劇場公開日 2022年3月11日

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「The Truth UNMASKED 一枚ずつマスクを剥ぎ取っていく背徳感にやられる ---」THE BATMAN ザ・バットマン とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5The Truth UNMASKED 一枚ずつマスクを剥ぎ取っていく背徳感にやられる ---

2022年3月10日
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『ジョーカー』がホアキン・フェニックスの名演が無ければただの型に嵌ったキャラクター映画に過ぎなかったことを思い出してほしい。
『セブン』のように完璧に病める現代を捉え、闇に迫り/白日の下に晒す怪作だ。

I am the shadows... I am VENGENCE.
往年のノワール映画のような独白から始まる探偵モノ × ダークヒーロー × 陰謀モノ、そして…よりダークに、よりディープにエグい代物が解き放たれた。見るのに体力使って疲れるけど、その価値がある。匿名性=謎めいた部分あってこそなのに、殺人現場に残される自分宛てのカードが胸をざわつかせる。そして過去に足を取られ復讐に囚われた一人の若者が、怒り傷ついた人々の希望として真のヒーローになるための通過儀礼(有名人税と一種お祓い)。
歴代よりダークに病める世界の真理を暴く。幾重にもなった事の真相と深い闇。バチボコに格好良く渋い画に痺れている内に到達する真実それ自体が衝撃的というよりは、そこに至る過程含めて実に巧妙でまんまと唸らされてしまった。一枚一枚とベールを剥がしていくストーリーテリングはもはやマトリョーシカのよう。なんて魅惑的なのだろう。
その中心にいるのは、若手イケメンスターのイメージから一転ブルース・ウェインばりの修羅の道を自ら選び、作家主義全開インディー/アート系映画で叩き上げ鍛えられてきたからこその(難役に挑んだり長期間撮影したりと役者としての体力をついただろう…何回も言うが日本で言えば松坂桃李!ということは本作は孤狼?)今回満を持しての大作主役で出ずっぱりパティンソン vs 『ゼア・ウィル・ビー・〜』『プリズナーズ』etc.と"ヤバいやつ"実績多数(90年代で言えばケヴィン・スペイシー?)ハマり役ポール・ダノ!実力演技派対決!!

RENEWAL
『猿の惑星』をハズレ無し見所・傑作だらけの3部作で見事に描いた信頼に足るマット・リーヴス監督による"イヤー・ツー"(ノーラン『バットマン・ビギンズ』が原作イヤー・ワンを下敷きにしているのに対してこう呼びたい)。予告編通りニルヴァーナ"Something In The Way"を聞きながら脚本を執筆したというカート・コバーンをモデルに描かれたバットマンになって2年目のブルース・ウェインは、今までの社交的な大富豪というイメージとは異なり厭世的ですらある。アルフレッド役は『猿の惑星』シーザー役など盟友アンディ・サーキス、父子というより叔父と甥のような関係を築く。
約3時間にも及ぶ長い本編尺の殆どに出ていて、かつそれもバットマンのスーツ姿とハードな状態のロバート・パティンソンは間違いなくMVP。スーパーウルトラ格好良いけど、とりわけハードな撮影の後に彼が鏡を見て「自分が人間に思えなかった」というのも納得。スーツに関してより実用的かつ連日連夜の戦闘による傷などリアル志向だし、考えすぎかバットマンのマスクが鼻の部分から目の先にかけて線が入っていて、常に涙を流しているようだった。あるシーンでの『ジョーカー』のホアキン・フェニックスを思い出すような翼の生えそうな背中。ジェフリー・ライト演じるゴードン警部補は探偵モノとしてはまるでシャーロック・ホームズにおけるワトソンのような頼れる立ち位置で、去年の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』に続き過去に足を取られる主人公の相棒。ゾーイ・クラヴィッツのセリーナ・カイルはハマり役すぎるし、バットマンとも2人の息ぴったりでスクリーン映えもするカップル。

To the Batman
"What have you done!!?"
今はこう叫びたい気分だ、"Dear, diary. This is THE BATMAN we've waited for!"

A REAL CHANGE
一方で、人の闇を引きずり出す知能犯リドラー(≒ゾディアック)に心酔する危険分子が出てきてもおかしくないほど筋の通った行動原理と、ポール・ダノのハマり役すぎる熱演に危なく魅了される。不都合な真実と暗い過去。ピーター・サースガードとのシーンがキツかった辛かったというような記事を読んだけどあのシーンだったのか。なるほど確かに。見事な特殊メイクでキャストにもコリン・ファレルと気づかれなかったペンギンは、前情報通り確かに8シーンくらいしか出番なかったけど、それでも強烈だしもっと見たくなった。いつの時代だって巨悪蔓延る世の中だ。皆が見て見ぬふりする世界の真実を炙り出せ。
この謎の鍵を集めろ。今年一番と言っていいほど期待値が高すぎた分、想像は超えないかとも途中思ったが、見終わってみたらやはり凄かった。終盤圧巻…。人は見かけによらない、一線を越えたら負け。最初の方でバットマンを止める警官で後半活躍するのもいい。対峙するシーン、ポール・ダノ劇場。"復讐"に囚われて生きるか、このどうしようもない救いもない街のために立ち上がる希望となるか。バットマン5年目でも10年目でもなく、これは確かに2年目で"ザ・"。"何か"が邪魔してくる、真のヒーローになるための試練。まさしく挿入歌同様サムシング・イン・ザ・ウェイ。あれ、出ると聞いていたバリー・コーガン君は…?え!!
もしかしたら『ジョーカー』等と共通する部分テーマもあるかもしれない。けど、本作におけるそこの深堀り具合がもっと面食らうものだった。そう、マット・リーヴス監督は3時間にもなる異色だらけの本作で今まで何度も描かれてきたバットマンというヒーローの今まで見てきたようで、けど新鮮かつ更に暗く深い部分に光を当ててみせた。各所、差異を伴う反復も印象的かつ効果的だった。充実すぎた。人によっては疲労感含めて少し白けてもおかしくなさそうだけど、それはそれ。本作の投げかけ突きつけてくるQ.「?」に対するアンサーはいつだって傷ついたぼくらが持っている。ア〜〜〜イ。グッバーイ…〈?〉

劇場総鑑賞回数(前夜祭含む)2回

NO
MORE
LIES

For the Batman
See you in Hell
P.S. 予告が解禁されたときにはそのあまりの格好良さ、魅惑的な世界観、素晴らしさに魅了され10回以上は繰り返して見た。試写会落ちまくったのでせめて前夜祭で!開始早々、雨の音のリアルさでIMAX感じた。前の夜に持ち前の(?)不眠症気味炸裂して眠れなかったので心配だったけど全く眠くならなかった!にも関わらず…もう国際問題になってもいい、あのバカ外国人ども御一行を誰か締め上げてくれ。無論、映画館の中もエンドロールの余韻0スマホ地獄などゴッサムだった。映画モラル・リテラシーが話にならないほど低いやつばかりで本当にうんざり嫌になる。反吐が出る。
…と自分も日記に書こうか

とぽとぽ