「朝鮮戦争における仁川上陸の捨て駒にされた学生兵による「長沙上陸作戦」に光をあてた」長沙里9.15 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
朝鮮戦争における仁川上陸の捨て駒にされた学生兵による「長沙上陸作戦」に光をあてた
クァク・キョンテク監督/ キム・テフン監督による2019年製作の韓国映画。
原題:The Battle of Jangsari、配給:クロックワークス。
朝鮮戦争中、仁川上陸作戦の陽動作戦として、学生兵中心に敢行された「長沙上陸作戦」を描く。事実に基づいた映画と、テロップが出る。
船に乗っただけで、吐きまくる学生達、海岸に近づいたらいきなり猛烈な射撃を受け、学生兵は次々と命を落とす。戦場とのギャップ感が凄まじく、上陸のシーンだけで、相当な迫力であった。
主人公チェ・ミンホは元々は北朝鮮出身で、可愛がっていた従兄弟に戦場で敵同士として出会うが仲間のキム・ソンチョルが射殺。兄に代わって潜り込んだ妹イ・ホジュン、彼女を守ろうとする大食漢のチャン・ジゴン。対立するミンホとソンチョル。あまりベタネタしないエピソードが結構上手く、良い脚本だ。
米国の救助船も来てくれた、しかしその時北朝鮮軍は戦車付きで攻撃を仕掛けてきて、ミンホもソンチョルも、船に向かう他の学生兵と離れ、浜に残り闘うことを選択。当然ながら撃ち殺されてしまう。海伝いに船側にたどり着いたジゴンとホジュン、しかしホジュンは力付き海の中へ。英雄感を抑えた演出に好感を覚えた。
サイドストーリーとして、学生兵救援に向かう船に米国女性記者ミーガン・フォックスが乗り込んでいた(女性記者の取材も事実らしい)。彼女の口を借りて、この作戦の非情さ(陽動作戦で、言わば前途ある優秀な学生を捨て駒に使った)を、語らせていたのも、秀逸に感じた。
少々悔しくもあるが、親子の愛や夫婦/恋人愛をベタベタと描く日本の戦争映画の作りより、韓国の戦争映画の方がずっと良いなと感じてしまった。
製作チョン・テウォン、脚本イ・マニ(オペレーション・クロマイト等)、撮影キム・ソンファン、音楽モク・ヨンジン
キム・ミョンミン、チェ・ミンホ、キム・ソンチョル、キム・イングォン、ジョージ・イーズー、ミーガン・フォックス、チャン・ジゴン、 イ・ホジョン。