「愛しく哀しきクズ男の(再生は出来ない)物語」泣く子はいねぇが h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
愛しく哀しきクズ男の(再生は出来ない)物語
自分も含めて大半の男はクズである。
男は良い意味ではロマンチストだが、悪い意味ではいつも地に足がついていない。
永遠に大人になれない大人。
今度こそちゃんとするからと、何度も過ちを繰り返す。はたから見たら滑稽で喜劇だが、身内から見れば単なる悲劇でしかない。
主人公(たすく)をみて、「自分は彼とは全然違う」と胸を張って言える男はどれだけいるのだろうか。妻(ことね)の冷ややかな視線を前にすると、男はヘビに睨まれたカエルのようだ。
エンディングには多くの観客が引き込まれると思うが、個人的にはふたりが海を前に車の前席で会話するシーンが一番印象的。
後ろから撮るとドラマとして画になりにくいかもしれないけど、とても現実的なシーン。
演じる吉岡里帆の沈黙の間や顔を見ないで相手を突き放すところに彼女のすばらしい演技をみせてもらった(彼女は大根役者だという人は是非この作品をみてから感想を言って欲しい)。
また、義母せつ子との再会シーンでそれまで歩んできた生活の苦労や、これから歩み始める新しい生活への決意をひと言二言のセリフと顔の表情だけで表現している。
ナマハゲを作品の中心におくのも素晴らしいアイディアだし、男鹿の風景や東京とのコントラストの描き方に何度もうならされる。
佐藤快磨監督の作品は初めて観るが、とてつもない才能と今後の大活躍を感じさせてくれる。とてつもない完成度の高さ。これからの作品がますます楽しみ。
しかし幼少期にナマハゲに襲われたらトラウマになりそう…
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