「20年前の作品からの脱構築」マトリックス レザレクションズ マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
20年前の作品からの脱構築
およそ20年振りに劇場にカムバックしてきた人気シリーズの続編。
リザレクションズとは「復活」という意味だが、それに至る道中でいかに紆余曲折があったかという内情が暴露された中身だったように思える。
鑑賞している最中、そんな製作者の内面のことを様々なキャラクターに散りばめさせ、それを象徴的に描いているように見えた。
バックス=新世代の若いファン
アナリスト=創造主、上層部
コンピュータプログラマー達=バレットタイムから逃れられない古いファン、スタッフ
キアヌ=監督の分身
そしてマトリックス自体をゲームソフトとして扱い、メディアミックスで儲けたであろう自分たちをパロディ化して序盤にさんざん時間を使っておどけて見せたのがなかなか懐が深いなぁと思うしなかなか笑いを誘うように真剣に見せるのが寛容的とさえ思う。
キアヌはマトリックスの世界の会議に何回も出たであろう。その度におなじ会話を聞き続けたと思う。「その話前も聞いたよ」と同僚のプログラマーに言うセリフはきっと監督自身も同じように制作場で何百回も言われたからなんだろうなぁと思う。しかしそれを嫌味ったらしく見せないであくまでふんわりとした印象を持たせるのは大人の余裕だ。
と同時にアナリストから貰う薬(青いヤツ)大量に飲むシーンはマトリックスらしさを追求するために精神的に追いやられてることを意味してるのかなと思ってもがいているのを表し、ジムでひたすら走るのは迷走を表しているのかもしれない。会議→薬を飲む→走るの繰り返しでハムスターが回転車を走るようにグルグル日常を繰り返しているのかと思うといかに心が消耗しきっているかが目に見えてわかる。
しだいにその日常が何回も繰り返させられ、その制作会議を何回も見せられ、企画会議をして続編はこうだ!ファンはこうしなければ満足しない!という打ち合わせを何度もして、何が現実かどこまで信じていいか、が分からなくなるのがマトリックスの題材である日常と非日常が分からなくなることのメッセージ性にも付随して皮肉にもその過程が作品とピッタリ重なるのも面白い。
まさか作品内でワーナーへの不満を暴露したりするとは思わなかったがそのクリエイターの苦しみや上層部への批判をキャラクターに言わせてマーケティングへの嫌味も多分に含まれていたのはそれ含めて作品として見せる思い切りの良さは良かった。
また今作のネオは銃をほとんど撃たずにかめはめ波を放つがそれ自体が監督の吹っ切れたメッセージとも裏読みできて好き嫌いが別れるとは思う。かめはめ波のぶっばや、最後の飛翔も含め既存の世界観からの脱構築を目指しているのだと肌で感じるように分かるが如何せん一方的に見せて単調に感じた。
しかしエンディングのあとも「ファンはこういう要素を入れれば好きになるだろ?」という皮肉も最後に見れて本当に監督は鬱憤が溜まっていたのかなぁ。