「人間の風景。」MOTHER マザー 時示郎さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の風景。
この作品のメッセージやテーマとはこうした風景の切り口にあるのだろう。タイトルからは家族愛や他者への想遣り、さらには作品内における木野と長澤との共依存関係を問うようにも思える。個人の境遇に関らず、誰もが身につまされたり共感したりする部分がある筈だ。クズだが憎めない内縁男女の爛(ただ)れた人生を主演ふたり(長澤+阿部)が重さを排して見事に演じるので最後まで眼が離せない。ラストパートにもうひとつ、ある不条理が提示される。他愛ないストーリーではあるが見応えは充分。現代日本社会の急所を突いた異色の問題作である。
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