「リプリーになるスチュワート」アンダーウォーター 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0リプリーになるスチュワート

2020年7月11日
PCから投稿

Kristen Stewart forgetting she has short hairというバイラルになった動画がある。
パーソナルショッパーの後でクリステンスチュワートが丸坊主になった。イメチェンにしても大胆である。インタビュー等で見るとけっこうファンキーな気性の人である。あんがい、オファーを敬遠する口実をつくったのかもしれない。理由はどうあれクリステンスチュワートのブロンド坊主はかっこよかった。

おそらくパーソナルショッパーのプレミアだがクリステンスチュワートが大量のフラッシュを浴びている。
そこで彼女は一瞬髪をかき上げる仕草をする。
が、すぐに思いとどまってその手を下ろす。
彼女はかき上げるべき髪が無いことを忘れていた。
指摘されて、はにかみ笑いをする──という、ほとんど一瞬の動画である。

カメラの前で髪をかき上げるポーズをつくろうとしたのはスター女優の意識だが、坊主頭を忘れていたことに無意識が介入している。その無意識がかわいい。で、バイラルになった。

この映画で再度坊主になっていたので、動画を思い出したのだが、やっぱりクリステンスチュワートの金色坊主はかっこいい。
ほとんど彼女を見る映画になっている。

はなからインナーウェアであらわれる。
華奢なひとだと思っていたが、おもいのほか肉付きがある。むしろたくましいほど。かるい衝撃だった。その体つきも、かっこいい。

映画は雑ぱくに言えば「こんどのは泳ぐんだぜ」と喧伝されたエイリアンの4作目のような感じである。船内もリアルで、メカニカルな潜水服のディティールもモンスターの造形もいい。スチュアートの顔にできる傷も、ややギークなめがねも、やたらきまる。

このひとのばあい傷もジュエリーにしか見えない。飾りっ気のないラウンドめがねも、鼻梁に横に入った切り傷も、がんらい美しさと無縁のものが、醇美なアクセントなってしまう顔立ちを満喫できる。

ヴァンサンカッセルはヨーロピアンな暗さをもたらしており、その暗さは好ましい。総じて晴れない映画だが、雰囲気も結末も楽しめた。
が、おそらくThe Descent(2005)的なところを目指した映画だと思うが、画の暗さに妨げられ、どちらかといえば、及第なプロダクトに仕上がっている。
スチュアートがひとりで価値をあげている映画だった。

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津次郎