「リンチは何も間違ってなかった(※冒頭に追記)」DUNE デューン 砂の惑星 よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
リンチは何も間違ってなかった(※冒頭に追記)
追記)皆様の感想を読んでいたら気になるところがあったので先に言っておくと、『スター・ウォーズ』との類似性を云々する人たちが散見されるけど、『スター・ウォーズ』がデューンの原作をパクったんだからね。似てるように見えたのであれば堂々とパクった『スター・ウォーズ』の方を責めるべきだ。
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元々原作ファンで、中学の時に公開されたリンチ版を劇場で観て、サンドワームに感激の涙を流したわたしにとって、成長してから聞いたリンチ版の酷評はまるで信じられなかった。うん、それは確かに尺が足りなすぎて話が分からんところはあるね。でも、シーンごとに見ていけばきちんと原作を再現してて素晴らしいと思うんだ。そう思って、誰がなんと言おうと好きな映画として語り続けてきた。
さて、そんなわたしがヴィルヌーヴ版を観たのだけど。
やっぱりリンチは何も間違ってなかった。
照らし合わせれば分かる。結局、原作の同じ場面はリンチもヴィルヌーヴも同じように描いているのだ。
編集権を取り上げられた以上、まとまりが悪くて一本の映画として良くないというのは分かる。でも、バラバラにされた各シーン自体は別に悪くない。だから、リンチが思うように組み立ててたら、必ずいい映画になってたはずだ。
いや、一旦リンチ版の話は脇に置こう。
原作ファンでリンチ版も大好きなわたしとしては、それを踏まえた上でどんな作品になるのか、興味もあったけどちょっと不安も感じていた。
けれどそれは杞憂だった。原作ファンにも納得の映画だ。
多分聞いたこともない単語の羅列で面食らう観客が多いと思うが、それこそがまさにデューンの魅力なので、頑張ってついてきてほしい。ちなみに原作には巻末に用語集がついてる(あれって日本語版だけだっけ?)。「用語集をつける」というガジェットのはしりがこの作品なのだ。
ベネゲセリットだのクイサッツハデラッハだのシャイフルドだの、この人たちは何を言ってるんだろう、と途方に暮れたら、まずはそう言った独特の用語には目をつぶって、ストーリーだけを素直に受け入れてほしい。実は話自体はさほどややこしくはない。メランジと呼ばれるスパイスを産出する宇宙で唯一の星、惑星アラキスの利権を巡る争いと見せかけ、実力あるアトレイデ家をハルコンネン家とコリノ家が結託して滅ぼそうとする。だが実はアトレイデ家の後継ぎポールは救世主となる運命を持っており、メランジの力とアラキスの砂漠の民フレーメンの協力により、コリノ家、ハルコンネン家に復讐を誓う、というのがこの映画のストーリーだ。
ここに、宗教的観念と環境問題が絡むことにより、物語に深みを与えているのだが、一旦はまず表面に見えている公家同士の争いだけに注目するので良い。これだけだとよくある話ではあるのだけど、話を面白くするのはスパイス、サンドワーム、あるいは素早く動くものは通さずゆっくり動くものだけが通るシールド、定期的な振動によりワームをおびき寄せるのに使われるサンパー、砂漠で生きていくために不可欠な、それ自体が水分の循環を司り生命維持装置として機能するスティルスーツといったSF的ガジェット群だ。こういった、原作でも重要な要素であるものをビジュアル的にどう表現するかというのが映画の課題だと思われるが、この辺りは分かりやすく、かつ納得のいく描写になっている。そしてポールが繰り返し見る夢。なぜこういう夢を見るのかについては次作で掘り下げられるはずだが、これも描写の美しさもあいまって見事に描かれている。
デューンを映画化する場合、こういった独特な道具や能力をいかに映像的に説得力ある見せ方ができるかが一つのポイントとなるのだが、こういった部分についてはリンチ版もヴィルヌーヴ版もうまく処理されている。面白いのは両方とも結局同じような描かれ方になるところで、これは要するに原作の描写を忠実に再現できていれば、自ずから同じようなルックスになる、つまりそれだけ原作が視覚的にきちんと説明されているということでもある。
ヴィルヌーヴ版で物足りないところがあるとすれば、砂虫サンドワーム、別名シャイ=フルドの見せ方だろうか。まだ全体像は見えず、一度頭をもたげた姿があったのみなので、このあたりは続編に期待したい。
原作自体がSFにおける不朽の名作であり、ビジュアル的にも十分に納得できる描写がされている以上、「忠実に再現されている」事自体が評価軸になってしまうのが避けられないので、評価としては難しいところだが、わたしは一原作ファンとして、原作を見事に映画に映し描いていることこそ評価をしたい。次作がある前提の作りなので、次の機会を心待ちにしている。
素晴らしいレビューに感動です!
本作のレビューで、よしえさんのご感想が1番好きです〜♪
リンチの映像、1シーン、1シーンは非常に良いと思いますし、使われなかったフィルムは映画以上に膨大にあるのでしょうから、リンチが編集出来ていたならば・・・。
ヴィルヌーヴ版、part2はあんなシーンやこんなシーンなどワクワクさせてくれるものと、脳裏に映像思い浮かべて楽しみにしていますw
DUNE愛がスゴイですね(笑)
私はナウシカ等多くの作品に影響を与えた古典SFであるという程度の予備知識しかなく、原作も過去の映像作品も未見でこの映画を観ましたが、とにかくスゴかった!
翌日もう一度観に行き、原作小説も読み始めました。
日本ではあまり客が入ってないのか、IMAXや Dolbyシネマスクリーンがほとんど終了しているのが残念です。
(すみません、コメントのお返事書きたかったんですが、アプリ版だと自分のレビューにコメントできず、ブラウザ版で書き込もうと思ったらログインの仕方忘れてて、遅くなっちゃいました。)
>川野義和さん
ドラマ版ありますね。わたしは未見ですが、原作のもう少し先(『砂漠の救世主』『砂丘の子供たち』)まで映像化されてるそうなので、いつか観たいと思っています。
リンチ版のハンター・シーカーはおっしゃるとおり注射器みたいなデザインでしたね。あれはあれでリンチっぽいとは思いましたけど、ヴィルヌーヴ版のあれの方が原作のイメージに近くて良いと思いました。
>ぷにゃぷにゃさん
そうそう、最初は石森表紙でした。
わたしが買った時は映画のスチール表紙でしたね。その後加藤直之版になって、これがカッコいいんですよ。
ちなみに矢野徹先生の訳は味があって好きなんですけど、あの訳のせいで難しくなってるという面もありますね。新訳は読みやすいらしいです。
>CBさん
ありがとうございます。映画観て帰宅して、眠い中早く感想を書かなきゃと悪戦苦闘してたので酷い文章ですみません(汗
リンチ版、決して悪くないと思います。ただヴィルヌーヴ版の後半のネタバレになっちゃいますので、観る場合はいっそ途中で止めちゃいましょう。
>まー太郎さん
あれってもうちょい後に出てくると思うので続編で描かれるんじゃないですかね。
ちなみに原作でどうだったかはすっぱり忘れました(笑
近いうちに新訳版で読み直してみようと思います。
連続ドラマみたいなのもたしかありましたよね?
ハンターシーカーでしたっけ? あれってもっと露骨に注射器の形をしてた記憶が……。
小学生の頃の話で記憶が曖昧で。
あと声を増幅して相手にぶつけるみたいなあった記憶があります。
わかりやすくてありがたいです。
昔、ハヤカワ文庫で石ノ森章太郎が挿絵じゃなかったですか?
実は原作は途中で挫折しました…。
どうも難しいという印象があります。