「破壊と再生の物語、愛に満ち溢れている作品」さんかく窓の外側は夜 はるティスさんの映画レビュー(感想・評価)
破壊と再生の物語、愛に満ち溢れている作品
原作が大好きで公開を楽しみにしていました。
まず、はじめに断言しておく。
原作とは違ったアプローチの仕方で物語は始まります。
だからと言って、原作に触れずに観ると理解不能。
ある程度の世界観や関係性を掴んだ上で観た方がより染みるし、楽しめると思います。
原作とは似て非なるもの…として私は受け止めた。
様々な視点で映画さんかく窓を観て来た自分の記録。
原作が大好きだったのもあるけど、ストーリー、美術、音楽、全てにおいて私の趣向にどストライクであって、始まり方から終わり方まで最高によかった。
オープニングの「過眠」は冷川さんの。
エンディングの「暗く黒く」は三角くんの。
それぞれの心情を歌っているんじゃないかと思う。
触れたら壊れそうな、ずっと真夜中でいいのにの美しくも切ない歌声に最初から最後まで涙腺崩壊でした…特にオープニングが好き…もっと長く観ていたかった…(´;ω;`)
役者さん達みんな好きですが…
そこには焦点を当てたくない。
贔屓目では絶対に観たくないし、絶対に観ない。
と言う気持ちで終始観ていました。
映画化するにあたって、根底にある原作の力と世界観をぶち壊してくれるなよ…と正直恨めしい気持ちでいっぱいで、好き過ぎるが故に、観る前は不安で吐きそうだった。
原作とキャラクターの性格や話の展開が少し違ってはいるが、役者さん達のきめ細やかなお芝居や、森ガキ監督の表現したかった “中毒性のある独特な世界観” 私は純粋に楽しめました。
いい意味で、随所に違和感を覚える。
万人受けする作品では無い事は確かです。
不気味な事も起きるし、人ならざるものも出てくる。
目を背けたくなる惨殺なシーンも出てくる。
しかし、私は観れば観る程おもしろかった。
噛めば噛むほど深い味がある作品だった。
とにかく謎が多い…原作が謎が多いのでね。
最終話を読んでいるから、あの展開で腑に落ちた。
設定が違ってたり、思うところは色々とあるけども。
今まで観た事のない日本映画ではある事は間違いないと思う。
逆に原作では言わなかったけど、映画で言ってくれた事だったり、私の中では原作と映画がうまく補い合っていたので、グッとくるものがあった。
原作とは違う三角、冷川、英莉可、それぞれの孤独や葛藤が2時間の映画でうまく描かれていて、とても昏くて静かなる恐怖を携えており、だけどどこか暖かくて、優しい作品だった。
手を差し伸べてくれる人の重要性。
孤独を抱えた者同士が関わった時に生まれる“愛”
さんかく窓は、破壊と再生と愛に満ち溢れている。
人と人との繋がりが希薄になってしまっている今の時代…
まさに今、観るべき作品だと思う。
どうか、冷川、三角、英莉可が報われて欲しい。
「運命の人」と出会う事によって報われたと信じたい…
いや、信じるよ。
原作を何度も何度も読み返したけど、未だにさんかく窓の全てを理解出来ているワケではないし、大変余白が多いと思う。
その余白をどう感じるか、考えるかもこの作品の魅力でもある。
生きていくで、大事な事をたくさん教えてくれた。
終わり方に含みを持たせたのが良かった。
是非とも続編して頂きたい作品です。
上映されている劇場が徐々に減っています。
私の近所の劇場は上映が終わってしまいました。
さんかく窓は絶対に映画館で観るべき作品です。
1人でも多くの方に観て頂けますように。
分かってくれる人が、分かってくれたらそれでいい。
私はあの世界の“色味”が大好きです。