「タイトルなし(ネタバレ)」THE BATMAN ザ・バットマン りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
アメコミの映画化作品は、マーベルは明るい、DCは暗い、と個人的に思っているのですが、中でもバットマンは群を抜いて暗い。
というのも、バットマンには超人的な能力はなく、また、行動の動機が復讐であるから。
そんな陰にして湿なダークヒーロー、今回のリブートはいかに。
大富豪でゴッサム市長候補だった父と母を殺害され、復讐を誓って成長した青年ブルース(ロバート・パティンソン)。
蝙蝠を模した正義の鉄槌者バットマンとなって2年。
ゴッサムシティでは市長選の最中だったある夜、5選目を狙う現職市長が何者かによって殺害される。
ゴードン警部(ジェフリー・ライト)は直ちにバットマンを現場に召喚した。
というのも、「バットマンへ」という謎のメッセージが現場に残されていたからだ・・・
というところからはじまる物語で、その後、首席検事をはじめ要人たちが殺害され、現場には謎のメッセージが残されていた。
事件は、これに先立つ大物マフィアの逮捕と関係がありそうで、また、ゴッサムシティ再開発基金(ブルースの亡父が立ち上げた)を巡る汚職事件とも関係がありそうだ、と展開する。
バットマンはDCコミックスの映画化だが、権利関係からワーナーブラザーズ映画として映画化される。
ワーナーといえば、古くはジェームズ・キャグニーのギャング映画で、フィルムノワール、犯罪映画が得意。
今回のバットマンは、バットマン映画というよりも、ワーナー犯罪映画の系譜上に位置するような感じで、ヒーロー映画という感じはまるでない。
そもそもヒーローとはなんぞや、ということを振り返れば、
罪のない市井の民が悪漢たちの計略や暴力で危機に陥ったときに現れて、悪漢を退治する存在で、基本的に、こいつが悪い奴、悪い奴は誰だ?の段階では登場しない。
そんな、悪い奴は誰だ? 事件の真相はどうだ?というのは、探偵の役どころ。
だが、今回のバットマンは、悪い奴は誰だ?の段階からゴードン警部の傍らに登場する。
現市長殺害現場に登場したバットマンを観た警官が「このコスプレ野郎、どうしてここにいるんだ?」と言うが、観客としても、そんな感じ。
探偵に、その衣装は過剰でしょう。
あきらかに場違い。
なので、事件が進み、いろいろあっても、「バットマンのコスプレは場違いなんだよなぁ」という思いはぬぐい切れず。
特に、事件の首謀者リドラーや、黒社会の大物ペンギンが、やや異様ではあるが、コスプレをしているわけではないからなおさら。
(加えると、トゥーフェイスの悪部分に相当するファルコーネは、ただマフィア然としているだけ)
ということで、フィルムノワールとしてはよく出来た映画ではあるが(それでも3時間はまだるっこい)、ヒーロー映画(ダークヒーローだが)としては違和感がありすぎ。
評価する部分もあるが、評価できない部分もあり、全体としては微妙なところですね。