「自分らしさを押し殺す生き方が信仰なのか」パピチャ 未来へのランウェイ yukarinさんの映画レビュー(感想・評価)
自分らしさを押し殺す生き方が信仰なのか
宗教やそれに基づく文化を否定する気はない。
でも、かつてロンドンにいた頃、日本より圧倒的な多さで、よく見かけた本作にも出てくるヒジャブとニカブは、私に好奇心と疑問を抱かせた。
この生き方に疑問を持つことはないのだろうか、と。
その頃から持ち続けている気持ちが、この映画にひかれた理由でもあって。
暗黒の90年代と呼ばれるアルジェリアを舞台に、自分らしさを求めた大学生のネジュマと周囲の人々の話。
自らも内乱の時代に家族と共にフランスに移住した監督の半自伝的な話だという。
ネジュマ役の子の美しさ。
目鼻立ちの整った愛らしさもある顔立ちと、その豊かな長い髪と、どの服もよく似合う体型。
ファッションに興味があり、自らも服を作る。
でも、当時のアルジェリアで求められ始めていた女性の生き方は、そのほぼ全てを隠すように生きることを強いてくる。
それが女性の生き方だ、と。
ネジュマは、逃げずにそれと真っ向からぶつかり続ける。
けれど、数々の過酷な運命が、彼女に襲いかかる。
ただ、自分らしく生きたいと、生きようとしているだけなのに。
「女は家から出ずに信心深く暮らせ」
「外国語を学ぶ必要はない、ヒジャブをかぶれ」
「死にたくなければヒジャブをつけろ」
「女が正しい服装をすれば、何の問題もない」
予告編に出てくるこれらの言葉たち
正直、理解できなかった
本編を見ながら、おそらくこの生き方が出来ない私は、思わずにはいられなかった
この信仰や、それに基づくこの文化は、それを望まない人の命を奪うほどのものなのか、と。
女性が女性である前に、ひとりの人間として、自分らしく生きようとする、その自由と選択を奪うほどのものなのか、と。
本国では上映禁止になったこの作品、ネジュマや彼女の周囲の人のような人々が、少しでも自分らしく生きられることを、願ってやまない。