ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画のレビュー・感想・評価
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impossible は可能にするために存在する
評価につられて鑑賞したが、大正解。史実として成功したことがわかっているのにハラハラドキドキしてしまう演出。最後の最後まで絶体絶命のピンチが続く展開に肩の力が入る。映画『ハルマゲドン』的解決方法はご愛嬌としてもラストはインド国民と同じくらい感激してしまった。
火星探査機プロジェクトのメンツが面白い。彼女いない歴イコール年齢の気弱な童貞男、対称的に男は気晴らしくらいしか思っていないイケイケ女、定年間近のヨボヨボエンジニアなどなど。どこまで脚色したのかわからないけれども物語としては面白い。
不可能は可能にするために存在する。自分は技術者だからすごくわかる。予算がなければ知恵を絞り、制約があれば逆転の発想で回避する。答えが出なければ答えが出るまでやり抜き、最後は2倍働く。これなんだよね。胸がとても熱くなる作品でした。
インド映画らしさは好き嫌いが分かれそう
インド映画では珍しいチームもの
インドが火星探査を成功させるまでの国家プロジェクトを描いた物語。インド映画にしては珍しいチームもの。
人員や予算が十分でない中、自由な発想で様々なトラブルを乗り越えていく姿は感動的だった。まー、映画的な演出がすぎる部分もないわけではなかったが、インド映画ってそこらへんがルーズ(いい意味で)だから気にならない。あんな少人数でやるわけないでしょーとか、部屋の模様替えやってる場合かよ!とかのツッコミは心の中でしてしまったけど。
そしてインド映画に欠かせない歌とダンスだが、本作はやや抑えめ。ミュージカルテイストなダンスはほぼなかった。あー、こんな作り方もするのかと驚いたくらい。
それにしてもインド映画(日本で上映されるものに限るかもしれないが)のレベルは相変わらず高い。本作も楽しませてもらった。
すべてが明るく前向き
インドの火星探査機ミッションの実話ベースの話。ありえない安さと期間でやり遂げたって事実だけで、もうすでに面白い脚本になりそうなこの物語。
流石インド映画、メンバーのキャラクター、アイデア、突き抜ける程前向きな解決方法などなど、エンタメ要素を盛り込んで更に素晴らしく楽しい作品になっていた。
特にパワフルな女性メンバーの活躍は頼もしい、プロジェクトリーダーのタラ、深妙な旦那も巻き込み、やりたい事をやるのに後ろめたい気持ちにさせないでと楽しく踊りながらすり込むんだからすごい。イスラム信仰に傾きかける息子に語りかける姿も寛大だった。
さりげなく、しかも楽しく明るく宗教問題や男女平等問題を描き出す、またインド映画の株が上がった。
余談だが、A•R•ラフマーンって誰だったかすごく気になったが、カセットテープダイアリーズの音楽の人だった。インド人ならピンとくるシーンなんだろうな。
ミッション成功に心から拍手!
あまり予告編が流れてなかったので、インドの火星探査計画が描かれることぐらの予備知識しかない状態で鑑賞してきました。映画化されるのだから、当然ミッションは成功します。それがわかっていても、最後までドキドキしながらの鑑賞でした。130分という比較的長めの上映時間ながら、テンポよく描かれるので最後までダレることはありません。
ストーリーは、予算や技術的な課題を努力とアイデアで一つずつクリアしてミッションを推し進めていくという、オーソドックスなものです。うまくいくのはわかっていても、そこにどのような人間ドラマががあったのかを知ることができ、とてもおもしろかったです。
若い女性主体のチームながら成功へと導いたのは、リーダーのラケーシュの手腕によるところが大きいと思います。彼の前向きな考えかた、実現に向けた行動力は、見習うべきものがあります。女性リーダーのタラが、家庭生活との両立に奮闘しながら夢を追い求める姿も、とてもかっこよかったです。彼女がチームの士気を上げるために仕掛けた工夫は、今の自分と重なって泣けてきました。
自分も、夢を叶えて今の仕事に就いています。さすがに今の夢が「定時に帰ること」ではないですが、昔のような情熱が今もあるかと問われれば答えに窮します。タラの言葉を聞き、自分と同じ仕事を目ざす若者のために、今一度情熱をもって働きたいと素直に思えました。
ミッション成功には、確かに運も大きく味方していたように思います。しかし、その前に一人一人ができることを全てやり切ったという前提があります。この成功は、まさにミッションに携わった全ての人の功績でしょう。恥ずかしながらインドの火星探査計画を全く知らなかったので、本作を鑑賞して本当によかったです。
ちなみに、インド映画といえばダンスと思っていましたが、それは本作では薄め。どちらかというと、冒頭の打ち上げシーンからラストの宇宙シーンまで、迫力満点の映像が印象的でした。CG技術がすばらしく、目の肥えた人ならいざ知らず、自分にはハリウッド作品に遜色ないクオリティに感じました。加えて、キャストも美人ぞろい。インド映画侮れません!
宇宙に出てからが
日本で公開されるインド映画は基本的に良作ぞろい
日本で公開されるインド映画は基本的に良作ぞろいと思っています。
(たくさん作られるインド映画のなかで、日本で受けると思われる作品を公開するから)
仕事上のミスから閑職に飛ばされた開発責任者(男女)が、実現するとは誰も期待していなかった火星探査を達成したお話。
(ネタバレにならない範囲での流れ)
担当していた別の本命プロジェクトの失敗
火星探査計画担当への左遷(誰も期待してない 責任者 男女)
画期的な計画立案(責任者 女)
実現に向けて根回し(というか手練手管使った説得 責任者 男)
着手承認(でも、優秀と評価された人は配属されず)
開発途上でのトラブルとその解決(チーム)
打ち上げの際のトラブルとその解決(チーム)
火星に向けて飛行中のトラブルとその解決(チーム)
ミッションコンプリート!!
話としてはとても面白くテンポよく進むので映画作品として楽しいのですが、チョッと話を盛りすぎてる感じがところどころして、その点は逆にしらけてしまいました。
あと、チームメンバーの個人的な背景の描写は、現代インド社会の多様性を表しているんでしょうけど、作品としてはちょっと焦点がボケてしまったような・・・
(それでも、資金不足の中、工夫しながら計画を進め、幾多の困難にもめげす、夢を実現するお話は楽しいです。)
永遠にも思える8分に胸が熱くなる
電波の速さは光と同じなので秒速30万キロ、そして火星と地球の距離は近い時で約7000万キロ。
管制室で探査機との通信の回復を確認したのも、送られてきた火星の写真もおおよそ地球時間で4分前(後?)のことになるのですね。
ということは地球からの遠隔操作も必要なタイミングの4分前に判断、指示をしなければならないし、その探索機への指示の結果を確認できるのが、往復で8分後。
話が脱線しますが、光速とは比べものにならないほど遅い宇宙船の助けを何百日も一人で待っていた『オデッセイ』火星の人のマット・デーモンの心細さといったら、一体どれほどのものか。そんなことまで思い出して、胸が熱くなりました。
準備期間も、探査船や探査機の目的地への到達時間も、その結果を知るのもすべて数年或いは数十年単位。
例えば、30代や40代で参加したプロジェクトの結果を知る頃に現役でいられる保証もないことだってあるわけです。
それでも知りたくて堪らない。
そんな知的好奇心に溢れた人たちと、そこに時間と予算を割くことのできる長期的な視野と財政戦略を持った国家という背景が無いと成り立たない物語。
間違っても、新型コロナの感染拡大防止に短期的には成功しているどこかの強権的な国家を見習って、密かに統制を強めるような法整備(顔認証の監視カメラがあちらこちらにできるようなこと)が進んだり、政府に従順な国民を作るような教育制度作りが進められないことを切に祈っています。
安心のインド映画
さすがのインド映画!
理想のボス‼︎
インドの宇宙機構で、衛星打上げに失敗したリーダーが左遷されるのですが、そこは半社会主義国インドの公務員。クビにできないことを逆手に取り、月より170倍も離れた火星を探査するという大胆な計画を立てます。
しかし左遷されたチームリーダーには、予算もわずかしか与えられません。
人員に至っては、各部署から余剰人員だけを押し込まれ、その結果できあがったチームは、若い女性科学者ばかりが多く集まってしまいます。
ほとんどの科学者のモチベーションは低く、しかもリーダーの目標が大風呂敷すぎることもあり、どうせ成功するわけがない病に冒されています。
時間も圧倒的に足りないし、資金も人材も能力も足りない。
しかもロシアが成功までに4回失敗し、アメリカが8回失敗した火星探査を、たった2年でゼロから一発で成功させられるはずがないでしょうというのは、知性のある科学者たちなら誰でも見えてしまうことだったからです。
そういう科学者たちの気持ちを、どのように意識を改革し、一本にまとめ、モチベーションを上げ、奮闘させるのか、そこには優れたリーダーのお手本のような言動があり、コーチングの技術があり、私はほんとうに感心させられました。
こうしてみんなが独創的なアイディアを次々にひねり出すようになって、いろんな制約条件を次々に突破し、ついには不可能を成功させてしまうのです。
西インドではタクシーで1km行くのに10ルピー(約25円)で行けるが、我々インド人は、1kmあたり、たった7ルピーで火星まで到達したのだ、と首相が自慢するほどの、つまりは予算不足の中での奮闘。これは大きな見どころです。
プロジェクト・リーダーの片腕役を務める主人公を演じるビディヤ・バランは42歳。
ロケット科学者で、夫と子供を抱えて奮闘する姿が描かれています。
今のインドの中産階級の生活をかいま見ることができ、家族とのサイドストーリーもよく練られていて、話を盛り上げてくれていました。
ほんとうに美しい女優さんで、しかし、かなり太っちょです。
インドでは、女性は太っているほうが評価されるという話を聞いたことがありましたが、こういう人のことを言うのだなと勉強になりました。
たしかに太っちょだけど、魅力的です。
ほかにも、この映画では、科学者の一人一人の背景をきちんと説明し、それぞれを魅力ある人間たちとして描き分け、ドラマ化しており、この映画をおおいに魅力的にしてくれていたと思います。
エンドロールに実際の科学者たちのポートレートも出てきますが、たしかに現実のチームも若い女性科学者ばかりが多いようでした。
映画と現実との違いは一点だけ。
映画には絶世の美人女優たちがズラリと揃っているのですが、実際の科学者たちのポートレートを見る限り、うーむ、たしかにこれが平均的インドの女性なんでしょうねという感じ。
たいへんに面白いお話でしたし、ハリウッドなら宇宙映画1本すら撮れない、そんなわずかな予算しか使わずに、発展途上国が実際に火星探査に成功してしまったというのは、たしかに映画化すべき快挙だと思うのですね。
こういう良い作品を観てしまうと、科学に情熱を感じず、尊敬の念のない日本の映画人が撮った科学映画に、感動が薄い理由も見えてきます。
日本で何本も作られた「はやぶさ映画」では、科学者たちは揃いも揃って十把一絡げで、からきし愛情のない描き方をされ、映画制作者から脇役扱いで脇の方に放置されていたのと正反対。
この映画が成功したのは、科学者だって一人一人が人間であり、愛情と尊敬の対象であり、だからこそ、そこにドラマがあるのだと本腰を据えて描いたお蔭かも知れません。
日本の映画制作者は、からきし科学を知らないくせに、「観客みたいなもの、適当にここをチョチョイと押せば自動的に感動するんだぜ、知ってるかいウヒヒヒ」みたいな甘い下心で映画を量産していることを、観客の側は敏感に察知していると思います。
映画制作者は、もう少し映画の対象に対して敬意を払って欲しいものです。
もちろん観客に対しても。
観客だって馬鹿ではないのですから。
早くも今年の実話ベースものでは(個人の)トップ3入りしそうかな…?
今年7本目(合計74本目) ※「銀弾 the final」と、たまたま「天体がどうの何の」と出た方がおっしゃっていたので気になってセーラームーンの新作も見てきたのですが、そのレビューはさすがに要らないかと思います(必要であれば書きますが…)。
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※ そういえば、火星には「2つ」の衛星がありました。フォボスとダイモスです(いずれも半径20kmほど)。この映画では火星の衛星の話は出ませんが、そのあとにセーラームーンを見ると、あ、元ネタあれだったのね、ってわかります(セーラームーンの中で、セーラーマーズの女の子が、お寺で飼っているカラスの名前)。
ちなみにこちらの新作セーラームーンも、地味にマニアックなところで天体ネタが出てきたりします(普通に見る範囲だと気が付かない)。
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さて、こちらの映画。内容は実話に基づくものです。多少は設定などは変えてあるようですが、大筋において実話であること、またアジアで初めて火星に探査機を飛ばしたというのも事実です(日本は先に試みるも失敗しています)。
インドといえば今ではIT大国として知られ、先進国とは言わないにせよ発展途上国でもなく、その中間的位置にある程度の国であり、また科学水準も高いことで知られます。一方、貧富の差も激しいものがあり、また宗教の違いからくる民族紛争なども絶えません。特に貧富の差からくる「国家予算の配分」は大切な問題であり、極論「どうでもいい事案」である火星探索というものに大金を突っ込むことはできません。
そうすると、開発者はいかにして安く開発するか?という考え方になってしまいます。しかし、火星探査機は2年2か月に1回しか原則飛ばせません(いわゆる、火星大接近にあたるときが条件的にベストになり、かつ、2年2か月の火星大接近もその近づく差にはかなりの違いがあり、今回飛ばした条件は極めて有利な条件でした)。
そこで色々なアイデアが出てくるのです。一見するといらないであろうゴミを使ってみたり、「家庭の主婦のアイデア」がそのまま火星探査機の開発に生かされる、そんな国なのです。換言すれば、アイデアさえうまく成立していけば成り立つのであり、それは日本でも同じであろうと思われます(性能などがほぼ同等で、明らかに安く済むのなら、それを採用したほうが良いのは明らか。もちろん、特許の問題は別途考慮する必要はある)。
どちらかというとドキュメンタリー映画という分野で、ストーリーというストーリーはほとんど存在しないと言えます。かつ、「結果がわかっている」映画なので、どう見せるか?がポイントになります。そしてこのようなサイエンス系映画は、内容がマニアックすぎて理解できない(TENETなど)場合や、逆に「サイエンス系映画と思わせて中身がトンデモ科学」だったりと色々なものがありますが、この作品は非常に丁寧です。かつ、字幕も工夫されており、文系の方でもすっと入っていけるように理系特有の語(内容的に、天文学よりも物理的な話も出ます)は意味を変えない程度に使用をうまく工夫しており、「何がなんだかわからない」状態にはなっていません。
太陽系には地球以外に生命が住んでいる場所があるかどうかは未解決です。そして、その真っ先の候補が火星です(ほか、月やエンケラドゥス(土星の第2衛星)、タイタン(同6)などがあります)。しかし、それは「太古にいたであろう」生命も含まれます。「今いない生命」を論じても「あまり」意味はありません。むしろ、今後地球の開発がどんどん進むにしたがって「住む場所」がなくなり、地球以外の生活可能な場所を探していく流れになることは当然理解できます。その際たる候補が火星であり、ついで言えば月でしょう(地球との行き来を考えれば、事実上この2つ。ほかには巨大人工衛星も考えられます)。その「未来に必ず役に立つ」研究である「地球以外に住める場所の先行調査」としての火星探査が今日、また未来に与える影響は非常に大きいものがあり、その意味でインドの成し遂げたことは大きな意味があります。なぜなら、「インドと同じ程度の科学水準の国でもがんばればインドのこの例と同じように観測機を打ち上げて成功させる」という先例を作ったから、にほかなりません。
この映画がもとに、宇宙天文に興味を持つ方が増えるといいな…と思っています(私個人は、個人的に天体望遠鏡を数体持っていて、天体によって使い分けて観測したりする程度です。もっとも大阪市なのでどう頑張ってもあまり見えませんが…)。
さて、採点に入りましょう。下記の減点0.2で4.8を5.0に切り上げています。
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(減点0.1) インド映画の特徴なのでしょうか、最初に「アルコールの飲みすぎは体に悪影響があります」という趣旨の英文が流れます(ただし、映画内でアルコールをたしなむ程度の描写はあるものの、中毒になるほど飲むような人は出てこない)。おそらく、日本で「盗撮禁止の趣旨の警告画像(例のカメラ男の人が出るアレですね)」が必ず出るのと同じ趣旨なのだろうと思います(映画に、アルコールはほとんど出てこない)。
ところが、そのあとに英語以外の言語で大量に何か表示され(英語ではない。何語か不明。しかも、背景真っ黒に白い文字で大量に表示され、何か重要らしいところに線が引いてある、ある意味「怖い」文章)、そのあと始まるのですが、その部分の翻訳がありません。
一方でエンディングのスタッフロールを見ても、スタッフさんの名前は出ますが、必ず表示される「無断コピーなどは刑事罰や民事罰の対象になります」の趣旨の英語は出てこず(スタッフロールは英語です)、どうもそれが先頭のそれ(全然わからないその謎の大量の文章)に移動しているようなのですが、その部分は翻訳されていません。
もっとも、「盗撮しちゃダメ」とか「(危ないから)個人でロケットを開発しちゃダメ」とかというのは「当たり前」の話なので翻訳しなかった可能性もありますが、あまりに大量に表示されるので(おそらく、1つや2つの内容ではない)、一体何なのか気になります。
(減点0.1) ストーリーは、現地の言語(インドが舞台という事情から、方言が多いこともあり、何語かよくわからない)と英語の2つが話されています。
その中で、明らかに誤訳と思われる点があります。
「そんなことが今のインドにできる確率は0.1%以下だ」(だから、プロジェクトは採択しない、と最初に断られるシーン)の「0.1%以下」の「以下」で使われている表現は less than です。しかし、 less thanは「未満」であって「以下」ではありません(more than は「その値を含まずその値より大きい」。「以上」とは違う)。
もっとも、内容的に意味内容が理解できれば良い話であり、0.1%以下でも未満でも本質論ではないのですが、科学映画であるからこそ、このような「科学的に正しくない翻訳」は視聴者が誤った知識で理解しかねかねず、危ないなぁ、と思いました(ただ、この点はうっかりミスが多い点であり、かつ理解を妨げるほどの誤りともいえないので、0.1点どまり)。
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インドは宇宙開発も素晴らしい
夢が仕事に変わってしまった者たちのセカンド・ドリーム!!
インドも女性の活躍の場が増えてきているとはいっても、まだまだ女性差別が残るインド。一時期の「007」シリーズにおいてのボンドガールのような役割の多い映画も少なくない。女性差別や女性に対しての古い考え方が残る男性問題などの観点から描いた暗い内容での女性主人公映画というものはあったものの、ここまで女性主体の目線でガーリーエッセンスの多いサクセス・ストーリーというのは、なかなか珍しい。
インドにあるディズニー傘下のフォックス・スター・スタジオ作品ということもあって、海外マーケットも視野に入れていることで、あえて厳しい現実というのは、シュガーコーティングされているのかもしれないが、サクセス・ストーリーという点では、抑えるところは抑えていて、サクセス・ストーリーとしては高いクオリティの作品である。正に娯楽作品である。
実話ベースとはいっても、ある程度はエンターテイメント・コーティングされてはいて、弱小チームが逆転するというベタな構造にはなっているものの、インド映画業界で注目株であり、演技力も定評のあるキールティ・クルハーリーやタープスィー・パンヌーなどの若手女優を集めていて、それぞれのキャラクターが抱えているバックボーンや考え方に特徴をもたせることで、最終的にそれぞれの役割が活きてくるというのは、やはり楽しいものがある。
セカンド・ドリームという観点も素晴らしかった。宇宙開発に携わるという夢を勝ち取って、更にその中でも女性であるというハードルを越えてきたが、それが当たり前となってしまった日常では、「夢」はいつしか「仕事」になってしまった。
宇宙開発事業なんて、なんとなく就職したいと思って入れるような簡単な職業ではないだけに、重役になっている人達も、かつては夢を追い求めていたということに違いはないが、大きくなることで夢が仕事に代わり、企業として世間体や安定を求めるようになってしまった。もともとは無謀なことだったかもしれないのに、その初心を忘れてしまう。
それを思い出させ、あらゆる世代を奮い立たせ、そしてみんなの心がひとつになり、敵対していた者までもがその結果を見守り、気づけば観ている側も感情移入しないではいられない。このベタではありながら、カタルシスの頂点のような構造は、娯楽映画として見事としか言い様がない。
更にインドという特徴を活かしながら、世界に通用するグローバル的観点をもったバランスの作品を作れる様になってきたということにも注目しないではいられない。
インドにおいて映画を観るということは、一大イベントであったという、少し前のニーズではなくなってきているのだろう。まだまだインターネット普及率40%ほどと、低いとはいわれていても、貧富の差がかなりあるし、人口そのものが多いインドとしては、一般的家庭は勿論、少し貧しい郊外を舞台とした『ガリー・ボーイ』の中でも貧しいとは言われながらもスマートフォンやiPadが普及しているような状態である。
そんな中で動画配信サービスがあふれ、Netflixでは多くのインド映画を世界に発信し、また他国の映画を簡単に観られる環境になった現在では、グローバル的観点から、国境は関係なく、誰が観ても高いクオリティが求められる時代になってきたということだ。
そうやって目の肥えてきた国民にとって、やり過ぎアクション、とんでも展開、やたら入るミュージカル・シーンを時間いっぱいに詰め込んでお金をかけておけば、とりあえず楽しんでくれるであろうという、インド娯楽映画業界の安易なマーケティングも効かなくなってきたことで、質より量のボリウッド的思考は通用しなくなってきたのだ。
『ランボー』や『フォレスト・ガンプ』『アジョシ』『ナイト&デイ』などハリウッドの名作やアジアノワールをこぞってリメイクしようというのも、インド映画業界が本気で映画という産業がアトラクション的観点だったものを芸術作品にしなければ客がつかないことがわかってきて、まずは他国の真似から入る。これは、一時期やたら日本のホラーをリメイクしまくっていたアメリカや日本の映画やドラマを片っ端からリイメクし続けた韓国、海外ドラマのリメイクやオマージュを続けてきた日本…といったように各国が当然のようにしていることで、その中で自国のスタイルに変換しジャンルを形成していくという、一種の映画、ドラマ産業の流れである。
日本もインド映画なんて「どうせミュージカルなんでしょ」なんて思って甘くみていたら、あっと言う間に置いていかれてしまうだろう。LGBTQを扱うよりなフリをした腐女子ターゲットのBL映画や、ただの日常を描いたドラマの延長線上的少女漫画映画を量産している場合ではないのだ。
km7ルピー
インド宇宙研究機関=ISROが、アジア初の火星探査計画を成し遂げた実話を基にした話。
2010年、有人宇宙飛行計画のロケット打ち上げ試験で失敗し、火星探査チームに回されたチームリーダーと推進系担当学者が、無理だと言われる計画をアイデア勝負で正式プロジェクトに押し上げ、人も予算も時間もないし制約だらけな中で奮闘するストーリー。
壁にぶつかり乗り越えてというプロセスをみせていく展開は、その程度のアイデア?と思ったりもするけど、それを思いつく発想は素晴らしいし、それを具体化するのはさらに凄いこと。
それに意外なことがヒントになっていたりして面白く、へ~の連続。
ただ、試行錯誤している様子があまりみられず、結構あっさりと乗り越えちゃう感じがして勿体ない。
女性主人公の家族を中心に、家庭でのトラブルも結構丁寧、且つ、キャッチーに描かれていてなかなか面白いし、マサラムービーお約束のダンスもちょっとあるけれど、長ったらしくなくて寧ろ上手く時短に使っているし…まあ、どちらもいらないっちゃあいらないけれどねw
どこまで事実に基くのかは知らないけれど、堅苦しくないしテンポも良いし、結末はわかっているのにちゃんと愉しめて、最後はなんだか感嘆させられた。
リサイクルと節約は大事
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