劇場公開日 2020年10月9日

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「価値観の見直しを迫られる」82年生まれ、キム・ジヨン グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5価値観の見直しを迫られる

2020年11月8日
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鑑賞方法:映画館

社会的メッセージ性の強いテーマに囲まれて、精神的に追い詰められた女性の再生の物語。

とてもいい脚本でした。
世代間ギャップや多くの男性側に刷り込まれた偏りのある女性像などの問題をあぶり出しながらも、そのテーマ性の告発や怒りに収斂させて共感を得ようという安易さは感じられませんでした。あくまでも、精神的に追い込まれたひとりの女性の立ち直りの物語を主眼として描き、明るい未来に希望を抱かせる作品作りに成功しています。鑑賞後の爽やかな安堵感はきっとそのおかげなのだと思います。

差別とかハラスメントなどをテーマにした映画や文学作品はたくさんありますが、こういう問題があることを、まずは知って欲しい人、向き合って欲しい人ほど、この手の作品に興味がないし、自発的な動機で観に行く機会はほとんどないという困った現実があります。
更に厄介なのは、今は旧弊にしか見えない考え方や慣習の中で育ってきた人にとっては、それを否定することは、自分の価値観そのものを否定するように思えることもあるということ、そして旧弊が廃れることに抵抗を覚える人もいることです。例えば、デヒュンの母親にとって、仕事に生き甲斐を感じる女性の存在は、自分の息子にとっては受け入れたくない変化です。
『まったく今時の若い嫁ときたら❗️』

たぶん、ここでレビューを書いていらっしゃるような方々の多くは、この映画で感じるまでもなく、女性に対しての自分の言動を振り返って反省したり後悔することを多かれ少なかれ経験されたと思いますし(私も数え切れないほど心当たりがあるし、いつでも現在進行形で気をつけなければいけないことだと自覚しています。それでも反省しなければいけないことだらけです)、日頃から、他人を無闇に傷つけないような心持ちで過ごされているはずです。

世の中の仕組みや世代的に刷り込まれた価値観は簡単には変わらないけれども、意識的に時代の変化を受け入れ、自分の周囲の若い世代の人たちへの応援の気持ちや優しい眼差しを持っている人は一定数います。一方でそういう考え方の変化にあまり縁のない人も一定数います。

そうであるならば、社会に求められるのは、生きていくうえで大事なことは自分がどんな状況にあろうとも、自己の判断と責任で選択をすること。それができる人を育てること。
そして、その人たちの選択を周囲の誰もが一旦は肯定し、受け入れることができる懐の深い社会を作ること。

よくよく考えると、今の大人たちの大半は、いい学校、いい会社、安定した会社、いい家庭……そんな漠然とした価値観に沿って歩むことが良きこととされてきた時代に育ってきたわけで、人生の岐路に自分の責任で何か大事なことを選択する、という経験や訓練は受けてません。
そんな男どもに、子育てか、キャリアか、どちらもとるか、そんな大変な選択について、アドバイスなどできるはずがないと思います。

私自身がそうですが、多くの男性は女性が生きづらい世の中についての責任を文化的慣習や法的制度的な問題のせいにして、自分が出来ることについての考察はついつい後回しにしてるということがあるのではないでしょうか。

自分は何ができるか。
とても深く考えさせられる映画です。

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2020年11月19日

Marikoさん、コメントありがとうございます。
コロナ禍の影響で児童虐待も増えているようですが、そのうち母親の孤立化(夫のDVから逃避できないことも含めて)に起因するものも相当あるように報道されてます。何とか子育ての現場に近いところで少しでも力になれないか色々と勉強しながら模索中です。

グレシャムの法則
Marikoさんのコメント
2020年11月19日

とてもわかりやすいレヴューに、共感しきりです。

生きづらさ… 主人公が窒息するんじゃないかと思うほど、つらそうで胸がチクチクしました。
私も幼い娘を密室育児しているとき、似たような気持ちになったのでよくわかりました。

私も歳をとったら、若い人に優しい眼差しを向けられるおばあちゃんになりたいって思いました。

Mariko
かいりさんのコメント
2020年11月9日

『私の頭の中の消しゴム』は、観賞した知人は見たあと一週間引きずった、落ち込んだという方もいれば、私は心が満たされた感覚だったので、おすすめしたいのですがもしかしたら落ち込む可能性も、、、。でもそれ以上に二人がただただ純粋に愛で結ばれている姿が素敵なのでおすすめです。

かいり
かいりさんのコメント
2020年11月9日

いつもありがとうございます😺
私もこの映画観たいです!例の韓国人お姉さんと見に行こうかと言ってるのですがなかなか、スケジュールあわず、、、チョン・ユミさんは『ロマンスが必要2』というドラマで好きになったのですが、韓国版SATCとも言われていたドラマは本家よりも日本人の恋愛感覚に近いなぁ、チョン・ユミさんかわいすぎるなぁと、学生時代ドハマリしました。すごく自然でかわいい方ですよね。きれいなのに、頑張って生きる等身大の女性の役が似合います。

かいり
talismanさんのコメント
2020年11月8日

上の文章、変ですみません。

言いたいこと:
性がどうかと本当に関係ないんだから!と思います。もうかなり昔からの私の叫びです。

talisman
talismanさんのコメント
2020年11月8日

グレシャムさん、書く場所間違えました。すみません。そうなんです。あのさ、もうその人の性がどうかとか本当に関係ないんだから!と思います。もうかなり昔ながらのからの私の叫びです。

talisman
talismanさんのコメント
2020年11月8日

こういう映画で男性がコメントしてるのは悪くないです。でも的外れが多い。それがつらいというか、それが社会かと、思う。

talisman
NOBUさんのコメント
2020年11月8日

今晩は
 ”自分が出来ることについての考察はついつい後回しにしてるということがあるのではないでしょうか・・”
 私は、出来得る限り、(当方の家人を含めて)考え、行動している積りですが、今作からは、
 ”本当にお前は常日頃からキチンとした言動、行動をしているのか!”
 と問われた気がしました。
 私の左前と後方に座っておられた女性の啜り泣きが、その思いを強くさせた作品でもありました・・。(今でも、覚えています・・。)
 では、又。

NOBU