劇場公開日 2020年11月6日

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「楽しげなイーサン・ホーク。それだけで無性に嬉しい。」ストックホルム・ケース 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5楽しげなイーサン・ホーク。それだけで無性に嬉しい。

2020年11月23日
PCから投稿

ストックホルム症候群といえば、パッと思いつくものだとダニー・ボイルの『普通じゃない』を始め、様々な作品で取り上げられてきた題材だ。その原点となった事件を描く、とはいえ、本作に漂う空気感はどこか緊張と弛緩の間を行く独特のもの。理由はやはり俳優にあるのだろう。イーサン・ホークが楽しげにその役柄のエンジンを吹かせるだけで、見ているこちらも自ずと楽しげな気分に包まれる。これは固い絆で結ばれたホークと監督が、前作「ブルーに生まれついて」に続いて奏でるセッションのような映画と言えるかも。犯人コンビの場当たり的な犯行に似て、この映画も緻密に構成されているというよりは、むしろ個々の登場人物の魅力を引き出しながら、自由な雰囲気で織り成されているように思える。その意味では肩肘はらずに身を委ねるのが良いだろう。傑作とは言い難くとも、夜寝る前に思い出し「なんだか楽しかったな」と笑みがこみ上げるタイプの映画である。

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牛津厚信