「じわじわーと来る」モロッコ、彼女たちの朝 はなもさんの映画レビュー(感想・評価)
じわじわーと来る
目は口ほどにものを言う、とよく言うが主人公アブラを演じた女優は、まさしくそれだった。
ことに映画冒頭、店前で野宿するサミアの様子がなんとなく気にかかるアブラは、サミアを一泊させるがその後 出て行ってと申し渡す。けれどサミアが出て行った後 自分のおこないは正しかったのか、留め置くべきだったのかと逡巡する様子は秀逸であった。ラ・ラトゥールのマグタラのマリアの絵を思い出した。まさしくあの時のアブラは、悩めるマリアそのものだった。その圧倒的な存在感、説明は一切無いのに心の細かな機微が手にとる様にわかった。
事故死した夫とちゃんとお別れしていないと感じているアブラは、いつも眉間に皺寄せ、笑う事すら忘れた様にあらゆる楽しみを封じ 娘にもやや厳しく生活している。
そんなアブラに サミアが哀愁あるアラブ音楽を流しながら「もっと優しくこねるのよ」と共にパン種をこねるシーンは艶かしく、アブラの心を解き放ち、その後のアブラに変化が生じ、自然に笑い、身なりにも気を使う。
そして映画の最後は、男の子を出産した後の、2日間のサミアの気持ちの変化とサミアの表情を丹念に描き、結末は観客に委ねている。
このモロッコ映画は、静謐だけど圧倒的な「生」だと感じた。大袈裟な事柄は無く、まるで藤沢周平の世界の 市井の人たちがモロッコに居たと思えた。
アラブ音楽は耳に心地よく、食べてみたいルジザ、行ってみたいモロッコ。
珠玉の映画だと思う。
はなもさん。コメントありがとうございます。
見抜かれてますねー笑
多くの変化が丁寧に描かれた作品でした。
はい。「コレ」と「17歳の…」は女性がメインのお話ですから男の僕としては「書きにくい…」が正直な感想です。
ジョルジュ・ラ・トゥール(仏)の「マグダラのマリア」、検索しました。
モロッコの映画だけれど、制作にフランスとベルギーが加わっていて、あの絵画的で静止したカットと、ポーズ・色合いを醸したことは間違いないですね。
モロッコ料理⇒ググるとあちこちにありますよ。僕もルジザ食べたいなぁ。
コメント感謝!
おはようございます。
「キャタピラー」に頂いたコメントバックです。
強烈な映画でした。
最初はオロオロしていた寺島さん扮する奥さんの眼が、ドンドン据わった目になって来るのが、怖かったですね。では。
静謐だけど圧倒的な「生」
この素晴らしい表現で、この映画の奥深さをあらためて感じさせていただきました。ありがとうございます。
男の場合、〝生きざま〟なんて言葉で「生」を表現したりしますが(もうすぐ公開の『燃えよ剣』の土方歳三などはまさに❗️〟)、女性の場合、プロセスや生き方のスタイルを超越した次元の根源的な強さや慈愛が既に「生」そのものだったりすることがあります。何度も同じことを言ってますが、やはり、男は逆立ちしても、女性には頭があがりません。
根拠のない自信満々でしたし、恐らくそうなんでしょうという感想です。
ただ、人工中絶で実刑をくらう国ですから、ドラマとしてはもう少し何かあっても良かったのかなとは思いました。
今晩は
”藤沢周平の世界の市井の人たち”
成程。圧政に苦しみながらも、懸命に生きる海坂藩の町民や下級武士と、今作のモロッコの女性達の姿は、重なりますね。
目から鱗でした。
抑制したトーンと、モロッコの市井の人々の姿が印象的な佳き映画でしたね。では。