劇場公開日 2020年11月20日

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「「決めたの。君じゃないって」「君ってやめてよ」」泣く子はいねぇが 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「決めたの。君じゃないって」「君ってやめてよ」

2020年11月25日
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鑑賞方法:映画館

最近、じれったいダメ男の役が多い仲野太賀。"ゆとりモンスター山岸"なんて忘れてしまう今日この頃。だけど、やっぱりこういう役、上手いなあ。視線の泳ぎ方とか、えへら笑いの口元とか、どうしようもない泣き顔とか。我が子見たさにお遊戯会にやってきて「あれ?どの子よ?」なんて、言葉がなくても伝わってくるもの、その情けなさが。
寛一郎も安定のバイプレイヤーぶり。脇が達者だと、主役の人物造形がはっきりするので観ていて安心できる。
ただ、ストーリーとしては、山場がはじめに来ただけで、だらだらっとしてた。思いのたけをぶつけたラストシーンで一気にクライマックスがやってくるのだけど、たすくの心情とシンクロできない人にはただの粘着質にしか見えないだろうなあと思った。そういう人から見れば、白クマ効果にはまっている状態(再婚する琴音と凪のことは考えないように、としているのに頭から離れない)のイタイ奴でしかない。でもね、泣く子はいねえかと上がり込んだ奴こそが泣きたくてしょうがいない奴で、そいつは、お面を被らないと我が子には会えないし、叫ぶことすらできない奴なのか、と思うと不憫なんだよなあ。

カメラに収めないとか台詞で語らないとか、なにげに巧妙な演出。
例えば、あることがあって病院のロビーで兄貴になじられる場面。倒れる現場を映せばおそらくたすくの弁護に廻ってしまうところ。それをたすくの視線だけに収めることで、観客側も真相を知ることができず、兄貴と同じ「なにやってんだよ」の気持ちになるのだ。
また、これも演出か?と気になることあり。車中のたすくと琴音を後部座席から捉えるカメラワークで、助手席側のシートカバーは綺麗にかけられているのに、運転席側のシートカバーがよれていた。もしこれが二人の気持ちの揺れ具合を表現しているのだとしたら、すごいなあと。

栗太郎