劇場公開日 2020年3月20日

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「俺たちの敵は、「曖昧で猥雑な日本国」」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 七星 亜李さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0俺たちの敵は、「曖昧で猥雑な日本国」

2020年8月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

正直、なぜ、三島由紀夫が割腹自殺をしたのか、ただの右翼の小説家なのか、名前は知っていても彼のことを全く知らず、興味本位で観に行った。
初めて動く三島を見て、思っていたよりもずっとリベラルで、純粋で、正直な人だと感じた。
彼が1000人の東大全共闘の学生の前で「言葉でしか世の中は変えられない。僕は「言霊」を信じている」と言ったことには、右とか左とかを超えて、人としてお互いをリスペクトする潔さを感じた。
正直、いつ生まれたのかによって、感じることは違うんだと思う。
三島のように1920年代〜30年代に生まれた世代は、戦中に自分の周りの友達や同級生が戦死したことを経験し、生き残った自分に対する思いを抱えて生きていると思う。
全共闘世代の学生は、1950年ごろに生まれた世代で、戦後の日本が、アメリカに振り回されていく恐怖をリアルに言葉に出して戦っていこうとした世代だと思う。
そして、1960年以降に生まれた私を含めるほとんどの人は、過去に起きた戦争で実は何が起きていたのかを知らずにそのまま暮らしているように思う。
今の若い世代の人に この時代に起きていたことが実際に日本で起きていたことと受け止められるだろうか?
ある意味、私は今の日本はものすごく平和だと思う。それは、このような過去に起こったことを全て、自分が知ろうと思えば情報を得ることが出来るからだ。
三島が東大全共闘に言った言葉、「俺たちは、いつでも共闘できる。俺たちの敵は、曖昧で猥雑な日本国だ。」と言ったところに深く共感する。
その曖昧さや猥雑さは、50年経った今でも変わらないのではないかと感じる。

七星 亜李