「大好きな作品」泣く子はいねぇが まつこさんの映画レビュー(感想・評価)
大好きな作品
もうこれは大好き過ぎる映画でした。
佐藤快磨監督、初の長編映画でありながらこの傑作というかクオリティというか…脱帽です。この脚本を読んでとても魅力を感じた是枝裕和監督やその団体が企画・協力をし、秋田の人達の協力も果て出来上がった作品。(佐藤監督は、脚本・監督・編集を自ら行う是枝監督等と同じスタイル)。男というもの女というもの、人間というものや郷土や伝統、しきたりなどの色々リアルなところを、良い所も悪い所も炙り出して描き出していて。それでいてエンタメとしての魅力もあり、観た人の心を掴んで離さない1本の傑作映画に昇華させてて、この映画に出会えて幸せだと思った。
舞台は秋田。子どもが生まれて父となった主人公たすくは、伝統芸能のなまはげに参加するために地域の人達と大晦日の夜に繰り出していくのだけど、そこで犯してしまった自らの失態のせいで、嫁からは見離され地元には居られなくなり東京へ逃げるようにして行くが、やはり家族に会いたいという想いで数年後また秋田へ戻るが…といったストーリー。
主人公が精神的に底の底まで落ちて(その分周囲の人間達は更に辛い状態になってますが…)、そこから成長して這い上がっていくストーリーかと思いきや、そういう訳ではなく…。家族の為に何とかしたい、家族と一緒に居たい、っていう気持ちは強く持っているし、酷い人間性があるわけではない男だと思うんだけど、家族や周囲が納得出来るような感じには動けず、且つ男性本来なのか自身が本来持ち合わせているものなのか、甘えた部分や大人・親になり切れない部分があって、そういった言動もさり気なく見え隠れさせている感じが、脚本・演出や仲野太賀の俳優としての力として濃ゆく出ていてめちゃくちゃ良かった。勿論太賀だけでなく、嫁さん役をしていた吉岡里帆も、太賀の母親余貴美子や兄の山中崇も、友人役寛一郎も、父親代わり的な人でもあったなまはげという行事や地域をまとめている柳葉敏郎も…。凄く良かったよ、俳優としての経験値や魅力やその役として生きている姿が惜し気もなく出てて、目が離せなかった。
私が知識と映像だけで知っている「なまはげ」というものも、何故最初はなまはげの映画なの?という疑問があったけど、秋田出身でもあり父親という存在が居なかった生活の経験者でもありクリエーターでもある佐藤監督の思いや家族・父親観などをパンフレットで読んでみて、凄く納得して興奮したし、映画が更に魅力的なものに思えた。そしてラストシーンも、太賀扮するたすくがなまはげを通して、家族と家族でいる事が難しかった主人公の純粋な色んな思いが爆発していて、マジで名シーン過ぎました。映画観た後に予告編を観ると泣けてしまうし、タイトルだけでも泣けてしまう。
この映画の魅力は語り尽くせないぐらいあって他にたくさんあるんだけど、とりあえず今の私から言えるのは太賀という俳優が本当に素晴らし過ぎて…
今年は色んな映画に出てて全て良い仕事してるけど、「生きちゃった」「泣く子はいねぇが」は両方とも主演でもあり同じ"家族"というテーマの映画でもあるので、自分が映画館持ってたら2020年・太賀傑作映画として二本立てにして上映したいよ笑。
公開待機中の、西川美和作品も今泉力哉作品も、よくぞこの監督作品に出てくれたよ最高!って感じで今からもう褒め称えたいです笑。
初日舞台挨拶も、ほんと太賀だった!最高だよ…好き。