「デビル・トライアルの魔女」死霊館 悪魔のせいなら、無罪。 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
デビル・トライアルの魔女
2013年にスタート。来年に丸10年を迎え、その間、スピンオフなどを含め通算8作目。
すっかり現在を代表する人気ホラーシリーズとなった“死霊館ユニバース”。
本作は5年ぶりとなる“本家”の最新第3弾。
『~エンフィールド事件』以降、マスコットキャラ的な“恐怖の呪いの人形”や“顔面凶器の最恐シスター”や“泣く女”らが恐怖とエンタメ性の“死霊館ワールド”を拡げていたが、久々に本家が本領を見せつける。
ご存知のように本家は実話が基で、主人公の心霊研究家ウォーレン夫妻も実在。
そのウォーレン夫妻が、「最も恐ろしかった」と語るのが前作『~エンフィールド事件』ならば、「最もセンセーショナルだった」と語るのは本作。
それもその筈。話はにわかに信じ難い。
が、本作もまた実話が基…。
1981年、米コネチカット州ブルックフィールド。
ある一家の末っ子に憑いた悪魔祓いを行っていたウォーレン夫妻。想像以上に邪悪な存在で、ウォーレン夫妻も手こずる。
激しい悪魔祓いの末、悪魔は幼い少年の身体を離れた…ように思えた。が…
暫くして、少年の姉の恋人アーニーが殺人の容疑者に。家主を22回もめった刺しして殺した模様。
が、アーニーには事件当時の記憶が無い。何故なら、
あの時少年の身体を離れた悪魔は自分の身体に取り憑き、殺人は悪魔による犯行だと言う…。
衝撃の悪魔に取り憑かれての殺人事件。
それだけじゃない。
悪魔に取り憑かれていた事を理由に、無罪を主張し…。
普通に考えれば、キチ○イな言い訳にしか聞こえない。
が、言うまでもなくウォーレン夫妻が実際に体験した“実話”。
それにアーニーは、自ら殺人を犯すようには思えない好青年。
一体、何があったのか…?
ウォーレン夫妻はアーニーの無罪を信じる。全て悪魔のせい。
が、法の場でそんな事、茶番でしかない。悪魔など居るものか。
裁判では聖書に手を置き、神の存在は信じるのに、ならば悪魔の存在を認めるべき。そう主張するウォーレン夫妻の言い分に一理あり。
アーニーの無罪を証明するなら、立証しなければならない。悪魔の存在を。
ウォーレン夫妻は悪魔が実在する証拠探しに奔走する…。
前代未聞の悪魔裁判…!
証明の糸口になるかもしれない事件が別州で。以前、似たような事件が起こっていた。
一人の女子高生が友人を22回もめった刺し。その後、生きているのか死んだのか行方知れず。
警察と共に捜査。ロレインの特殊能力=霊視で遺体を発見。
黒魔術に詳しいベテラン神父から手掛かりになりそうな話を聞く。
事件の発端である一家の床下から悪魔召喚に使う不気味な彫像を発見。見つけた女子高生の部屋からも同様の彫像が。関連性あり。
手掛かりや幾度かのロレインの霊視により浮かび上がってきた思わぬ犯人。
それは、魔女。悪魔を崇拝する女性の呪いによるものだった…!
前2作は家とその家族を襲うストレートなポルターガイスト物だったが、今回は趣向を変え、ウォーレン夫妻が外に出、動く。
時には夫妻が二手に分かれ、調査。謎解きの要素も。
さながら、オカルト捜査ミステリー。
これはこれで新しい面白味はあった。
が、前2作のようなポルターガイスト物を期待すると、本家でありながら“番外編”のような印象。好き嫌い分かれそう。
また、前2作…特に第1作目のような秀逸なホラー演出も期待すると、ちと怖さに欠ける。オカルト色が強く、前2作のような抑えた恐怖演出から見世物的なホラー演出に。
“悪魔裁判”はノンフィクションだが、話そのものはフィクションらしく、そのフィクション部分が今一つの点も…。
監督のマイケル・チャベスは『ラ・ヨローナ 泣く女』での手腕を買われ本家抜擢であったが、勿論悪くはないが、やはりマスター、ジェームズ・ワンの手腕は見事だったと痛感させられてしまった。
それから、肩透かしだったのは題材になっている“悪魔裁判”。もっとここがメインとなり、悪魔の存在の有無を法廷で問い、それと共に事件の真相が明かされていく、オカルト・ホラー×本格裁判ミステリーと思ったのだが…。“悪魔裁判”はあくまで発想の元だったのかな…?
魔女の呪いが夫妻に襲い来る。夫妻の絆が試される。
初めて明かされる夫妻の馴れ初め。
夫妻だけじゃなく、アーニーと彼を支える恋人。
悪魔の力に、ベタだが“愛”で対抗。
ホラーでありつつ、ヒューマンな人間愛ドラマを描くのは、本家シリーズの定番。
…いや、それを描いてこそ。
恐怖の後に、一味のほろ苦さ、切なさと、穏やかな温もりに包まれる。
EDで、実際のアーニーの判決。事件は解決したが、裁判は…。
本当に悪魔に取り憑かれていたとしても、実際に手を下したのは…。仕方ない事かもしれないが、どうにかならなかったのか、凝りが残った。
恒例の肉声は、あまりにも不気味…。本当に、そこに“悪魔”が…?
さすがに本家前2作には及ばず、『アナベル』の『2』『3』ほどでもなく。
ユニバースでは個人的に5番目って所だが、それでも今回もホラー・エンタメであった。
もし、本当に悪魔に取り憑かれたら…?
もし、本当に“悪魔裁判”が開かれたら…?
あなたの判決は…?