「色々な意味で惜しい!」THE BATMAN ザ・バットマン ナイトクローラーさんの映画レビュー(感想・評価)
色々な意味で惜しい!
キャスティングはすごく良く、豪華な俳優陣が立派に演じきっています。
ただ、3時間もあるのにストーリーにこれといった盛り上がりがない。始まりのテンションのまま淡々とストーリーが進行し、少し盛り上がって終わりを迎えます。次回作への含みのある終わり方でしたが、それまでがあまりに淡々としすぎていたため、次作への期待を抱くまでには及ばずでした。
リドラーの出してくる数々の謎々も、回数を追うごとに難解になったり、ストーリーに深味を与えるわけでもなく、同じレベルの謎々を何度も出してくる。解答も「なんじゃそりゃ」といった感じ。
アクションシーンに関してはほぼ予告編以上のものも見られなかったです。今回のバットマンはヒーローというより、初期コミックの頃のような探偵に近いということは、製作陣が公開前に公式に述べていましたが、それでもやっぱりバットマンはヒーローなわけで、観る側はせめて予告編以上のアクションシーンを期待してしまいます。
バットマン以外のキャラが立っていない。これは俳優の演じ方というよりも、映画の演出そのものに問題ありとかんじました。
ノーラン版バットマン以降、リアルさを突き詰めて登場人物も現代社会に本当にいそうな雰囲気を醸し出していますが、今作品は逆にコミックで親しまれてきたキャラの個性を殺してしまっています。(特にペンギン)
クリストファー・ノーラン版はそこは本当に上手く見せていたと思います。さらに言えばこの方法は、ノーラン版のリアルさをいい意味で継承しつつ逆転の発想をついた「ジョーカー」まででやり尽くされた感があります。
だからこの映画の見せ場も明らかにこれまでに観たことがあるようなシーンばかりで新鮮味がありませんでした。
「ダークナイト」よりもダークに…という思いもあったのだと思います。クリストファー・ノーランも「ダークナイト」制作時にもっとダークにすることはできたと思いますが、それをしなかった。なぜクリストファー・ノーランは「ダークナイト」であれ以上のダークさを追求しなかったのか…。その理由をこの映画で知ることが出来ると思います。
脚本に矛盾を感じるシーンもあり、ゴードンはなぜバットマンを警察署から逃す時に「屋上へ行け」と行ったのか。屋上に逃げたバットマンは明らかにその高さにビビっており、あのウイングスーツの機能も実戦では初めて使いました的な感じがしました。
バットモービルもいつからあそこに停まっていたのか、しかも登場の仕方が「バットマン・ビギンズ」とほぼ同じだった。
酷評するつもりはありませんが、この映画は決してつまらないというわけではなく、観ている限り名作になりうる可能性を感じました。しかし、色々なところが惜しすぎる。
私はこれまでのバットマン映画を愛しているからこそ、今回も心を鷲掴みにして欲しかった!本当に惜しいんです!