「夢が現実になる恐怖」ドリームプラン 桜場七生さんの映画レビュー(感想・評価)
夢が現実になる恐怖
頑固一徹で変わり者の父親のキャラクターが前面に出された実話。
成功した、と言う結果があるから父親の「プラン」の先を知りたくなるが、そうでなければ見るのを投げ出したくなるかも知れない。それほど、この父親は"何がしたいのか分からない"のだ。
やっとついてもらったコーチにはダメ出しの後、普通の道は通らせたくないと、唐突に契約を打ち切る。
試合に出なければプロにはなれないのに、「子供らしく過ごして欲しい」から試合は出さない、インタビューにも口を出し、子供の発言は遮る。あなたは娘をどうしたいのですか?と当時の人たちが思ったのも無理はない。
しかし、父親のこれらの行動を決めているのは自分自身の恐怖の体験である。
父親の教育方針は別におかしくはない。その時々で得た情報から微妙に修正はされている。
ただ、その"自分の考え"を誰とも分かち合おうとしないのが病的であり、そこに彼の深い傷が隠されている。
子供を悲しませたくないは、自分を悲しませたくないとイコールである。
夢が実現するほどに子供が対面するものは大きくなり、それと共に父親は自分の力を疑う。自分はそれを抱えきれるのか、と。
子供の人生は子供の人生であると、妻が言葉を尽くした説得に応じなければ彼は過去に囚われたただのモンスターで終わっただろう。
娘の試合は父親にとって、そして彼女と同じ境遇を抱えている全ての人に深い意味を持つ。これこそがこの映画の醍醐味だ。
恐怖は塗り替えられるものである。
と言う所な気がするが、最後の実際の映像でただの美談に見えそうなのがちょっと危うく感じた。
個人的には人種差別の根深さを強く感じることが出来た映画だったが。