いつくしみふかきのレビュー・感想・評価
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【悪魔と呼ばれた父と”悪い血”で繋がっている息子との、複雑極まりない関係性、愛憎を抱く姿に引き込まれる作品。】
・序盤の、進一(遠山雄)の父、広志(渡辺いっけい)の言動、行動には全く共感できず(”悪魔”と呼ばれ、村から放逐されたのも当たり前の所業である・・。)、その後も全く反省なしに繰り返される広志の愚かしき所業には呆れかえる。
-どうしたら、こんな人間が出来上がるのか?-
・その影響は何の罪もない進一にも及び、彼は幼き日”そのリンゴ飴はどうしたのか!”と母に詰問されたり、成長してからも叔父からは”お前の父親のお陰で、妹の人生は・・”と責められ、生気の無い顔でボンヤリ生きる進一。
そして、牧師(金田明夫)の教会で暮らすことになる進一・・。
そこに、再び事件を起こした進一が転がり込んでくる。牧師は敢えて、二人が親子だとは伝えずに”彼はお金持ちの甘やかされた息子”だと紹介し、奇妙な親子生活が始まる・・。
ー後半パートがとても良いだけに、この前半パートの”一部”の描き方が、残念である。何故、広志はあのような人間になったのか? 何故、教会の出し物の、あのような陳腐な演技で教会信者たちは、金を巻き上げられたのか? 大山監督と進一を演じた遠山さんが育った環境がイロイロあったそうなので、端折ってしまったのか・・。-
・後半、広志は漸く勤め始め、街中で偶々父親と出会い、”5分だけ”喫茶店で無言で珈琲を飲む。父の去り際、進一が”連絡先を教えてくれ・・”と言い、渋々父が受けるところから、物語は急速に面白くなる・・。
ー最初から、このレベルを維持しておくれよ・・。けれども、徐々に前半パートの”粗”だと思っていた部分が、後半に効いてくるのである。-
・父、広志が何気なく進一に言った言葉”この辺はリニアで儲かるから、二人で不動産業でもするか・・”
そして、二人が夫々取っていた行動。
・父の葬儀で、狂乱する母の姿を横目にしながら、”喪主”として挨拶する進一の言葉。
”あの人”が、皆さんにお掛けしたご迷惑、本当に申しわけなく・・”と深々と頭を下げる姿。
”あの人”という言葉はいつの間にか”父“に変わっている・・。
ー沁みます・・。-
・父、広志が借りていた店舗用の部屋。
ー謎の不動産業者(眞島秀和)が、床に置かれた封筒に入れた札を数えているシーンには完全にミスリードされた・・。ー
・そして、広志が亡くなった後、明かされた事実。
ー可なり心に沁みる・・。”悪魔”と呼ばれた男にも、息子に対しては“善性”が厳然としてあったのだ・・。部屋代を賄うために、危ない道に踏み込みながらも・・。-
<葬儀の後の、親子二人の忘れ難きシーンや、ラスト、進一がある行動に出るシーンを含め、イロイロと、印象深い作品であった・・。>
■蛇足
・人生初の”舞台挨拶”を経験。進一を演じた遠山雄さんの落ち着いた表情、話し方が印象的であった。
折角だから、この後何処の劇場に行かれるのか聞いたところ、大分県と青森県に行かれると仰っていました・・。
尚、当方は関係者ではありませんよ・・。(評点を見れば分かりますよね・・。)
<2020年8月 刈谷日劇にて鑑賞>
ハマらず
嘘をつき、人を騙し、脅して生きてきた男が、田舎の村で、結婚し、産んだ息子。男は、村に住みつきはしたものの、結局、盗みを、繰り返し村を追われる。その息子として、母の溺愛と「あの悪魔の子」という風評に挟まれて、何もしない、何もできない青年となった男が、自立するまでの物語。
一体、この映画の何を讃えればいいのだろう? 牧師の献身でも変えられない男の性(さが)と、それでも存在する親子の愛か?
いや、俺にはハマらなかった。ダメだ。
息子は、頑張ったな、と思えはするが、なんだこの話? テーマは、数奇な運命とかなのか? 浩二に対する男の態度は、恐らく彼が彼の人生で父親等から受けてきたそのままなのだろうが、そういう 「歴史は繰り返す」 というか 「彼の素行は彼のせいだけとは言い切れない」 という話なのか? わからない。
ただ、男(父)を演じた渡辺さん、息子の遠山さん、母の平栗さんらの熱演は、書いておくべきだろう。平栗さんに至っては、その表情があまりにも凄くて、前半はホラーとしか思えないほどでした。
この映画のおかげで、聖地巡礼と飯田市を訪れる人が増えるだろうか? 増えない気がする…
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