「Elvis the Pelvis」エルヴィス 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)
Elvis the Pelvis
煌びやかでド派手な映像のLookがバズ・ラーマン御得意の演出法として目立つ印象で、サントラですら今風なギターサウンドやラップでプレスリーの曲をメチャクチャし放題なやりすぎ感、純粋にオールディーズやロカビリーなど古き良きアメリカのロックンロールに浸れない忙しなさ。
特殊メイクを施してまでパーカー大佐を演じたトム・ハンクスの風貌にゲイリー・オールドマンは『ウィストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でオスカーを受賞したが、今年だけで思い出すとジャレッド・レトやコリン・ファレルが姿形を変えながら演じた特殊メイクの成せる技、クリスチャン・ベールの体重増減による一苦労はどこ吹く風、デ・ニーロ・アプローチとは今や死語、これじゃ何でもかんでも『ディック・トレイシー』状態に!?
プレスリーを扱った映画は数あれど伝記モノとして浮かぶのはジョン・カーペンターが撮ったTV映画『ザ・シンガー』が印象深く、プレスリー役はカート・ラッセルな訳で本作で演じたオースティン・バトラーが似てなくても問題なし、寧ろノイズに感じるのはパーカー大佐を演じたトム・ハンクスの鬱陶しい存在感一択。
申し訳なさ程度で登場させるシスター・ロゼッタ・サープやビッグ・ママ・ソーントン、雑な扱いのリトル・リチャードやファッツ・ドミノの脇役にも至らない端役感、B・B・キングとの友情描写は『Ray/レイ』でのレイ・チャールズとクインシー・ジョーンズを意識しているようにも。
本作との比較対象として『ボヘミアン・ラプソディ』や『ロケットマン』といったQueenやエルトン・ジョンの伝記映画が出てくるのは今の時代と今の観客に向けた今の映画を届ける方向性が成功しているからなのか?
個人的には『バディ・ホリー・ストーリー』や『グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー』に『ラ バンバ』などと比較したい感覚がありながらも、そんなオールドファンは置いてけぼりに相手にすらしないバズ・ラーマンの人物を掘り下げず繰り広げる浅い演出描写とLook先行型の方向性にエルヴィス・プレスリーが餌食に!?