「他所ごとではない、無視できない映画」82年生まれ、キム・ジヨン kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
他所ごとではない、無視できない映画
子供が小さいからか、主人公の女性は30歳くらいに見えたので82年生まれだとすると舞台は数年前なのか…と、思ったら主演のチョン・ユミは83年生まれだった。
未成熟な社会にはびこる偏見と因習が、若い女性を追い込んでしまう話。「憑依」という極端な症状で表現していたり、多少アナクロ過ぎる面はあるかもしれないが、これは決してファンタジーではなく、無視できない映画だ。
子育て中の母親が生きづらい世の中は、良い未来が期待できない。子供を持つと窮屈になることが分かっているので、若い人が子供をつくりたがらない。この映画を観て逆にそんな若者が増えやしないか心配になった。
韓国は儒教が根強い国なので日本とは違うのかと思っていたが、この映画で描かれる韓国の社会は日本と変わらなかった。
現代社会における男女不平等を描くとともに、子供を持つ女性と持たない女性との間に明らかな線引きを社会がしていることも示している。
それを象徴する存在として、主人公の元勤務先であからさまな女性蔑視をする男性上司と、子連れの母親に心ない言葉を浴びせる若い社会人男女が登場する。
彼らは他人のことを慮ることができない人たちだから、誰かが現行犯で注意してやらねばハラスメントだと気づかない。
我々は、こういう無自覚な加害者側と、虐げられる側の両方の人たちと共存していることを知らなければならない。一方を窘め一方を庇護するのは、常識人の義務なのかもしれない。
韓国映画だからといって、これは他人事ではない。女性蔑視発言を堂々とする議員が国会に立ち続けられる国に、我々は暮らしている。
親族である義母と実父はもっと厄介だ。彼らに悪意はないのだから根が深い。
義母は嫁に一応気を遣っている。だが、軽い気遣いは嫁にとっては反ってプレッシャーになるという辛い宿命があった。
実の子と嫁を比べれば、実の子を優先してしまうのは人の習いだろう。
実父は男尊女卑的な思想の持ち主で、娘のことが大事だからこそ「女とは」を押しつけてきた。娘を傷つけていたことを知ったときのショックは如何ばかりか。
二人とも、自分達の常識に基づいて振る舞ってきたのだ。
味方もいる。だが、それが助けにならなかったことも悲劇だ。
夫は愛情深く妻を気遣っているが、一番近くにいて思いがズレている。同じ夫の立場としては、埋めがたい溝なんだと思うのだが、なんとかできないものか。
実母は実父に対して強く意見してくれたが、遅すぎた。
職場の元上司の基で再び働くことが彼女の最後の活路だったかもしれないが、それを阻んだのは社会福祉の不備と義母を操る因習だった。
主人公に覆い被さる周囲からの様々な圧力は誇張ではなく、多くの女性が少なからず体験していることの象徴だと思う。
主人公の元職場で、子持ちでも仕事に邁進している女性上司について「夫が偉い」と同僚の男性が言い、女性社員が顔をしかめる場面がある。
このぐらいのことは自分でも言ってしまいそうだから怖い。
完全男女平等というのは人類の永遠の宿題なのかもしれない。
自戒をこめて。
男性も妊娠、出産、授乳できるといいのに。不思議で嬉しくて不安で面白くてとーっても痛くて幸せで乳離れはポチッと悲しい、けど幸せ💕育児中の面白さと幸福感は周囲&社会に左右されるな!