劇場公開日 2020年6月19日

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「ここから自分で歩きます。」いつくしみふかき 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ここから自分で歩きます。

2020年6月21日
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鑑賞方法:映画館

興味は、”悪魔”と忌み嫌う父親がどこまでろくでなしなのか。
落としどころは、寝覚めの悪い地獄のようなラストなのか、ヒューマンドラマのような泣かせなのか。
それは、タイトルの名に潜んでいる。それに、予告をみればなんとなく予想がつく。昭和の映画のようなねちっこい暗さを漂わせながら、息抜きのような笑いが紛れ込んでいるのだから。それがラストへの清涼剤ととれる人には、救いとなるのだろう。
個人的には、どっちつかずだった。「凶悪」のような後味の悪さに引きづり込むならやりきる、更生した姿を見せるなら運に見放された親父をとことん惨めに描く、どちらかに徹してほしかった。ただ、かつての「八つ墓村」ではあるまいし、ご当地映画とするのなら、救いのない映画は興行的にはNGだろうなあ。結局、全体的にこの形こそが、落としどころなんだろう。

役者はどの方もお見事。ふだんスクリーンで拝見することの少ない役者さんも深みがあった。で、有名どころをちょい役で使い回すところはむしろ小気味よく、いい流れを感じた。ロケ地も良し、音楽も良し、映像も良し。やはり、台本に不満が残る。あの親父が、わざわざ自分の身の置き所に苦渋する地方都市に居座る理由は後にわかる。しかし、服役もせずに?のモヤモヤが残ったままでは消化不良。絶賛のレビューばかりなのは、随分とゲタを履かせてもらっている気がしてしまう。主演は渡辺いっけいではなく、シンイチ役の若者だという目線で観れば、ラストシーンの台詞と映像が胸に迫ってくる。

栗太郎