「優しく見えて無理解な夫の言葉が最大のダメージ」82年生まれ、キム・ジヨン HOSHIZAKIさんの映画レビュー(感想・評価)
優しく見えて無理解な夫の言葉が最大のダメージ
社会から突き放されるような出来事は日常の中でたくさんあるけれど、一番身近な人間が自分を解ってくれていたらどうにか救われるものを。。。「君のためだろ?」というパートナーのセリフに、突き落とされるような絶望を感じた。
私はやっぱり原作のほうが好きだけれど、映画を観ることで観客の人たちの反応が手に取るようにわかるのが面白くて、映画もアリだなとおもった。場面場面で、観客のあちこちからすすり泣きが聞こえてくるのだが、それぞれ違う場面で泣いていたり、同じところで泣いていたり。私の後ろにいた女性三人組(子育てしてるっぽい30代くらい)が終わったあとに「よかったよね」「わかるー。ぜんぶわかる」と言っていて、独身のわたしもその輪に入っていって一緒にしゃべりたい衝動にかられた。
この映画は、ストーリー自体は絶望感のほうが強いのに、上映後に観た人と話をすることによってはじめて「わたしはひとりではない」と言える作品なのだ。
余談だが、自分は78年生まれだが周りの女友達が結婚生活をスタートさせたころ「ゴミ出しはしてくれるの」「日曜に掃除機をしてくれる」と嬉しそうに言っていたのを思い出す。女にも責任あるよね。週二のゴミ出しや週一の掃除機程度しかやらない(できない)夫をとても協力的だと勘違いして、高熱で寝込んでいるときでさえ「ごはんまだ?」と言ってくる夫や子どもに献身的に尽くすことをよしとしてきたんだから。
それでも自分は、キムジヨンがこれだけ話題作になったことを嬉しくおもう。自分にとっても「わたしの物語だ」と思える作品だ。たくさんの人に映画も原作も観て読んでほしい、そして話したい。