「親になるということ」泣く子はいねぇが マガランさんの映画レビュー(感想・評価)
親になるということ
キャスティングが良かったなという印象がまず起こる。
主人公、たすく訳の仲野太賀、
悪びれてない、というより悪い役柄っぽさがつきづらいイメージがある
その一方で頼りない、情けない、力もないの「3ない」が
観る側に寄り添ったリアリティと、客観的に観たときのヘタレっぷりがいい。
友人、志波役の寛一郎は良かった。
一昔前の表現でいうと「悪友」、ただたぶん「親友」だと思う。
こんなに付き合いのいい友人は自分にいただろうかと思い起こさせる。
東京で会って喧嘩して一緒に喧嘩に巻き込まれて
地元に戻ったたすくに怪しい働き口を斡旋したり。
そのおかげで警察に捕まってしまうも恨みをぶつけることなく、
ラストもたすくに付き合う。友人ってこういう人のことをいうのかもしれない。
ただ何故か最近のこういった良作の邦画、
居酒屋でトラブル起こし過ぎ疑惑はある(笑)
「佐々木、イン、マイマイン」でもそうだった。
ほとんど笑みや笑顔を見せない吉岡里帆も新鮮だった。
目線が終始辛いなと主人公目線になって思えるほど。
主人公との関係性の揺れ動きも中盤~終盤あたりの
やや厳しさが緩和されたかなと思える海辺の車中のやり取りの
バランスが良かったなと。
また、なんとなく強要まではしないけど、断りづらい田舎の感じもリアルだった。
主人公の粗相になまはげの風習の運命が影響しすぎではないかと思う感じもあったけど、
田舎で文化の担い手が減っている中だとそれも起こり得ることなのかなとも。
終盤の主人公兄弟の会話が一番印象に残る名シーンだと思った。
それまではあまり描かれない二人の関係性が
無駄と無理のない中であのシーンの間だけで絶妙に変化していっている様、
もう昔には戻れないということを互いに確認し合うような
おかしさと切なさがあって、あのやり取りは秀逸だった。
ラストのなまはげシーンは勢いがあったのはいいけれども、
もう少しバランスを保った方が良かったかなと思った。
真っ先に娘の元に行っちゃってずーっと娘に張り付いていたので、
どラストとは言え、他の子どもたちにもやってあげようよって思ってしまった(笑)
独身で子どももいないけれども、
親になるというのはそんなに大仰なことでもないにしても、
その一歩踏み出すところがどれだけ大きいことなのかというのを
丁寧に描いてくれたのはありがたい。