「スノーマン道の映画」エルヴィス Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)
スノーマン道の映画
全ての音楽シーンは素晴らしい!ノレます。それだけでも充分劇場鑑賞に値しますし、ストーリーも壮麗・緻密で見ていて収まりが良いです。
若干奥歯に物が挟まったようなのは、私がエルヴィステプレスリーのファンではなくて(世代的に彼を晩年〜死後知ったので、ギャングはびこるラスベガス・カジノのホテル会場で、変な衣装と変なもみあげで歌い上げる太ったオッサン歌手というイメージ)、アメリカ人でも無いからで、今一つこの映画の主訴がよく分からなかった。ほかの日本同胞の方々はみな分かるのでしょうか。
ただ私の物知らずの固定観念から、「プレスリー」=「米国・白人・金満文化」の象徴くらいに勝手に片付けてましたが、実際の彼はゴスペル・黒人音楽から生まれ出で警察の監視下でも歌うという、立ち位置はエミネム以上、音楽性でビートルズ以上の“ヤバい”革命的ミュージシャンだったのですね、勉強になりました。どうりで1990年に「ミステリー・トレイン」とか観ても趣旨が全然理解出来なかったわけですわ。
一方純粋にお話の内容としては、エルヴィス役のオースティン・バトラーが何ならエルヴィスの実物よりもカッコいいイケメン+超絶ボディシェイカーなので、“偉大”に向かう繊細な若者の内面云々というよりまるで「完璧な大活躍(音楽シーン)の合間に自己の存在に悩むアベンジャーズの若手スーパーヒーロー」のように見えて、ちょっと非現実な印象を受けてしまいました。
その代わり、やはりトム・ハンクスが前面に出てきた時の存在感はとても大きく、物語の背骨はどちらかと言うと「パーカー大佐の一代記」に近い… おかげで、
“本人自体は色々ボロボロだが、商売で人と交わっては一言交わしても道端でころんでもタダでは済まさない”
「スノーマンの道」をしっかり心に刻ませてもらいました。総じて音楽を楽しみつつ人生の教訓となる映画でした。
でも鑑賞後はなぜか、私の心のふるさと映画「ブルース・ブラザース(1980)」が無性に観たくなりました。どうしてだろう?あっちの方がフザケているけどソウルがあるような… 。