劇場公開日 2022年12月2日

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「見ていてどっちが正義なのかわからなくなるという趣向は、DCコミックス作品ならでは味わいです。」ブラックアダム 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0見ていてどっちが正義なのかわからなくなるという趣向は、DCコミックス作品ならでは味わいです。

2022年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『ブラックアダム』は、DCコミックスの同名原作コミックがベースとする、スーパーヒーロー映画です。皆さんが既に多くのコメントを残していることから、簡単に感想を述べます。

 物語は5000年前、テス・アダム(ドウェイン・ジョンソン)は愛する者たちを全て喪い、自らを犠牲にし自身を守った息子フルート(ジャロン・クリスチャン)から強大な力を受け継ぎ、復讐のために力を振るったが、人間達によって封印されてしまいます。
 そして現代、5000年の年月を経てテス・アダムは復活し、かつて自身を追い詰めた者たちに復讐するべく現代の地球で破壊神ブラックアダムとして暴れ回るのでした。

 そんなブラックアダムを人類の敵とみなすヒーロ一軍団JSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)が立ち向かうのです。

 異次元の力強さと速さを併せ持ったブラックアダムに度肝を抜かれること間違いなし。ヒーロ一軍団が束になってかかっても全く歯が立ちませんでした。

 ここで本作がアベンジャーシリーズと大きく違うのは、ヒーロ一軍団が必ずしも正義と言えず、彼らが倒そうとしているブラックアダムが、必ずしも悪とはいえない存在だったのです。

 ブラックアダムが5000年の眠りを越えて復活したのは、現代の犯罪者が支配するカーンダックを独裁者から、民衆の手に取り戻そうとする活動家の声に応えての者。もともと彼はカーンダックが古代王国の時代、王の圧政に民衆が苦しんでいたとき、ヒーローとしての力を手に入れたテス・アダムが、民衆の解放のため立ちあがった正義の味方なのでした。なのでそんなブラックアダムの登場に、現代のカーンダックの民衆は、大歓声で応えるのでした。そんな民衆にとって正義の味方であるブラックアダムに挑んだのが、JSAのヒーロ一軍団だったのです。なので見ていてどっちが正義なのかわからなくなるという趣向は、DCコミックス作品ならでは味わいです。その点がアベンジャーシリーズと大きく異なるところです。
 カーンダックを支配する犯罪者集団を徹底的に殺戮しようとするブラックアダムに対して、たとえ敵のワル共でも、ブラックアダムの攻撃から人命を助けようとするJSAのヒーロ一軍団。両者の正義は、対立し敵対しあいます。果たしてどっちの正義が通るのか、決着がつかないうちに、事態は急変。ある悪魔に取り憑かれた強敵の登場で、JSAのヒーロ一軍団は大ピンチに。ここにきてあれほど対立したブラックアダムと協力して倒さなければならなくなるという展開が面白かったです。当初復讐に囚われたアンチヒーローとして登場させたブラックアダムが、場面ごとに少しずつ本物のヒーローに変貌していく描き方が絶妙でした。

 ところでJSAのヒーロ一軍団はリーダーのホークマン(オルディス・ホッジ)を始め、見覚えのないメンバーばかり。DCコミック作品なら、誰でも知っている一線級のヒーローは出し惜しみしています。しかし、最後のエンドロール中に、ブラックアダムの破壊力の強さに危機感を感じたJSAの幹部は、ブラックアダムに自省を促すため、彼を押さえ込むだけの能力のあるスーパーヒーローを招聘するのでした。
 なので、次作以降の今後の展開にも期待ができそうです。えっ誰が招聘されたのかって?それは内緒です(^^ゞ

 最後に本作のドウェイン・ジョンソン、ロックさまは、強さ爆発。ジャウム・コレット=セラ監督との前作『ジャングル・クルーズ』よりも遙かに格好良かったです。

流山の小地蔵