「夜と雨がよく似合う」THE BATMAN ザ・バットマン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
夜と雨がよく似合う
言わずと知れた超有名なアメリカン・ヒーローのバットマンですが、過去の映画作品は鑑賞したことがなく、その昔、テレビドラマで観た全身タイツのバットマンしか知りません。そんな自分でも、本作を十分に楽しむことができました。
ストーリーは、ゴッサムシティの市長選に端を発した殺人事件の犯人を追う中で、この街にはびこる根深い悪があぶり出されると同時に、自らの過去や真実を知ることになる、バットマンことブルース・ウェインの活躍と苦悩を描きます。
全体的にサスペンス色が強く、痛快ヒーローアクションというより、事件の真相にじりじりと迫っていくという展開です。絵的には地味に映りますが、緊迫感を伴いながら、わずかな手がかりを手繰り寄せるような展開は嫌いじゃないです。ただ、終盤のたたみかけるような展開にはちょっとついていけなかったので、機会があれば改めて鑑賞したいと思います。
舞台となるゴッサム・シティは、そのほとんどが夜や雨のシーンで描かれ、常に陰鬱な雰囲気が漂い、この街が抱える闇を覆い隠すようでした。と同時に、ブルースの心の内を暗示するかのようで、バットマンの存在もこの街の一つのピースとしてぴたっとハマっているような印象を受けました。
一方で、アクションはやや少なめでしたが、最大の見せ場のバットモービルでのカーチェイスシーンは圧巻でした。何が起きているのかわかりにくい部分はありましたが、IMAXの迫力ある映像と相まって、その迫力はなかなかのものでした。できれば、近接格闘やガジェットを駆使するアクションシーンがもう少しあるとさらによかったです。
主演はロバート・トーマス・パティンソンで、苦悩するブルース・バットマンを好演しています。よく知らない俳優でしたが、今後は注目していきたいと思います。ヒロインのゾーイ・クラビッツもなかなか魅力的でしたが、主な女性キャストが彼女だけなのは少々寂しいところです。とはいえ、本作の醸す雰囲気には華やかさは邪魔なので、致し方ないですね。