劇場公開日 2020年3月20日

  • 予告編を見る

「互いの相互理解が暴いた共通点」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 S Zさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0互いの相互理解が暴いた共通点

2020年3月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

私は20代の若人ですが、大学受験の際通っていた学習塾の先生が三島のことをよく話していたのと、自衛隊駐屯地での自決の際に叫んだ言葉をYoutubeで拝見し興味を持ったので映画を鑑賞しました。

まずこの全共闘時代が一種の流行りだった、ただの観念論のお遊びだったという見方があるように見受けられます。しかし何にしろこの会話ができるだけの共通前提の知識や考えの深さを熱量を持って今の時代に再現できるかと考えると、残念で仕方がありません。芥氏が「言葉が人間を媒介する(し得る?)最後の時代だったとは思う」と仰いましたが、SNSの登場でそれを手軽にする手段の面では便利になったにも関わらず、この言葉が出てくるのを聞くと悲しくなります。(一方個人の趣向は多様化し共同体は島宇宙化しているので当然の帰結かもしれませんが。)

本編については、三島は短刀を携え本人曰く相当な気概を持って壇上に上がったようですが、その事実と最後に拍手で三島を見送るシーンの対比がとても面白かったです。

劇中でもメディアでもこの討論は左翼対右翼という対比構造で語られます。しかしここからは私の勝手な推察ですが、両者根底にあったものは空っぽの日本という国に対する憤り、もしくは「不安」だったのではないでしょうか。それを表現するための手段が違っただけで。これは戦前の天皇主義から民主主義への人々の変わり身の早さを見て、日本を支えていた~ismの空虚さを感じたからこその様に思えます。

暗い世相の今、安易な国粋主義的考えや海外至上主義的考えに走るのではなく、その解を求めた時代の記録を見るべきだと思います。よって星5つにしました。

S Z