とんかつDJアゲ太郎 : インタビュー
北村匠海×伊藤健太郎「とんかつDJアゲ太郎」 芝居を超えた最高のグルーブ、親友同士のふたりが見据える未来
「とんかつとDJは同じだ!」――映画「とんかつDJアゲ太郎」は、ぶっ飛んだ驚愕のアイデアからスタートする。東京・渋谷にある老舗とんかつ屋の跡取り息子・アゲ太郎がクラブミュージックに魅了され、とんかつもフロアも“アゲられる”男を目指す、抱腹絶倒のコメディ。10代で共演したドラマ「仰げば尊し」以来、俳優として切磋琢磨し、プライベートでも親交を深めているという北村匠海と伊藤健太郎に、本作で見出したお互いの新たな魅力、“芝居を超える瞬間”だったという共演シーン、ともに第一線で活躍するふたりの未来について、存分に語ってもらった。(取材・文・写真/編集部)
「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ」「チワワちゃん」など、若者の“今”を切り取ってきた二宮健監督が、「少年ジャンプ+」に連載された同名ウェブコミック(原案:イーピャオ氏、漫画:小山ゆうじろう氏)を実写映画化。北村は主人公の駆け出しDJ・アゲ太郎、伊藤はIT企業社長で、人気DJでもあるというカリスマ・屋敷蔵人を演じた。まずはコメディ映画に初挑戦した北村に、撮影を振り返ってもらった。
北村「コメディの中でもかなりエッジの効いた作品です。最初はコメディへの意識があったので、『面白く演じなきゃ』と思っていましたが、途中から自分の芝居のスタイルに変換していきました。最初はなかなかつかめないことが多くて、『これは果たしてコメディなのか? 僕がやっていることは面白いのか?』と、迷いながら演じていました(笑)」
とんかつの被り物&レコードを身につけ全身タイツ姿で踊ったり、タンクトップ姿で渋谷の街を走り回ったり、憧れの女の子・苑子(山本舞香)にキレキレのダンスでアプローチしたり……。北村が体当たりで挑んだポップな爆笑シーンを、たっぷりと堪能することができる。
北村「撮影中は皆に『面白いよ』と励まされながら頑張りました(笑)。被り物を被ると、『何でもできる』という気持ちになったりして。あと、ダンス経験があったので、ほど良く踊ることができてしまうのはネックでした(笑)。二宮監督に『ださくしてくれ、ちょっとかっこいいんだよな~』と言われたりもして」
伊藤の目に、新境地を開いた北村はどのように映ったのだろうか。
伊藤「『パンチ効いてるな、頑張っちゃってるな』と、陰ながら見させてもらいました(笑)。匠海があれだけはっちゃけてるから、(アゲ太郎の幼なじみである)“三代目道玄坂ブラザーズ”のメンバー(加藤諒、浅香航大、栗原類、前原滉)を、エンジンをかけるという意味ですごく引っ張っているなと、傍から見ていて感じましたね」
ふたりとも、これまでのイメージを裏切るような役どころ。公私ともに長い時間を一緒に過ごしてきたからこそ、新たに発見したお互いの魅力はあったのだろうか。
北村「健太郎は、共演してからいろいろな作品を見て、『めっちゃ多才だな』と思っていました。お芝居に関しては熱いところがあって、悩むタイプだと昔から知っていましたが、何でもこなせるように見えて、そして結果こなしている、やれているというか。『今日から俺は!!』とか『コーヒーが冷めないうちに』とか、(芝居の)幅がすごいなと思います。今回はむしろ、まっさらな健太郎という感じ。ボールを投げる側としても、(受け取り方が)柔軟だなと思いました」
伊藤「確かにね……、柔軟だね(笑)」
北村「柔軟だよ」
伊藤「まあ冗談なんですけど(笑)。そういう風に見せているだけで、自分としては必死です。今回、匠海自身も挑戦する部分はたくさんあったと思いますし、僕も見たことがない姿だったので、『どういう感じになるのかな、楽しみだな』と思っていました。実際現場でも、作品を見ても、想像を超えてきましたね。『お~、やったな』って嬉しくなる部分もあって。僕は(ダンスロックバンド)『DISH//』の匠海とリンクする部分が、アゲ太郎にあるなと思いました。たくさんのオーディエンスがいる中で、ステージで歌って盛り上げて……という姿をよく映像で見させてもらっていて。匠海とアゲ太郎の生き生きしている姿が、つながるような気がしましたね」
やりたいことがなく、何となく家業を手伝っていたアゲ太郎は、DJという夢を見つけ、猪突猛進の勢いで一直線に駆け上がっていく。夢を追う人々に捧げられた物語にちなみ、ともに第一線で役者を続ける北村と伊藤に、忘れられない瞬間について教えてもらった。
北村「芝居を超える感覚が気持ち良い。芝居で泣くんじゃなくて、泣きすぎて止まらないみたいな時は、『僕らにしか味わえない感覚だな』と思う。誰かに成り代わっているんだけど、限りなく自分、みたいな感覚ですね。例えば『君の膵臓をたべたい』の中で『泣いていいですか?』と言いながらも、もう泣いているシーン。台本ではセリフを言ってから泣くという流れだったんですが、『もう泣くわ』って……」
伊藤「泣いちゃったよ。この前テレビでやってたから録画した。永久保存版だよ。すげえ好き、本当にいいよ」
北村:(照れ笑い)
伊藤「僕も『今ちょっと感覚違ったな』というのがたまにあって、そういう瞬間が増えることを目指したいなと思います。あとやっぱり純粋に、でかいスクリーンに自分の顔がばんって出た時は嬉しいですよね。初めて自分がちょっとだけ映画に出た時に、(スクリーンに)映って、自分のセリフで観客がクスクス笑ってくれていたのは、やっぱり嬉しかった」
本作でも、そんな“芝居を超える瞬間”があったという。
北村「アゲ太郎と屋敷のDJセッションシーンは、素に近かったですね。健太郎と横にいて、しかもステージに立っているからアドレナリンも出ていたし。不思議な感覚でしたが、めちゃくちゃ楽しかったですね。もちろん演技はしているんですが、“匠海”と“健太郎”がそのまま立っているような。すごいぐっときました。完成した作品を見ても、楽しんじゃっているところが相当出ているんじゃないですかね」
伊藤「もちろんお芝居なので、それぞれのキャラクターは守りつつですが、屋敷とアゲ(太郎)が一緒にDJをやっている光景は、エネルギーがすごかったですね」
インタビューの短い時間でも、北村と伊藤がお互いに抱く絶対的な信頼、親友でありライバルでもあるという関係性が伝わってきた。このふたりだからこそ、アゲ太郎と屋敷が見せる、思わず胸が熱くなってしまう最高のグルーブを表現することができたのだろう。最後に、今後の夢や目標について、聞いてみた。
北村「お互いに、同じようで違う道を歩んでいて。やっぱり、健太郎のことはずっと気になる存在。同じ歳で、これだけ何かを背負う、同じような立場にいられるふたりで、何か作りたいんですよね。やっぱり小栗旬さんや先輩たちが“世代”と言われるものを作っているし、僕らもやっぱりそういうものを作りたいな、バトンを受け取りたいなという気持ちがあります。たぶんこのインタビューを数年後に見たら、超恥ずかしいと思うんですけど。でも今、22~23歳の僕らは、そういうバトンをちゃんと受け取る年齢になってきたのかな、という気がします」
伊藤「僕は匠海と出会えたことが宝だと思っていますし、ありがたいことなので、本当に死ぬまで大切にしていきたいです。そういう(匠海のような)存在が増えていって、1997年という僕らが生まれた世代を盛り上げることができるのであれば、やっていきたいなと思います。まずは前提として、自分が仕事を好きでい続けたいなと思っています」
北村「今後また健太郎と共演するなら、バディ組みたいよね! 刑事物とか、けっこう男臭いやつをやりたいです。ダーティな感じで」
伊藤「そうだね、バディ物だな、やっぱり。何かもう当て書きみたいな感じになっちゃいますけど(笑)、『違う道を進んでいても、目指す場所が一緒』みたいな。ライバルであり、バディであり……例えば僕がヤクザで匠海が警察官で、交わると最強になる、みたいな作品がいいですね(笑)」