エルヴィスのレビュー・感想・評価
全294件中、1~20件目を表示
バトラーに魅入られ、ブラックなハンクスに圧倒される
エルヴィス・プレスリーのことはリアルタイムでは知らないし、取り立てて詳しいわけでもない。ただ、聞いたことのある楽曲、見たことのあるビジュアルから、象徴的なイメージは知っているくらいだ。
そんな私が、映画館を出るときには「エルヴィス最高……」になっていた。全ての瞬間がカッコよくきらびやかで目が離せない映像、ミュージカルのような密度で2時間40分に詰め込まれた(4時間版もあると監督が公言している)素晴らしい楽曲たち、ミュージックビデオのような編集でとんとん拍子に進むストーリー。目まぐるしく変わるシーンの中でも、彼の歌手としてのルーツや魂、栄光がもたらす喜びと苦悩が、鳴り続ける楽曲たちと共にしっかりと胸に響いてきた。
幼いエルヴィスがゴスペルと出会い、音楽の啓示を受ける短いシーンの説得力とインパクト。その後オースティン・バトラーがみずみずしいエルヴィスとして現れ、しっかり歳を取り、自然な貫禄を醸し出してゆく姿が特に圧巻だった。バトラーのことは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で見たものの正直ノーマークだったので、余計に衝撃が大きかった。
実際のエルヴィスの映像が出てくるシーンもあるが、雰囲気にほとんど違和感がない。エルヴィスに詳しい人はもしかすると何かと不満があるかもしれないが、それは誰が演じたってゼロにはならない。私は見せ場のライブシーンで、実際のエルヴィスのライブ映像を見ているような錯覚を覚えた。あの熱量のせいだ。
1960年以前の歌唱シーンは、全てバトラー自身が歌っているという。60年以降のシーンでは、バトラーとエルヴィスの声をミックスしたり、エルヴィスの声を使ったりしている。
ゴスペルを浴びて育ったエルヴィスは、差別と闘う意図というより、ただ歌いたいから、体の動くままに歌う。それが結果的に、差別がまかり通っていた時代への反逆になる。その姿がまた「本物」らしくていい。
彼が影響を受けた音楽を体現する黒人ミュージシャンも魅せる。特にリトル・リチャード役のアルトン・メイソンに見惚れた。
「いい人」を演じることの多かったトム・ハンクスのパーカー大佐も強烈だった。ハンクス、こういうブラックな役も映える。「幸せへのまわり道」で久しぶりに見た時、年取ってふっくらした?と思っていたので(あれも役作りだったのか?)、さらに太ったのか?と思わなくもなかったがさすがに特殊メイクだった。
(というか、ハンクスの現在の姿を検索したらむしろ痩せていた。一昨年、本作の撮影準備でオーストラリアにいたときにコロナに感染したりしていたが、大丈夫だろうか……)
悪人と呼ばれる人間にも多面性がある。彼との出会いがなければ、エルヴィスはこれほどの名声を得られなかったかも知れない。でも、彼がエルヴィスのパフォーマンスの結晶を食い物にし、アメリカ国内に閉じ込めたのもまた事実。映画に描かれなかった部分まで知れば、さらに印象が変わることもあるだろう。よくも悪くも深みのある人物で、彼を主役とみなしても物語が成り立つほどの存在感だった。
有無を言わせぬ密度で強烈な光と底知れない闇を、不世出のスターの栄枯盛衰と人生の濃さを垣間見せてくれる作品。
劇中歌の解説、エルヴィスの周りの人々の詳細、必聴アルバムリストに名言集、用語解説やエルヴィス出演映画紹介まで入った親切過ぎるパンフレットはお得感あり。
エルヴィス降臨の衝撃を体感させる過剰さの勝利
エルヴィス・プレスリーという時代からハミ出た過剰なスターを表現するにあたり、バズ・ラーマンという過剰な演出家がみごとにハマった。最初のライブシーンから1950年代ではあり得ない歪んだギターが唸りまくっていて、この映画が歴史の再現ではなく、エルヴィスという衝撃を現代の観客にいかに体感させるかに重きを置いているのがわかる。オースティン・バトラーの渾身のパフォーマンスも、完コピというより、リミットを知らないエルヴィスの魂をトレースしている気すらしてくる。
プレスリーの人となりや偉業を知るには数々のドキュメンタリーや書物が存在しているが、この地上にエルヴィスが降臨したインパクトのデカさを感じるには、この絢爛豪華な映画絵巻こそがふさわしい。伝記映画にしてエルヴィスの再解釈にして、概念としてのエルヴィスの再創造。そしてそれでもなお揺らぐことのないエルヴィス・プレスリーという存在の大きさに改めて圧倒される。
あとオースティン・バトラーには各映画賞で主演男優賞を獲ってほしいと思うが、あの最初のライブシーンで最初に叫び声を上げてしまう女の子を演じた俳優に、誰か助演賞をあげてほしい。とりあえず自分の中ではブッチギリの助演賞です。
最高のショーを探し続け、エルヴィスにたどり着いた強欲マネージャーの人生も伝説級
レオナルド・ディカプリオの主演映画「華麗なるギャツビー」(2013年)のバズ・ラーマン監督が、本作ではロック・シンガー、エルヴィス・プレスリーの成功の裏側を描いている。
エルヴィスと聞くと、私は「リロ・アンド・スティッチ」(2003年)に出てくるエルヴィス像のイメージが強い。特徴あるもみあげと衣装でハワイらしい愛の歌をロック調に歌っていた。作中でエルヴィスの曲が流れると逆境が前向きな展開になることが多いため、いつの間にか私も彼の曲が好きになっていた。
しかし、実物のエルヴィスとは接点が乏しく、彼の足腰の動きにも秘密があったこと、禁断のロックを生んだこと、若くして謎の死を遂げたスーパースターであったことなども知らなかったので、映画「エルヴィス」を見て発見の連続。
本作は、エルヴィスの少年期からの描写もあり、彼の音楽スタイルのルーツ、人気を得てからの苦悩が悲しいほど胸に響く作品となっている。エルヴィスの才能をいち早く見抜いた強欲マネージャー(トム・ハンクス)との関係が「危険な実話」の鍵となっているところや、エルヴィスのパフォーマンスから目が離せないほどの臨場感が伝わる楽曲や演技が大きな見所であった。
主演男優賞と助演男優賞の賞レースに関わりそうな(エルヴィス役の)オースティン・バトラーとトム・ハンクスの熱演も必見レベル。
私は映画を見終わった後、エルヴィスのステージは、彼が亡くなる間際まで観客を魅了したことは確かで、女性を痺れさせたシーンは嘘も偽りもないと感じた。女性ファンが多く、当時は独特すぎると評された「彼のロック術」は、早い段階で男性も引き込まれていたはずだと想像した。
歌手とマネージャーの関係性を偏重した作劇。エルヴィスの音楽性や創作過程への関心は?
序盤、トム・ハンクスが特殊メイクで演じるパーカー大佐がエルヴィス・プレスリーのステージを初めて見る場面が、まさに映画の観客が青年になったプレスリーと出会う重要なシーンにもなっていて、プレスリー役のオースティン・バトラーの歌と特徴的な下半身の動きも見事に再現され、客席に瞬く間に広がる熱狂もスリリングに描写されている。
ただ残念に思うのは、幼少のエルヴィスがゴスペルを聴いて神の啓示のような神秘体験をしたことが音楽との出会いとして描かれ、そこから先述のステージに立つ青年エルヴィスまでの過程がほとんど描かれない点。あの表現力豊かなボーカルも、刺激的に腰と脚を揺らすパフォーマンスも、スタイルを確立するまでは場数を多く踏み、トレーニングを重ね、ときには試行錯誤もあったはずだが、そこはあっさり省略されてしまう。
原案・脚本に名を連ねるバズ・ラーマン監督が作劇の軸にしたのは、エルヴィスとパーカー大佐の関係性だ。大佐の商才もあって、マネジメント契約を結んでほどなくエルヴィスは大成功し、母亡きあとは精神的な依存を強めたりもするが、意見が合わず衝突することもあった。エルヴィスは浪費をエスカレートさせる一方で、大佐はしたたかに搾取し、経済的に自立できなかったエルヴィスは結局大佐から離れることができなかった。華やかなショービジネスの世界で未曽有の成功を手にし、けた外れの名声と富に翻弄された2人の愛憎は、確かに劇を構成し推進する要素として描き甲斐があっただろう。だが、そちらに力を入れすぎるあまり、音楽史に多大な影響を与えたアーティスト、パフォーマーとしてのエルヴィスの魅力を表現することがおろそかになったように思えてならない。
エルヴィス自身は作詞・作曲をしなかったが、メジャーになってからのレコーディングでは、多数用意されたデモ音源から気に入ったものを選び、バンドのメンバーとデモを繰り返し聴いたあと、一発録りのスタイルで納得いくまで何テイクも重ねたという。プロデューサー的な役割も担っていたエルヴィスは、ギターだけでなくベースやピアノを弾くこともあった。歌を歌い楽器を奏でることのシンプルな楽しさと喜び、音楽を作り上げることの素晴らしさをもっと見せてほしかったが、監督の関心はこちらには向かわなかったようだ。
名匠バズ・ラーマンの新たな代表作の誕生!
映画が始まるや熱狂の渦に飲み込まれた。私はエルヴィス世代でもなければ、時折TVで耳にする彼の楽曲も甘ったるく感じていたくちだ。しかし本作から聞こえてくる彼の音楽、パフォーマンスは私の先入観をことごとく破壊した。なんという革命。なんという才能。ただし、全ての勝因はエルヴィス自身というよりは、本作のとてつもない馬力と語り口のなせる業か。バズ・ラーマン印の映像は今回も絢爛豪華で、宙を飛び交うカメラワークは活力を失わず、指先一本動かすことを禁じられたキングの、まるで拘束具から解かれるがごときエモーションの爆発をもダイナミックに映し撮る。そしてトム・ハンクスの演じる”大佐”をある意味、メフィスト的に描き、なおかつ全ての経緯を彼目線で語らせることで、形を変えゆく関係性のいびつさ、運命の残酷さが我々を飽きさせない。人によって好き嫌いはあろうが、全てはやはりラーマン。彼のキャリアの代表作となるのは確実だ。
くだらねえ
伝説的なミュージシャンの光と影。
やっぱりね、我ながら青いとは思うんだけど
大多数に受け入れられたら、たくさん売れちゃったら
それはもうロックじゃねぇだろって思っちゃうんですよ。
全世界で何億人が見てる?女子供がキャーキャー言ってる?
そりゃただのポップだろって。
カントリーミュージックにルーツのあるホワイト・トラッシュが
黒人のリズム&ブルースを取り入れたらウケちゃいましたって。
そりゃまぁ反骨ではあるんでしょうけどね、
人それぞれ事情があるのは分かりますけどね、
カネのことしか考えてない音楽家なんてブタですよ。
って、それは豚さんに失礼か。
プレスリースタイルの背景を振り返る
エルヴィス・プレスリーついては1950〜60年代に世界の音楽シーンを席巻したシンガーという以外には何も知らなかったが、彼独自のパフォーマンススタイルがどうやってできていったのか、また、どういう点で社会に大きな影響を与えたかが分かりやすく描かれていて、とても勉強になった。
それにしても悪い山師に捕まってしまったものだ。凄絶な人生だった。
たくさんあるライブシーン。踊りの再現だけでもすごいと思ったけれど、歌も自分で歌ったオースティン・プレスリーに大きな喝采を送りたい。
オースティン・バトラーの演技、ステージが圧巻!
CSで録画視聴。
よく、まとまっていた作品。
エルヴィスのブレイク〜全盛〜下降と
エルヴィスプレスリーの音楽人生が
見事に描かれていた。
エルヴィス役のオースティン・バトラーの演技も素晴らしかったし、トム・パーカー役のトム・ハンクスの演技が素晴らしかった。
エルヴィスのライブシーンは必見。オースティン・バトラーはよくライブシーンをこなした。
何を見せたかったのか、何処を見せたかったのか
結局、大佐とは何者だったのか。そして彼がエルビスに対して行った事がこれだけのだったのか。もっと面白いことはたくさん有っただろうに、大佐が自己正当化の為の語りを続けるので当たり障りの無い話にとどめてしまった。せっかく彼を語り手にした意味がない。
エルビスに関しては、ライブやステージのシーンはとても見ごたえがあった。彼の歌をもっと聴きたいと思った。しかし反抗期を終えられなかったパーカー大佐のベイビーであって、ホテルが飼い殺したくなるような、大統領が追悼メッセージを出すような世界的歌手に見えなかった。
素材は一流で見栄えも良いが、それを扱う調理の腕と覚悟がない。依存に対する豪華な啓発映像という印象に留まってしまった。
禁断の果実の味わいがある腰振り
オースティンバトラー扮するエルヴィスプレスリーのマネージャー、トムハンクス扮するトムパーカー大佐が病院にかつぎこまれた。しかし大佐はエルヴィスの稼ぎの50%を取っておりエルヴィスの死は大佐のせいだと言う説もあった。
エルヴィスの生い立ちからの顛末を大佐が解説していくと言った展開だったね。最初から禁断の果実の味わいがある腰振りが受けていたようだね。しかしその腰振りが 同時にそんなに問題視されていたとは意外だったな。
自分の意思を貫き通せ!
偉大で才能のある人の一緒にいる人が重要なんだなと思いました。プレスリーが上がったり下がったりして、後半なんてボロボロで見てて苦しくなった
金って怖い、、
そしえ、エルヴィスプレスリーという男とすばらしさ!力強さ!面白さ!かっこよさ!とてもよくわかりました。好きになりました。
にしてもエルヴィス心揺さぶられすぎだろ!!!
トムハンクス演じる
マネージャーの話に焦点を当て過ぎた感がある。少年の頃に憧れた黒人音楽をマスターして世界をひっくり返した歴史的な成功をもっと時間を割いて描くべきだった。「ボヘミアンラプソディー」はフレディーの人生は悲しいことも沢山あったけど、やはり歌うことの喜びに満ちていた、と描いていたから感動する。この「エルヴィス」も、悲しいこともいっぱいあったが、短い人生を誰よりも輝いて駆け抜けていったと描くべきだと思う。この映画は騙されたこと怒ったこと悲しいことばかりに時間を割いていて、これでは可哀想な人生を送った人という鑑賞感になってしまう。そのような描き方でいいとは思わないし、エルヴィスはそんな人ではなかったと思う。
さすがはバズ・ラーマン監督 ド派手にキメた!
バズ・ラーマン監督の世界感は本当に良い!大人向けハードおとぎ話よろしく、ド派手なゴージャス感が日頃のストレスを吹き飛ばしてくれる(笑)
撮り方がすごくきれいで小気味良くスタイリッシュだし、役者陣の好演技も見ものだ。特に、エルヴィス役のオースティン・バトラーを初めて本作で意識して観たわけだが、いやぁ~最高にシビれました!同姓の私でも思わず叫びそうになったほど刺激的!キャ~(笑)
世代ではないため今までエルヴィス・プレスリーをあまり掘り下げたことはなかったが、本作により興味津々になるほど影響力抜群の作品だ。そしてエルヴィスの光と影が心に刺さる。ラストのアンチェインド・メロディも良かったなぁ。
映像・演技・音楽・ストーリーのどれをとってもド好みで、本作は迷わず満点評価だ。
寵児か翻弄か
少年エルヴィスが黒人音楽に出逢い、42で非業の死を遂げるまでが描かれていますが、特にマネージャーのパーカー大佐(トム・ハンクス)とエルヴィス(オースティン・バトラー)の関係が軸になっている印象でした。以前、ドキュメンタリーで観たエルヴィスは、人間的な魅力に溢れ、一瞬で魅了されてしまいましたが、今作ではそういった感じよりもショウビジネスにおける光と闇に焦点が当てられているように思えました。彼をスターダムの座に導くお膳立てをしてくれた名マネージャーであり、金の亡者のような人物に絡め取られてしまったエルヴィスの半生は、観ていて辛かったです。死の6週間前に収録されたコンサートで「アンチェインド・メロディ」を本人が歌うシーンのオーラに圧倒されました。「ボヘミアン・ラプソディ」(18)でもラストに出てくるフレディーの映像がすべてをもっていくような印象でしたが、カリスマ的人物の伝記映画の宿命のように感じました。
エンタメ作品として面白い。
エルヴィス・プレスリーは世代ではないのでほとんど知らない。それでも全く関係ないほどに面白かった。
もしかしたらプレスリーを知らないからこそ楽しめたのかもしれないと思うほどに、実在の人物ではなく映画の中のキャラクターとしていきいきしていた。
バズ・ラーマン監督は良作が多いけれど、その中でも「ムーランルージュ」は印象的だ。高いエンターテイメント性で内容の悲しさと離れたところに楽しさがあった。
その「ムーランルージュ」をそのまま持ってきたかのような娯楽性が本作にも存在した。
実際は「ムーランルージュ」ほどの勢いがなかったので比較するならば「ムーランルージュ」に軍配が上がるけれど、それでも充分に楽しめるエンタメ作品だったと言える。
そもそも伝記系の作品はハズレが多いからね。当たりだったというだけで価値を感じてしまう。
ミュージシャン系は歌うからその分面白くなりやすいのかもな。
キャスティングに残念感が…?
多くのミュージシャンが利権の犠牲になったが、エルビスもその最たる一人なんだろうな。自身、リアルタイムにエルビスを知らないだけにゴスペルとR&Bの融合に大きな足跡を残したミュージシャンの伝記としても非常に意味がある作品だった。
ただ、トム・ハンクスが濃すぎて映画としては、いささか残念感が残る。あくまで主役はエルビスであるべきだろう。
全294件中、1~20件目を表示