「お洒落な暗黒界ムービー」ジェントルメン bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
お洒落な暗黒界ムービー
日本でこうしたドラック・ヤクザ映画となると、血しぶき上げて、湿っぽい路地裏での暗いイメージの作品となりがちだが、イギリスが舞台となると、マフィアそのものの描き方もお洒落。たくさんの人が殺されるバイオレンスシーンもあるのに、決して血生臭くなく、後味も悪くない。
その要因は、やはりストーリーの展開の面白さにある。一見すれば、『ジェントルメン』、しかし、その実態は、暗黒界に君臨するマフィアの面々。マリファナ界のドンであるミッキーが、500億にもなるその利権を譲渡することを聞きつけたマフィア達が、我が物にしようと企む駆け引き合戦。裏の裏、そしてまたその裏をかいての、ジェントルメンによる利権争奪戦が繰り広げられる。その駆け引きに、こちらもまんまと騙される。
そして、私立探偵・フレッチャーが語る、マリファナ王・ミッキーの実話を映画にしようとする、脚本とリンクして物語が展開していくため、ストーリーの二重構造としての面白さもある。但し、最初のフレッチャーの語りのテンポが速く、行きつ戻りつするストーリーや様々な登場人物によって、少し難解となっていたのは否めない。最終的には、すべて布石が回収されて、スッキリと観終えることはできるので、ご安心を。
演じている役者もマシュー・マコノヒーがドスの効いたマリファナ王・ミッキーを。ヒュー・グラントは珍しく、浮ついたゴキブリ野郎を熱演。そしてミッキーの頼りになる側近を『キングアーサー』のチャーリー・ハナムが演じ、他にもミッシェル・ドッカリー、ジェレミー・ストロング、コリン・ファレル等の名優たちが揃い、十分に楽しめるエンターテイメント作品として仕上がっている。
それほど、話題には上らなかった作品ではあったが、この緊急事態宣言で、次々と公開延期となる中で、洋画を公開してくれたことにまず感謝したい。