「洒落た悪党達が丁々発止の駆け引きを繰り広げる粋にも程がある英国産ピカレスクコメディ」ジェントルメン よねさんの映画レビュー(感想・評価)
洒落た悪党達が丁々発止の駆け引きを繰り広げる粋にも程がある英国産ピカレスクコメディ
舞台はロンドン。米国の貧しい家庭に生まれながら奨学金を得てオックスフォード大学に進んだミッキーはそこで裕福な学生相手に大麻を売り捌く小遣い稼ぎでその商才を開花させ、そのままロンドンの裏世界に進出、狭い国土で誰の目にも触れることなく最高品質の大麻を大量生産するビジネスを成功させて莫大な財産を築いていた。地で血を洗う世界から身を引こうと考えたミッキーがアメリカ人の富豪マシューにその事業を丸ごと4億ポンドで譲りたいと持ちかけたことから、中国人マフィアやゴシップ雑誌の編集長他胡散臭い人間達の丁々発止の駆け引きが幕を開ける。
・・・これ、今のところ本年度ベストワンです。
マシュー・マコノヒー演じるミッキーの周辺を嗅ぎ回っているのがヒュー・グラント演じるニヤニヤと意味深な笑顔を浮かべる私立探偵フレッチャーが、チャーリー・ハナム演じるミッキーの右腕レイモンドに自身がかき集めた情報を2000万ポンドで売りつけるくだりから2人の腹の探り合いの会話の合間に時制が複雑に前後する虚実織り交ぜたピカレスクコメディ。冒頭から最後までオフビートなギャグとギリギリ抑制の効いたバイオレンスと下ネタがいかにも英国的な冷ややかな風刺とともに繰り出される。ストーリーに絡み付くようなサウンドトラックのチョイスも絶妙で、各キャラクターの服装コーデが皆個性的でカッコイイ。人間のクズのようなキャラクターにもちゃんと血を通わせるこのどこにも隙がない感じは同じ英国人であるマシュー・ヴォーン、エドガー・ライトの作家性とも親和性が高いもので、そこに映っているものは凄惨極まりないものなのに終幕では爽快感だけが残ります。
よくまあこれだけ揃えたなと唸るぐらいに個性が切り立った俳優が集結しているわけですが、個人的には実力はあるのにイマイチ脚光を浴びないチャーリー・ハナムが演じるミッキーの忠臣レイモンドのカッコよさに参りました。そして下衆な小物を演じさせたら右に出る者のいないコリン・ファレルが小物感を全身で表現しながら物語の要所要所で大活躍するので、本作は何気にコリン・ファレルのベスト作品でもあります。