劇場公開日 2022年12月2日

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「『キング・オブ・エジプト』のテイストが出てます。」ブラックアダム 屠殺100%さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5『キング・オブ・エジプト』のテイストが出てます。

2022年12月13日
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ホークマンと、フェイトの金ピカのいでたち、そして架空の街カーンダックがエジプトを思わせる。ヴィジュアルから喚起されるのは、アレックス・プロヤス監督の『キング・オブ・エジプト』。あまり評価の高くない『キング・オブ・エジプト』だが、全く悪くない。ただひたすら古代エジプトの神同士が戦う映画であり、そういう映画なのだから。

古代エジプトの歴史を史実に忠実に映画にしたものではなく、神々の戦いを描いたファンタジーとしてみれば、なかなかの傑作。史実の映画化を期待した観客が勝手にそういうもんだと勘違いして評価が低いとしか思えないほど期待をいい意味で裏切る面白さをもった映画である。

一方、『ブラックアダム』はどうか?
こちらもヒーロー同士がひたすら戦うが、コミックが原作。史実とコミックという違いだけで、見方のバイアスのかかり方が全く違うのかもしれないが、最初っから見方を固めるのは本質を見失う。どちらもストーリーはあまり重要ではなく、ドラゴンボールZのように超人的な能力をもったヒーローたちがひたすら戦いを繰り広げる。強いヒーローを観てひたすら感動する映画。その映像のダイナミックな活劇ぶりに驚嘆させられる映画である。

そうした見方自体が固定化した見方だといえばそれまでだが、あとはヒーロー映画がそもそも好きかどうか?フィーリングで感じ取れるかどうかの話になってしまう。

DCで最上位クラスのヴィランとして知られる、ブラックアダムは、今回の映画では、ヴィランではなく全くのヒーローとして描かれている。ヴィランにはヴィランなりの理屈や正義があって、それが、地球や宇宙全体の未来にとっては、善であっても、今の人類にとって甚大な被害をもたらすかどうかという点において、そのボーダーをこえるかこえないかで、ヒーローもヴィラン化する、しかも最強最悪のヴィランとなるということがアメコミではよく起こる(DCなら、ペンギン。ジョーカーは例外的な純粋悪。ホアキン版ジョーカーは、悪になった理由明かしありのため、純粋悪でなはい。マーベルならサノス、ドクター・ドゥーム、マグニートー。というか、マーベルは悪になった理由ありヴィラン多し)が、そういう話はない。だから強敵ヴィランとして知られるブラックアダムらしさは全く感じられない。

ブラックアダムにも彼なりの理屈や正義があったはずだが、ヴィランへのシンパシーをもたらすその手の描写でキャラへの共感をもたらし観客を物語に引きずり込むダイナミズムがなかったのが少し残念だった。

屠殺100%