「エルヴィス降臨の衝撃を体感させる過剰さの勝利」エルヴィス 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
エルヴィス降臨の衝撃を体感させる過剰さの勝利
エルヴィス・プレスリーという時代からハミ出た過剰なスターを表現するにあたり、バズ・ラーマンという過剰な演出家がみごとにハマった。最初のライブシーンから1950年代ではあり得ない歪んだギターが唸りまくっていて、この映画が歴史の再現ではなく、エルヴィスという衝撃を現代の観客にいかに体感させるかに重きを置いているのがわかる。オースティン・バトラーの渾身のパフォーマンスも、完コピというより、リミットを知らないエルヴィスの魂をトレースしている気すらしてくる。
プレスリーの人となりや偉業を知るには数々のドキュメンタリーや書物が存在しているが、この地上にエルヴィスが降臨したインパクトのデカさを感じるには、この絢爛豪華な映画絵巻こそがふさわしい。伝記映画にしてエルヴィスの再解釈にして、概念としてのエルヴィスの再創造。そしてそれでもなお揺らぐことのないエルヴィス・プレスリーという存在の大きさに改めて圧倒される。
あとオースティン・バトラーには各映画賞で主演男優賞を獲ってほしいと思うが、あの最初のライブシーンで最初に叫び声を上げてしまう女の子を演じた俳優に、誰か助演賞をあげてほしい。とりあえず自分の中ではブッチギリの助演賞です。
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