「瞬間的に面白いだけでも救い」ブラックアダム つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
瞬間的に面白いだけでも救い
ところどころ面白いところはある。盛り上がる瞬間もある。主演のドウェイン・ジョンソンもまぁまぁ好きだ。それでも結果的にはあまり面白くなかった。
内容を詰め込み過ぎで、コミックを読んでいない身からすると初登場ヒーローであるブラックアダムにフューチャーしきれておらず、正直、なんだかよくわからない。ブラックアダムというキャラクターのことがよくわからないのだ。
例えばMCUの初期作である「アイアンマン」では、トニー・スタークという男のことがよくわかった。本作と同じDCの「マン・オブ・スティール」でもスーパーマンというある意味で分かり切っているキャラクターでもクラーク・ケントに焦点をあてた。一作目とはそうでなければならないと思うんだよね。誰もがブラックアダムを知ってるわけではないのだし、映画になるのだからコミックとは違ったキャラクター性があるかもしれないからだ。
しかし本作はどうだ?ブラックアダムよりも彼を捕らえるために登場した4人のヒーローチームのほうが目立ってなかったか?
いきなり知らないヒーローをブラックアダムも含めて5人も出されて、結局、誰のこともよくわからないままだよ。積み重ねがないのにアベンジャーズみたいなことをされてもついていけない。ジャスティスリーグの失敗から何も学んでないのか。
とはいえ実際は、内容そのものはそんなに悪くなかった。絶望的に最悪なのは物語構成の方だ。
ブラックアダム誕生にまつわる過去パートの入れ方が悪い。作品を盛り上げるために全く機能していない。
例えば冒頭の過去シーンで、何かを観客に伝えられたとは思えない。観ても何も分からないままだからだ。何かを伝えたいならばもっと見せろ。逆にブラックアダムの秘密を守りたいならば過去シーンを挿入する意味が分からない。
似たような構成の「キャプテンアメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」は上手くやったよ。
見所が全くない酷く退屈な作品だったならばもっと批判で埋め尽くせるのに、面白い瞬間があるからこそすごく勿体なく感じる。
まあDCのユニバースはまたリセットらしいので本作の続編も多分ないだろうし、瞬間的にでも盛り上がったならばいいのかな。
最後に、スーパーヒーローものはもう興味ないのに付き合いで観ているので少々辛口です。ツエーブラックアダムが観たいだけの人には満足できるかもしれない。