「ずっとダメですよ。」MOTHER マザー KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
ずっとダメですよ。
強く依存し合う母親と息子の歩み行く道。
何もしないくせに所有欲だけは異常に高い、秋子の言動が終始理解できなかった。
二人の子供を想う言葉なんて一言も出てこない。子供を追い詰め利用しているだけ。
今にも男と逃げ出しそうなものなのに、周平と冬華は絶対に離さんとするその姿勢は何なのか。
どれだけ金がなくても絶対に働かない、常に誰かに寄りかからないと生きていけない、もう完全に病気でしょう。
どうしてあそこまで堕落してしまったのか、今までどんな生き方をしていたのか、知りたくて仕方ない。
その辺の描写が一切無いのはわざとなのかしら。
世界の全てが母親の中にある周平の痛々しさ。
たった一度だけ、自分のやりたいことを主張したシーンがとても好き。
「亜矢さん、ごめんなさい」のメモも。書き間違いの跡がどうしようもなく愛おしい。今すぐ抱きしめて冬華と共に家に連れて帰りたい。
ヘルプを出す気もない少年に何も出来ないもどかしさを常に感じる。
秋子の中から抜け出して欲しいと、外に出た方が幸せになれると、そう思うのは外野のエゴでしかないのか。
「ずっとダメ」だなんて言わないで欲しい。
でも、側から見ても「ずっとダメ」なのは明らかなんだよね。どうしたって。
起きていることは絶望的にしんどいに、そのしんどさをあまり感じられないまま観ていた。
こんなにもわかりやすく苦しい物語なのに。
おそらく、価値観が全く合わないのだと思う。
秋子からも周平からも、愛とか情とか、そういうものが全く感じられない。
周平は「お母さんが好きだ」と言うけれど、それしか知らないだけでしょう。
切っても切っても繋がり続けてしまうのが家族の情だと思っている。
こんな状態でいるのに一度も切れないまま、一度もすれ違わないままでいられるなんて、愛とか情とかじゃなくて、ただの依存でしかないのでは。
秋子のあり方も違和感が強い。
どれだけ虚ろな表情を塗りたくっても消しきれない長澤まさみの健康美が鼻についてどうしようもない。
ドスの効いた声も迫力が足りず、「〜だよぉ!」という語尾になんだか気が抜けてしまう。
たぶん私は彼女の演技が苦手なんだと思う。
リョウの存在が不思議だった。
彼はなぜ秋子たちと一緒にいられたんだろう。
あんな行きずりで出会って、でも好きだったんだろうか。そんな感情が彼らにあるんだろうか。
わからないな。