はちどり(2018)のレビュー・感想・評価
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はちどりの飛ぶころに
1994年,それは北朝鮮のキム・イルソン主席が死去した年であり,聖水(ソンス)大橋崩落事故が起こった年でもあった。高度経済成長の歪みが現象として吹き出した象徴的な年だ。映像は,学生としてその時代を生きたキム・ウニ(パク・ジフ)の心象風景を写し取るように浮遊感を漂わせている。ウニは,同級生の男の子と興味本位で交際し,年下の女の子から好意を寄せられている「普通」の女の子である。しかし,家庭には居場所がなく孤独を感じている。ウニに無関心な大人たちに囲まれた彼女の周りには退屈な日常しかなかった。ある日,通っている塾に若い女教師ヨンジ(キム・セビョク)がやってきて,ウニは話を聞いてくれる彼女に心を開いていく。「話を聞いてくれる」ヨンジは,孤独なウニにとって親しみを持てる大人であり,メンター的存在として憧れの対象だった。ヨンジはウニの吸えないタバコを吸い,ウニの知らない言葉で喋った。やがて,ヨンジは理由もなく失踪してしまい,ウニはまた退屈な日常へと放り出される。人がやってきてすぐにいなくなってしまう欠落の構造は,村上春樹的な世界観を彷彿とさせる。しかし,その喪失は少年少女が経験すべきものであり,「成熟」への契機である。ウニから見た世界は瑞々しいが,そこから物語のすべてを読み取ることは難しい。呼びかけても応えない母親,開かない扉,急に泣き出す兄。それらは「説明不足」なのでなく,ウニからすれば「そう見えた」のだろう。カメラは常にウニの視点に立ち,作品世界はリアリズムによって構築される。寄り添ってくれていたヨンジがいなくなっても,カメラだけは彼女を見放さない。別れを経験し,大人に近づいたウニを優しく見守るラストシーンは非常に印象深かった。
何も出来ないようで、指は動かせる
『顔を知っている人はいても、本心を知っている人は何人いる?』
この映画のテーマはソンセンニムが突然姿を消した理由ヲ知る事だも思い、もう一度見たが、分からなかった。
しかし、最初にあげたセリフがそれを語っているのかもと今回は諦めた。また、次回機会があれば、3回目の鑑賞をしようと思う。
閑話休題
三十年前の韓国での出来事なので、今は変わったのだろうか?まだ、韓国社会は昔のままなのかもしれない。相変わらずで。しかし、それは日本も同じ。
さて、韓国の出来事で、また橋が落ちて、女性の方が亡くなっている。冥福を祈る。
思春期の中学生を丁寧に描いた瑞々しさがハンパでない
キム・ボラ監督による2018年製作の韓国・アメリカ合作映画。原題:House of Hummingbird、配給:アニモプロデュース。
遠い昔の忘れていた自分が思春期であった時の気持ちを少し思い出さしてくれた。ただ、女性監督ならではの視点というか、ボーイフレンドとキスし合い戯れ、下級生から慕われ先生に憧れる繊細な感情の描写が瑞々しくてとても新鮮に感じた。
また、1994年当時の韓国の日常描写も興味深かった。カラオケにディスコは日本と同様も、漢文塾という存在は韓国独自で新鮮であった。また兄に対する親の教育熱の凄さは日本以上か。
まあ家族関係と学校・塾を中心とした中学生の世界を丁寧に拾っており、日本で作られても良いタイプの映画だが、実際は存在せず、韓国人監督によりみごとに構築されたのには少し悔しく感じた。
監督キム・ボラ、製作キム・ボラ、撮影カン・グクヒョン、脚本キム・ボラ。
出演 パク・ジフ:ウニ、キム・セビョク:ヨンジ、チョン・インギ:ウニの父、イ・スンヨン:ウニの母、パク・スヨン:ウニの姉スヒ、キル・ヘヨン:ヨンジの母。
淡々と…
淡々と、人生良いこともあれば、悪いこともある、ドラマチックではなく、あまりにも平凡な映画に感じてしまった。期待しすぎたのかも知れない。家父長制が色濃く残る当時の韓国において、3人兄妹の一番下の娘ウニはヒエラルキーでいうと一番下。家族は父を初め、長男の教育には熱心で、そのためにみんな協力しなければならない。プレッシャーもあるだろうが。父はうるさく偉そうに指図ばかり、浮気してるし、母は無関心、兄には暴力を振るわれ、姉は不良、ウニに優しく語りかける家族はいない。ウニが入院退院しても来ない。恋人も浮気、マザコンでふらふらしてるし、塾の友達にも裏切られ、ウニを慕っていた後輩も学期が変われば心変わりされる。そんな心の内を唯一相談できた塾の先生も橋落下事故で死んでしまう。本当に自分の心の内を語れる人って、そんな簡単にいるだろうか。まぁ人生はそんなもん、って話。
少女は静かに大人になった
主役の子がとても良かった。幼さの残る笑顔、時折みせる大人のような静かな瞳、どれもとても魅力的だった。
この映画を観てまず思ったのは、韓国の家庭の在り方だった。ひと昔前の日本じゃないけれど、圧倒的な学歴社会、偏差値の高い高校からトップクラスの大学には入ることが、成功への道と信じられてる。そして、お父さんの言うことは絶対なのだ。子供達を愛するが故に自分の価値観を押し付ける父親、長男であるが故にプレッシャーで妹に暴力を振るう兄、夜遊びの姉、なんだか子供に無関心な母親など、信じられる大人がいないのだ。
そんな中で会う塾の先生に自分を守ることを教えられる。
ここから彼女は急速に成長していく。
普通の女の子が、悩みながら成長する過程を丁寧に描いて、静かな感動をくれる映画だった。
はちどりの羽ばたき
監督のキム・ボラは本作が長編デビュー作で、実体験がベース。
だとしたら、何と痛々しく、悲しく、切なく、でも優しく、温かく、美しく。
複雑な感情が交錯しつつも、思春期の感情がリアルにひしひしと伝わって来る秀作。
好景気に沸く1994年の韓国・ソウル。
その片隅の集合住宅で、両親、兄姉と暮らす14歳のウニ。
受験競争の学校にはついていけず、友達は別学校の生徒。
時折その友達と悪さをしたり、ボーイフレンドや後輩の女子生徒とデートをしたり。
それもこれも両親の気を引きたいから。
両親は仕事が忙しく、全く見てくれない。
唯一見てくれるのは、優秀な兄だけ。
しかし、この兄が問題。
両親が見てないのをいい事に、しょっちゅう暴力を振るってくる…。
ここから見えてくる韓国社会の問題。
以前見た『82年生まれ、キム・ジヨン』と通じる。
圧倒的な男性上位。
それは、家庭の中でも。
父親は絶対。所謂、昔の日本のような家父長制。
この父親は特別尊敬に値するいい父親にはどうしても思えない。口を開けば、仕事や世間に愚痴、家族に対しても説教…。
父親は百歩譲ってまだ分かるとしても、兄が卑屈。
一度、兄が暴力を振るっている事を両親に訴えたが…、両親はまともに取り合ってくれない。「兄妹喧嘩はよして」
母親は毎日疲れているように生気ナシ。
孤独感、息が詰まるほどの閉塞感…。
もしあの時、あの人と出会えてなかったら、私はどうなっていたんだろう…?
通っている漢文塾。
新しい教師がやって来る。
女性教師のヨンジ。
何処か不思議な雰囲気のヨンジ。でも聡明で、何よりウニの話に耳を傾け、聞いてくれる。
こんな鬱憤だらけの日々の中で、先生と会う日だけが唯一の楽しみになった。
思春期の少女が年上の女性に憧れを抱くのはよくある事。
同性から見ても素敵だから。一緒に居て楽しいから。良き理解者だから。助言者だから。
「殴られたまま黙っていてはダメ」
思春期の少女の悩み、心の揺れ、家族や周りとの関わりを繊細に描いたキム・ボラの演出は、これが長編デビューとは思えないほど。『82年生まれ、キム・ジヨン』のキム・ドヨン同様、韓国からまた才能ある女性監督が続く。
本作は監督の実体験がベース。監督の少女時代となったパク・ジフのナチュラルさ、瑞々しさ。そこに複雑な感情も体現。
ヨンジ役のキム・セビョクが好助演。劇中の役同様、不思議な魅力で印象を残す。
ある時、耳の下にしこりが見つかったウニ。
心配し、私の為に泣いてくれた父。
初めてというくらい家族の温もりを感じた。
手術、入院。
友達や先生も見舞いに来てくれた。
病室の人たちもいい人たち。
退院は早かった。
少女は皆の温かさに包まれて…。
まるでハッピーエンドのようで、これで終わりかと思いきや、そうじゃなかった。
とにかく本作、多感な年頃の少女の心情をまさしく表すように、淡々としながらも展開が変わっていく。
先生が突然塾を辞めた。最後に会えなかった。
それが原因で塾と揉め、塾をクビに。
当然、家族は激怒。
またウニの鬱憤が募る。
本作はほんの数ヶ月の出来事。
“北”ではトップが変わり、韓国社会も変わりゆく真っ只中。
経済も急激に発展。
自分の周りも変わっていく。
そしてまさか、この2つのある悲劇に見舞われるなんて…。
1994年に起きた聖水(ソンス)大橋陥落事故。
日本人なので全く知らなかったが、韓国では知らぬ者は居ない、手抜き工事が原因で多くの犠牲者を出した大事故らしい。
姉はいつもバスでこの橋を渡って通学していた。その日は通学に遅れ…、助かった。
今度は兄が涙する。家族の一人が犠牲になっていたかもしれない。
やはり、家族なのだ。
しかし…、犠牲者はいた。
先生から小包が届いた。
それを頼りに先生の実家に会いに行く。
先生の母親。悲観に暮れた表情。
くどくど言うまでもないだろう…。
この世界は時に残酷。
大事な人を一瞬で奪っていく。
出会えたのも、ほんの僅か。
でも、その出会いがあったから。
家族ともやっていける。
私自身も羽ばたいていける。
はちどりの羽ばたき。
14歳の目に写るもの。
かごの中のはちどりに例えられるのは、主人公のウニなんでしょう。
力もなく、翻弄される、14さい。
鳥のはちどりは、蜂のように音を立て羽をはばたかせて宙に浮くのではちどりというらしい。
wiki先生によると体重2~20g!!はかない生き物なんですね。
1994年で14さいなのだったら、わたしより一つ上なのかな。
90年代を10代(若者)として生きた作家たちが、内省ののちにその時代を描く年頃になったということですね。
94年は、阪神大震災と地下鉄サリン事件の前年。
わたしは13さいになる年で、不仲の両親に4人目の子どもが生まれた年でした。
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父、母、兄、姉、ウニという5人家族
ソウルのマンションに暮らす
父母はお餅屋さんを営んでおり忙しい
学校ではちょっと浮いてるのかな?
漢文塾に一緒に通う子が友達
彼氏がいる、後輩女子にもモテる
お兄ちゃんは、長男だから両親(父)からの立身出世へのプレッシャーがきつく、ウニを殴る
お姉ちゃんは、夜遊びしたいお年頃で、父に隠れて出かけて、見つかって殴られたりしてる
お母さんは、家事と家業に疲弊。いろんなことを見て見ぬふりしている感じ
お父さんは、説教こそが父の役目と思っている感じ
ウニの境遇は、よくもないけどすごく悪いわけではない。
両親がすごく愛情深いとかってわけじゃないけど、衣食住に困ることなくそこそこちゃんと子どもらしくいさせてもらえる。
学校も面白くはなさそうだけど、そんなもんといえばそんなもん。
ただ、14さいの日々に起きる小さな不満や疑問を全く無視して世界が進んでいて、ウニは何をどう生きればいいかわからないという感じ。
そのぽつんとした感じがよく伝わってきた。
世界の中にぽつんといる、はちどりに例えられるほどか弱いウニが、漢文塾の女性教師と出会い、世界の中にぽつん、である現状を、分かるよと言ってもらえてすごくうれしかった、でも先生は事故で帰らぬ人になった、というお話。
25年くらい前の雰囲気、10代のぐらぐらした気持ち、家族に大事にされない不安、友達も彼氏も水物過ぎてあやふや…そういう知ってる世界が密度濃く描かれていて、夢中になってみた。
1986年の韓国の政変について、ぜーんぜん知らないので、先生のバックグラウンドがわからなかったです。
他の韓国映画をみても、1986年は大きな転換点のようなので勉強した方が鑑賞に奥行が出るのだろうなと思った。
子どもと大人の間を描く
両親と兄・姉の5人家族のウニは自営業でしつけが厳しい父親のせいで礼儀はきちんとしているが、学校では居眠りをしたりして、クラスメートからは不良っぽいと思われている。別の女子中学の親友と通っている漢文塾に来た新しいソウル大学休学中の女の先生が、これまで出会った大人とは少し違うタイプで、心を開いていく。親友と遊び半分に文具店で万引きをしたら見つかってしまい、親友に裏切られるという経験をした時も話を聞いてくれた。そんな中、耳の裏のしこりの切除で数日間入院することになり、先生もお見舞いに来てくれ、立場の違いを超えて分かり合える気がするのだった。しかし退院後、塾に行くと先生は退職してしまっていた。
主人公の女の子のとびきりの透明感とは反対に、周囲の友達たちはとことん普通で少し露骨。塾の同級生が付けているマスクがユニクロみたいなデザインで20年以上のものとは思われず、監督がなぜ1994年を舞台にしたのかが最後の事故でやっとわかったが、逆にその事故でなければならない必然性はわからなかった。「中二という微妙な年頃を、1994年の韓国社会を背景に描いた作品」というのが作為的に感じられ、小学生を描いた同じ韓国映画「わたしたち」の方がずっと良かった。
容姿が及ぼす影響力
爽やかな青春映画だと思って見に行ったら、けっこう重い映画だった。
主人公の女子中学生はかなりの美少女なのだがストレスフルな環境に心を折られて無気力症に陥りかけている。
そんな闇をまとった危うい感じがまた魅力的に見えて、容姿が及ぼす影響力の強さを考えさせられてしまった。
これで主人公が不細工だったら、もっと陰鬱とした映画になっていたと思う。
男尊女卑が昭和レベルで見ていて辛いが、礼儀正しい感じはいいなあと思った。
思春期なんて毎日嫌なことばっかりで、だからこそ、たまにある娯楽が感動的に楽しかったわけである。
この主人公の場合マンガにハマってるわけだが、絵も下手だし多分漫画家になる確率は低いだろう。
今の時代だったら顔出し配信者としてネット界で稼げそうだ。
そういう可能性が少なく閉塞的な90年代だが、その分現代にある汚さもない。
お母さんが娘に肩を揉んで貰ってるシーンが気持ち良さそうだった。湿布の上から揉んだり揉まれりした経験はない。真似してみたい。
未だ青い少女達への応援歌・・・監督の優しい眼差しに溢れた作品
いざこざが起きても揃って食卓を囲み、喧嘩をしても
(DVは論外ですが。。)本気で心配をする、そんな
彼等の姿に、家族に対する監督の思いを感じました。
作品全体を通して、柔らかな光や色調に包まれており、女性監督らしい優しい眼差しに溢れていました。
「ウニ」、韓国ではどういう意味が込められた名前なのでしょうか。
主演の少女の素直な演技に好感が持てました。
映画館での鑑賞
思春期あるある
家族問題、教師や大人への不信感、友達との喧嘩、異性への興味や悩みなどなど繊細で感受性の強い思春期のあるあるが詰まった映画でした。
ただ全体的には大きな盛り上がりはなく平坦的な描き方なので好き嫌いの別れるタイプの映画かもしれません。
高評価されているが
映像は美しいし、俳優たちの演技も素晴らしい。韓国作品は骨があるといつも思う。
しかし、本作は正直、高評価を受けている理由が分からない。映画祭ではいくつもの賞を受賞した、何故なんだろう。
完全に個人の感想であるし、私は映画をさほど知らないので、映画を批評する力はないことを断るが、
まず気になったのは、人間関係の構築に至るまでの過程の描写不足。ウニが先生とああまで親密になれたのは何故か。先生がウニに親切だったから…としか読み取れない。そもそも、先生とウニの関係が主題であるはずだが、圧倒的に2人の場面が少なく、納めきれていないように感じる。
ウニが「先生大好き」と言って抱きついた時、私は違和感を感じた。親密になるまでの幾つか必要な過程を飛ばしてしまったように感じる。
なにもフォレストガンプ程に人の過程を説明して欲しいとは言わない。
私には是枝監督作品の類似作品にしか思えなかった。物語の展開に関しても盛り上がる部分がない、あえて言うなら橋が落ちる場面だろうか…それにしても弱すぎる。
エンディングも呆気なく、よくあるシーンという感じであった。リアルな生活を描きたいのは伝わるが、私には合わなかった。芸術映画なのか、エンターテインメントなのか、どちらつかずである。
高評価されているから高評価にしている人も中にはいるのではないかと感じてしまうほど、高評価の意味が分からない。
全て個人の感想である。
私はおかしい子じゃない
まず、私はこんな家庭には生まれたくないな、、、というのが率直な感想。
親が子を思う愛情を履き違えてる感もありながら、そうでない部分もあり。あれっ!愛情あったの!!?と思う部分と交差しながら。
ウニがほっとできる所は、塾の先生と。
入院中や、病院の先生といるときもほっとできてるように思えた。
ウニの心の葛藤がとても表現されていた。
ウニが家で、もどかしさからか、やるせなさからなのか、
足をダンダンと音を立てながら、感情をぶつけるシーン。
『おいおい、下の住人から苦情くるでしょー』と
からの『ピンポーン』チャイムがなった。
ほらね、苦情きたでしょうよー。
と思いきや、まさかの
『小包でーす』
マジか(笑)
キム・ウニ14歳(君は私だよ)
あんりゃーー、こぉりゃ良いわーーー。
欧州的、東欧的。例えばポーランドとか旧東ドイツとか。
フランスじゃないし、絶対に英国でもないし。
ここんとこ、毎週韓国映画を見てる気がしますけど、これがダントツに良かった。
ハチドリは、色んなものの象徴として扱われる存在ですが、それは地域・時代により全く異なるという珍しい存在です。
戦神。メッセンジャー。儚いもの。
映画タイトルに込められた意味は「儚きもの」かなぁ。
この世界は、しょせん「儚いもの達の仮の住まい」に過ぎない。何が正しい生き方か、間違った生き方なのかに答えなどない、移ろう儚い世界。だから、どう生きるかは、あなたが決める事。そうして生きて行く日々が、愛おしく、素晴らしい。的な。
初めてのボーイフレンド。してみたかっただけのキス。親友との不良遊び。裏切り。別れ。家庭不和。垣間見る両親と言う名の大人の世界。女子高あるある。ちょっとした病気。残るかもしれない傷跡。大人たちが騒いでいるけど良くわからないニュース。年上の女性への憧れ。大きな事故。二つの死。背伸びと成長。
14歳の少女の120日余りの日々を通して描かれたものは、そんなものたちで、誰もが経験して来たこと。大人たちがここまで来るときに経験して来たこと。14歳の少女が特別な行動を起こさないところがリアルでした。
君は俺だよ。私だよ。私達だよ。
って言う映画でした。
主演ののパク・ジフは2003年生まれの16歳。先生役のキム・セビョクは、ホン・サンス監督作でお馴染みのベテラン女優。監督・脚本のキム・ボラはコロンビア大学院で映画を学んだエリート。
14歳の少女を軸に描かれた静かなリアリズムは、あまりにも韓国離れしています。喜怒哀楽の4要素のデフォルメを排除した、本当に欧州的な世界観が新鮮。だけど。長いってw
とにかく、長い。これが難点ですかねぇ。飽きるよねぇ。要らんエピソード、幾つかあるよねぇ。って思いました。
いずれにしても、キム・ボラ監督とパク・ジフには、今後も注目ですです。
良かった。とっても。
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7/30 追記
ラスト。社会見学だか何だかわからないけど、集合場所に集まった同級生たちを見つめるウニの場面。ルイ・アームストロングの "What a woderful world" の世界だよねぇ。
で、グレタ・カーウィグの "Ladybird" の中で、進学が決まり、街を離れることになったシアーシャ・ローナンが、街の景色を心に刻み込むためにサクラメントの市街をクルマで走り回る、あの場面を連想してしまいました。
同じだよなぁ。
女性監督が奇しくも。
この時代に、What a woderful world" の世界をテーマに選ぶんだ。
Positiveで良いですよね。とにかく、Positiveなテーマが良かった。
14才の孤独
学校でも家庭も居心地が悪くて、親友や彼氏も気持ちが移ろっていき、頼りにならない。ようやく出会えた理解者も、いつ会えなくなるかはわからない。14才にとっては限られた人間関係が世界の全てだから…。その孤独感はなかなかつらいものがあった。
終始、静かで穏やかだけど、確実にウニの世界を見る目が変わっていく。その姿は綺麗だった。
何気ない日常
ウニは、中2です。
末っ子。韓国は、お父さんは、絶対だ!
お兄さんとお姉ちゃんがいます。
思春期で、ボーイフレンドやタバコ吸ったり
カラオケ行ったりします。
1994年の話だよ。お兄さんは、いつもウニを殴ります。そんなウニは、塾の新しい女性先生に出会います。
殴られたら黙ってたらダメって言うんだ。
そして2つの事件に遭遇します。一つは、北のボスがなくなり、手抜き工事で橋が落ちます。
悲しい出来事があります。何気ない日常を
淡々と描いているいい作品でした。
2020年ベストムービー!⭐️✨
仲違いした主人公とその友達のために、塾の先生が歌を歌ってあげる場面や、一緒に烏龍茶を飲むシーンは、なかなか美しくも心落ち着く情景で、感動的でした。
*世代や時代を超えた、それぞれが抱える"理不尽"さに対する怒りが、スクリーンを通して伝わって来ました。
今年最も観るべき作品の一つだと思いました。
名作です。
*学童期に団地住まいをしていたので、色々と共感出来るシーンが多かった。
あの狭い空間での兄弟喧嘩や、心に溜まった鬱憤が放出されていかない密閉された感じ、そして、音楽に合わせて踊り出したくなるとか(笑)…監督の細かい演出ひとつひとつが気が利いている。
*姉が事故に巻き込まれたのでは!!!と自宅に思わず電話するウニの不安感…心ここに在らずな思春期の、心許ない心情の最大の不安感を見事に演出していたと思いました。
*2時間越しの長い映画ですが、また観たいと思わされる作品でした。また観たい…(笑)
少女時代の刹那を切り取った喪失と希望
わからんかったっていう人、もったいないな。
顔だけ知ってる400人のうち心まで知ってる人が人生で何人現れるだろう。漢文は深い。
根幹にあるテーマは少女時代の刹那を切り取った喪失と希望の物語だと思う。
はちどりというタイトルからして絶望の世界に希望を運ぶ愛の鳥。脆さはかなさの象徴の鳥。
この映画には希望を見出したいと思います。
彼氏も後輩もいい時だけ寄ってくる自分都合の親しみでしか無かった。
本当に心がわかる人なんて人生でそうなん人も出会えないんだ。
そんな中でウニはヨンジという心のわかるすばらしい先生に出会えて幸せだと思う。
タバコを吸う大学を休学しているある意味アウトローなかっこいい漢文塾の先生。ましてや木村佳乃と手塚理美を足して2で割ったような美形で優しい女の先生は少女なら憧れると思う。
担任がクソ担任なだけに余計にね。
コロナ時代、会えない人去って行く人もいるけれど、そんな時こそ本当に自分にとって大切な人がリトマス試験紙のようにあぶりだされました。
時代背景はポケベル時代の韓国の1994年だけど日本ではオウムのサリン事件、阪神・淡路大震災も近いあたり。大切なものを見極める時代ってことは今に通ずるものがあって沁みました。
暴力を振るう兄もエリートを期待されすぎたしんどさからの未熟な行動だし、橋の事件で泣き崩れる弱さもある家族の一員である。
クソ親父も手術前には泣いてくれるし母親も夫婦関係を空気のような存在のクローゼットに例える寂しさの中、いつも焼きたてのチヂミとか仕事で忙しいのに手作りのご飯を出してくれる優しい存在。
姉の優しさもひしひし感じる。父親の目をかいくぐって先生を失った橋まで行くシーンが良かった。
家族は最後の砦なんだなと思う。
先生に貸した本がスタンダールの赤と黒だったところも個人的にはツボでした。
浮気クソ親父も含め不良第1号の姉も母もウザイところはあっても家族というのは同じ巣の鳥なんだ。
音楽が絶望的にダサいけど90年代だからやむなし。
そんなことを含めてもそれを超絶する響きがある良作でした。
14歳の女性を通して描く14歳の社会。
おそらく、ある種のコンプレックスや抑圧から生じる男たちのマッチョで幼稚な行動や言動。そしてそれらへの恐怖や保身から呆気なく翻意せざるを得ない女たちの振る舞い。それらをじっと見つめる14歳の左利きの主人公の、世界に対する違和感と揺れ動く感情を通して描かれる1994年という時代。1987年以後、軍事政権から民主政権へと移行し、1988年にはソウルオリンピックを迎え、高度経済成長のさなか、社会は、さながら14歳の思春期を迎えた少女のように、様々な場所で様々な軋みや綻び、あるいは崩壊の様相を呈し始める。ソンス大橋の崩落事件、再開発に対する住民運動の挫折、本来なら社会的優位に立っているはずの男たちのグズグズな姿。何の前触れもなく起こるそれらの出来事の数々を、本作がデビュー作となるキム・ボラ監督は、ロングショットを多用し、あくまでも距離感を持って淡々とさりげなく描き出す。
どこかエドワード・ヤン作品を思わせる、限られた世界と人物関係が描かれるミニマルな内容と構成ながら、その実、社会全体を描き出す手腕には目を見張るばかり。
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