「どうすれば「社会的価値観の呪縛」から逃れることができるのか」82年生まれ、キム・ジヨン h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
どうすれば「社会的価値観の呪縛」から逃れることができるのか
たとえどんなにイクメンであろうとも、出産や育児の主体になることができない男性側の立場である自分の意見は、女性からみればすべてが空虚だ。それでも言うべきことはある。
家庭や学校、職場、社会で男尊女卑の根深い慣習が残る韓国。私たちの日本も決して「他人事」の話ではない。いまの企業の組織構成や閣僚の男女構成をみれば、すくなくともジェンダー格差において平成の無駄な31年間に殆ど進展がなかったことがよくわかる。
本作品では、家庭や職場、社会で息苦しさを感じる女性に対する男性の不用意な発言や態度も気になるが、昔からの社会慣習や世間の同調圧力に押し込めようとする年配の同性女性(親や親族など)の態度がとても気になった。打ち破る「敵」は異性ではなく、同性や自分自身が持つ今の「社会的価値観」ではないかと。
この映画ではキム・ジヨンは夫や家族の助けもあり、執筆活動に新たな「未来」を見つけ出しているが、すべての女性にとっての汎用的な処方箋を提示しているわけではない。
原作では何ら解決策を提示していないし、社会的な課題に対して属人的な解で「逃げる」のは不誠実だ。決して課題解決にはなっていない。
解決方法は私たち一人ひとりがみつけて一歩づつでも応えていく必要があるということ。日本の根源的な社会課題である、少子化に対するアクションを一ミリも起こせていない今の日本政府にはなんの期待もできないから。
あやばーちゃんさん
コメントありがとうございます。
韓国も日本も個人レベルでは女性の皆さんは一生懸命頑張っていると思います。だけど社会の壁は欧州に比べまだまだ高いのが実状です。日本が本気で少子高齢化の課題を解決するには社会の仕組みを半強制的に民意で変えていくしかないかと。閣僚の大半が男性かつ後期高齢者ばかりの日本の現状は悲劇としか言いようがありません。
映画はシナリオもこなれていて社会性をはらんだエンターテイメントとして良く出来ていた。美男美女のツーショットは眼福でもあった。
ただ、atsuさんのご指摘
社会的な課題に対して属人的な解で「逃げる」のは不誠実だ。問題解決になっていない。
まさに私も同じような実感を持ちました。あの女性上司のように自分で企業するしかないないのでしょうか。