「タイトルなし(ネタバレ)」THE BATMAN ザ・バットマン ごますさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
前々から宣伝チラシで2019年の『JOKER』のタイトルを出しているのが不安でした。『JOKER』は従来のジョーカーをいい意味で気にせずに、見せたいものを没頭して作られた名作だったので。今作もそういう映画が観たかった。『JOKER』のヒットは気にせずに。
しかし今作は、私たちの知っているバットマンではありましたが、殻を破るものはなし。バットマンの歴史のなかで特筆すべき映画とはならないでしょう。ファンの期待を裏切ることは、良くも悪くもなかった。
バットマンは変身前と後共に、私たちのイメージ通りのバットマンを見せてくれました。コスチュームも肉弾戦もカッコいい。胸元にパチッとハメるバットナイフが好き。段ボールの開封とかに便利そう。
しかし私は、バットマンのテーマは、秩序を守ろうとして戦う自分自身が違法行為の私刑を繰り返し秩序を乱す存在であるという矛盾にあると思っています。それがゴードン警部補と二人三脚で動き、堂々と捜査に関わっています。工藤新一か。警察はあくまでバットマンの行為を公式には認めない立場をとって欲しい。また父親が善人ではなかったのではないかと不信に陥るシーンは、らしくなってきたとワクワクしましたが、執事アルフレッドの話ですぐ我に帰ってしまう。
またキャットウーマンとのチームワークは、ほのぼのすらしています。彼らはコスチューム格闘家という共通点はあっても、正義のためと信じて警察と協力するBATと自分の目的のために盗みを働くCATなので、たまたま利害が一致して共闘することはあっても、チューしたりバイクで抜きつ抜かれつイチャイチャしてどうするんです。
リドラーは孤児であり、自分たちを抑圧してる社会に不満や怒りを持っています。権力者たちはその実、殺人や収賄で地位を守り、市民に嘘をついている。それにNO MORE LIES.と叫ぶ、過激な正義。これはジョーカーはジョーカーでもペルソナ5の方と似てますね。屋根ゴ○さん。そんな世直し思想は同じく社会不満を持つ人たちを煽動していく。この辺は『JOKER』ぽい。リドラーは勝手にバットマンと正義コンビを築いたつもりがフラれてしまう。なんか、ただただ1人でダダ滑りしていったリドラー。そして街中を洪水に巻き込んでクライマックス。なんで洪水にしたのか全然ついていけなかったです私は。嘘つきをカメラの前に引きずり出し全部暴きたいキャラじゃないんですか。
最後は洪水からの復興をめっちゃ手伝っていたバットマン。彼は結局、社会の歪みの根本に手は出さず、対症療法的に今起きている問題の解決に尽力する人なんですよね。今殴られようとしている人がいれば守り、瓦礫に埋もれる人がいれば助け、腹を空かせている人がいれば顔の一部をあげるのでしょう。ゴッサムの歪みに手を出したハーヴィーデントやリドラーはヴィランでした。
ペンギンは人外にならずに、ペンギン感出てたのよかったです。ゴードンとバットマンのコンビに、good cop or bad cop rouroutine?って言うのはあの名シーンを思い出しますね。頭を机に思いっきり叩きつけてからはじまる取り調べ、また観たくなりました。
私たちの観たいバットマンがそこにいて、楽しかったのは間違いないですが、バットマンの哲学が進むことはなかったように思います。普通の映画という感じ。
アーカムアサイラムで奇怪に笑う男は…