「ワーナーらしさとは何かを問う!!」スペース・プレイヤーズ バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
ワーナーらしさとは何かを問う!!
ワーナーメディアが苦戦しているのが、アニメ映画部門。ディズニーやドリームワークス、イルミネーションに加え、多種多彩の世界のアニメ映画が溢れている状況。
昔から続く、古株なキャラクターを多く抱えているワーナーだけに、アニメ映画界においても本領発揮といきたいところだが、どうも上手くいかない。
もともと「ルーニー・テューンズ」や「ハンナ・バーベラ」作品は、「カートゥーン・ネットワーク」の30分枠で放送するような、短編向きの作品が多いこともあって、長編にはあまり向いていない
そこで出会ったのが「レゴ」を映画化する企画だったが、2020年に契約満了となり、ユニバーサルに「レゴ」の映画化権が移ってしまったため、看板作品がなくなってしまった。
思い切って製作したのが「スクービー・ドゥー」の劇場用新作『弱虫スクービーの大冒険』である。「スクービー・ドゥー」の長編作品は、定期的に制作されていたものの、OVA扱いが多く、劇場公開アニメとして本格的な作品は、初めてといっていいだろう。
声優にザック・エフロンやアマンダ・セイフライド、マーク・ウォルバーグといった、ハリウッド俳優を多数起用し、製作総指揮にクリス・コロンバスを迎えた『弱虫スクービーの大冒険』は、新型コロナウイルスの影響によって、タイミング的に劇場上映を中止するしかない状況となってしまった。
『トロールズ ミュージック・パワー』が、同じタイミンクで配信スルーにしても成功したことで、配信に切替えるも、実際は製作費9000万ドルに対して、収益は約2400万ドルと大赤字となってしまった。
はっきり言って、近年に制作された『スモールフット』『コウノトリ大作戦!』などのワーナー単独のCGアニメーションは、成功とは言い難いものばかりとなっていた状況で、同時並行進めていたのが、今作と『トムとジェリー』の企画である。
1997年公開の『スペース・ジャム』は、当時からシリーズ化が視野に入れられていたものの、マイケル・ジョーダンが続編企画を受け入れなかったため、しばらくの間、宙に浮いた企画となっていたが、『スペース・ジャム』の続編企画は2000年以降も何度も浮上しては、挫折しての繰り返しだった。
2003年の『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』は、『スペース・ジャム』の続編企画から派生したものであり、『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』も続編企画があったりと、ワーナーはアニメと実写の融合映画を作りたいという意識は強かったのだろう。
『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』 は興行的に失敗に終わった。時代は『トイ・ストーリー』『シュレック』といった、CGアニメーション作品が主流となり、ディズニー単独においても『ホーム・ザ・レンジ』をもって、2Dアニメ制作を終了し、『チキン・リトル』からは3Dアニメに切り替えた。2010年には『プリセスと魔法のキス』で一時は、原点に戻ろうとしたものの、結局は3Dアニメに戻った。
さらに『トイ・ストーリー』が斬新とされていた時代は終わり、今では3Dアニメが当たり前なアニメ映画業界は、どこの企業も常に試行錯誤を繰り返している。
ドリームワークスも「シュレック」シリーズ終了後、子供向けに路線を変更した。しかし、独自性という部分で伸び悩み、不発が続いていたが、『トロールズ』で戦線復帰を果たした。
劇中に登場する「ルーニー・テューンズ」のキャラクターたちも「古くさい」とされて、様々な世界に飛ばされてしまった設定となっているが、これはアニメ映画市場では、大きく出遅れたことの自虐的なメタファーともなっているのだ。
劇中では2Dアニメだったバックスたちが、『名探偵ピカチュウ』『ピーターラビット』などのリアル路線、いわゆる「今風」に変換されてしまう。
ワーナーは様々な代表作品がありながらも、ワーナーの代表は「ルーニー・テューンズ」であること。
ワーナーとしても、時代の流れとして、「ルーニー・テューンズ」においても「今風」な3D化は実際に検討されていたのだろうが、原点に戻り、そして未来に進む。 作品のテーマのひとつでもある「自分らしさ」は「ワーナーらしさ」を意味していることで、時代の流れに逆行するかのように、2Dアニメと実写のハイブリッドスタイルを貫こうという姿勢を見せた。
アニメーションのスタイルとしての意志表明は『トムとジェリー』が先行したが、「ルーニー・テューンズ」のユニバース・キックオフといった作品に位置していることは間違いない。順調に進めば第1弾となる『コヨーテVSアクメ』から本格始動となる。
そして「版権力」はワーナーにおいて、圧倒的なもうひとつの武器でもある。
『レディ・プレイヤー1』で見せつけた版権力は、今作においても惜しみなく発揮された。「ハンナ・バーベラ」や「カートゥーン・ネットワーク」のアニメキャラクターは基本として、子会社であるDCコミックスはもちろん、代表的な映画作品も大量投入されている。
登場するキャラクターを探すだけでも楽しい作品ではあるが、『グレムリン2 新・種・誕・生』や『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』においてメタ的な遊びを入れてみせたジョー・ダンテへのリスペクトも作品のベースにあるように感じられる。
今作によって、ワーナーは間違いなくネクストステージに向かっていくことだろう!!