期もあったが、自分も十分に年齢を重ねたのだろう。あり得ない設定や都合の良い展開も、最近は素直に肯定できるようになった。日本版も中国版も、どちらも本当に素晴らしい。やっぱり映画は、ドラマティックであって欲しい。
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