「傍観するのではなく、自分に何ができるかを問う」MOTHER マザー 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
傍観するのではなく、自分に何ができるかを問う
製作陣も参考にしたであろう当該事件のノンフィクション本『誰もボクを見ていない』(山寺香著)を読んだ。毒親で息子との共依存関係を生んだ母を非難したり、貧困や虐待や居所不明児童を放置する社会も悪いと糾弾するのは簡単だが、それでは済ませられない。そんな著者の思いをこの劇映画も確かに汲み取った。
夏帆演じる児相職員や仲野太賀のラブホ従業員など、家族を支援しようとする人物は架空だが、実際に助けようとした大勢のエピソードを取捨選択して効果的に配した(港岳彦の脚本が手堅い)。彼らが手を差し伸べても、その手をすり抜けるように母子は消えてしまう。ほぼホームレスの外見のこんな母子を町中で見かけたら、あなたは声をかけたり、実際に助けたりできるのか。そんな難しい問いを孕む。
共感されることを拒む役作りに徹した長澤まさみは新境地。周平役・奥平太兼の物憂い目が哀しく、「誰も知らない」の柳楽優弥を彷彿とさせる。
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RibForeverさんのコメント
2020年8月2日
そういう解釈でいいんですよね
劇場でのお客さんの感想を盗み聞きすると、誰が嫌いだの誰が悪いのだの、正に傍観者の無責任な発言ばかりで、こんな奴らが日本人の多数派を占めているからこその結果なのだとひしひしと感じました。
明子を作ったのは他ならぬ日本人の無関心さですね。