君の誕生日のレビュー・感想・評価
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ソル・ギョング&チョン・ドヨンの演技力と洗練された構成
イ・チャンドン監督の作品ですごい演技力をみせたソル・ギョングとチョン・ドヨンの二人が夫婦を演じて共演した映画。セウォル号事件で息子を失ったショックの悲しみに沈む母親の姿を描いている。全盛期のデ・ニーロとメリル・ストリープが共演したような感じで、さすがに二人とも演技が巧い。二人ともいろいろな役を演じてきたけれど、特に息子を亡くした悲しみにくれるという設定はイ・チャンドン監督の傑作「シークレット・サンシャイン」と同じで、チョン・ドヨンの演技がまさに嵌まっている。この映画、脚本や演出も素晴らしい。外国から帰って来た夫と、彼や周りにつらくあたる悲しみにくれた妻の姿が少しずつ描かれていく。露骨で余分な説明など一切なく、非常に洗練されている。亡くなった長男の誕生日の描き方も自然に描かれていて、涙を誘う。
癒えない傷
言葉ではなくて映像表現で、今ある主人公の心情を表すのは脚本時点からして容易なようで案外難しい行為だと思う。しかし、この映画はそれを、いともたやすく行ったことに感嘆せざるを得ないというのが観終っての第一印象であった。単なる何気ない細部な部分までに目が行き届いてると言う点においてもである。 内容としては序盤からの構成は見事。終始見入ってしまった自分が居た。 しかし、残念な点はラストシーン近くの誕生日会が、やや間延びしてしまったことである。それまでの編集が見事な分だけ惜しいシーンではあった。もちろん、そこが、この映画の核となってることは分かった上での、あのような演出であることは重々理解はしてるのだが、もう少しコンパクトにしてもよかったのではないだろうか。 しかしながら、全編を通して非常によくできた映画である。相変わらずの韓国映画の質の高さを再認識させられた。
普通に流れてたあの日常を
胸が詰まります。たまらんです。 前情報なしに視聴。女性客ばかりで気まずいなぁと思いながら観ました。 序盤は登場人物の関係性や状況もふわふわしててどう見ていいのか分からなかった。 セウォル号の遺族と気づいてからは、母の悲しさ苦しさ、父のやるせなさが心に刺さりまくって穴あきました。 部屋の絶妙な生活感とかチョン・ドヨンさんの枯れ演技がすごすぎて、、ラストの誕生日会は声上げて泣きました。シーンひとつひとつが丁寧で無駄がない。 当時、ニュースでたくさん映像が流れていても、どこか他人事だった。。 情報が溢れかえっていて凄惨な事件、事故が流し読まれる今こそ!見て欲しい作品です。
共感できず泣けない
2014年4月16日のセウォル号沈没事故の被害者遺族一家の想いを丁寧に描いています。 しかし共感できるかと言えば難しい。事故から5年過ぎても癒されない悲しい気持ちを真夜中に大声でまき散らすのは自分勝手な感じがしました。 遺族と関係者に向けた上映会なら泣けるだろうけど、お金を払って一般の人に見せるにはかなり無理がある題材でした。 韓国の中ではかなり衝撃的な事故だったことは理解できます。しかし心の中の解決できない問題を家族や親族、近所の方に辛く当たるのは無理がある気持ちになりました。お勧めはしにくい。
悲しむだけではない受け止め方
セウォル号沈没事故で息子を亡くした夫婦の悲しみと苦悩を描いた家族再生の物語。 息子が亡くなったことの悲しみを乗り越えようとする家族の話だけではなく、補償金がらみの確執、バラつきのある遺族の思い、当事者じゃない周辺の人々の反応も描かれていて、とても深みのある脚本だった。正直、セウォル号である必要があるのかとも思った(事故を思わせる直接的なシーンはない)が、遺族に話を聞いて作った脚本と知って納得。 いろんな確執や葛藤がありつつ迎える誕生日会。あれはもう泣くしかない。耐えられない。久々にボロボロと情けないくらいに泣いてしまった。 メンタル的にもかなりやられてしまっていたお母さんが、誕生日会で見せる笑顔の素敵なこと。夫にも娘にもそして周りにもトゲトゲしい態度をとっていた姿、そして息子のために号泣していた姿とのギャップを感じさせるいい演技だった。あの笑顔だけで救われる。最後も前向きな未来を感じられるいいラストだった。
【”セウォル号事故"を"忘却の彼方の事"にせず、骨太な社会的メッセージを発信しつつ、遺族が再生していく過程を丁寧に描いた映画。今作を世に出した、韓国映画製作陣の気骨と力量に唸らされた作品である。】
■今作品の素晴らしき点
1.2014年に起こった多くの若者の命が海中に散ってしまった”セウォル号遭難事故”を扱いながらも、事故のシーンを一切描かずに、大切な子供を突然失った残された家族の深い悲しみを絶妙に表現しているカメラワーク及び設定
・息子スホを突然失った喪失感から立ち直れないスンナム(チョン・ドヨン:今や、韓国を代表する名女優)が”思い出の車”を街中で運転している時、聞こえてきた遺族団の講義の声が聞こえてきた際、カーステレオのボリュームを大きくするシーン
・スホが”まだ生きているかの様な”部屋。漸く自分の家に入れた父親ジョンイル(ソル・ギョング:最近の強面を封印して、事故の時、傍に居れなかった事を悔いる父親を抑制した演技で好演している。)が”それを見た時、涙が一気に込み上げて来る表情。
- 同じ父親なので、グッと来てしまったシーン。久しぶりに息子の部屋の扉を開けたが、そこにはもう彼は居ないのだ・・-
2.父親が不在だった理由を敢えて明確に描かず、観客に推測させる手法。
・ミステリアス要素を絡めながら、夫婦の関係が冷え切っている事を描く。久方ぶりに家に帰って来た夫が鳴らすチャイムを聞きながら、じっと夫の表情を見るスンナム。そして、居留守を使って、家には入れない姿。
3.母親の、深い深い慟哭のシーンを見せるタイミング
・序盤は、哀しみを只管に耐え、スーパーで働くスンナム。
だが、今作では、徐々にその哀しみの深さを見せ、あの凄い慟哭がアパート中に響き渡るシーンが・・。
- 当然、涙をこらえるのに必死になるが・・、無理である・・。-
・それを受け入れている臨家の口煩いが、優しきおばさんと息子と、嫌がる娘の姿。そして、妻が服用しているクスリの袋のアップ。驚くジョンイル。
- リアルな描写に驚くとともに、矢張りあの深い深い慟哭には、チョン・ドヨンの凄さを思い知る。ー
・妻スンナムの精神状態を確信するジョンイルの呆然とする姿。
4.海外で働く父に会うために息子の机の中にあった、出国印のないパスポートに必死に”出国印を押してくれ!”と役所に願い出るジョンイルの姿。
- 父として、息子を”あの部屋”から出してやりたかったのだろう・・。矢張り、グッと来てしまったシーンである。-
5.同じ遺族間の微妙な関係性とスンナム達と繋がりのある人々の描き方
・遺族会と関わらないスンナムと、遺族会の人々との微妙な温度差。スンナムは息子の死を”ある理由”から受け入れられていない。
・遺族間でも、国からの補償金を”断固として”貰わない劇中の家族たちと、貰った遺族との関係性
・”国から多額の補償金を貰ったのだろう?”と不躾極まりない言葉を投げつける”腐った”叔父の姿。
-世間でも、そのような見方をする人がいると劇中、遺族の一人が語る・・-
・スホと幼い時からの親友関係だった若者が、スンナムの姿を街中で見ると、隠れてしまう姿。
・遺族団が”残すべき”と主張する遭難した生徒達が学んでいた高校の教室で、一人哀し気な表情で、椅子に座る女生徒の姿。
6.ジョンイルや遺族団により、漸く開催された誕生日会で写された幸せだった頃の家族の風景と、息子が必死に行った事が涙ながらに明かされたシーン
・このシーンでスンナムが息子の死を受け入れられなかった理由が明らかになり、
-それは深い悔悟のためなのだが・・、そしてそれは彼女の責任ではないのだが・・-
・上記の息子スホと関係していた人々の行動の理由も、明らかになる。
- 立派な息子であるし、その友人たちの人柄も素晴らしい・・。-
・そして、スンナムが涙を流しながらも
”もっと早く、誕生日会を開いてあげれば、良かった・・”
と憑き物が落ちたような顔で、口にするシーン。
父、ジョンイルの涙する姿。
<今作は、決して”お涙頂戴”の映画ではない。
近代韓国で起こってしまった”哀しき事故”をテーマに据えた、骨太な社会的メッセージ
- あの”哀しき事故”を忘れるな!-
を発信しつつも、
一度は崩壊してしまった家族が、少しづつ再生して行く過程を、丁寧に描いた作品である。>
■蛇足
・一括りにするつもりはないが、韓国映画界から、頻繁にハイレベルの映画が公開される理由は、”明確”である。
素晴らしきオリジナル脚本を、3年掛けて書き上げた”長編は初である”イ・ジョンオン監督の実力、気概を見抜き、出演した韓国を代表する名優二人の姿を見ても、”その感”を強くした作品でもある・・。
#103 とりあえず泣ける😭
全体的に静かな作りで、チョン・ドヨンとソル・ギョングの演技が光る映画。 亡くなったお兄ちゃんも可哀想だけど、兄を亡くしただけでなく親の愛まで奪われた妹が可哀想だった。 韓国の泣きは見飽きてるけど、いつも泣いてるお母さんよりも最後に大泣きするお父さんのシーンはマジ泣けた。 補償金の額が映画でも出てたけど、セウォル号の場合最高でも3500万円しかもらえない韓国は人の命が安すぎ‼️
パスポート
2014年4月16日のセウォル号沈没事故で高校生の長男をを亡くした家族の話。 事故から2年、母親と小学生の娘が住む家に海外から帰国した父親が久しぶりにやって来て始まって行く。 弁護士費用の為に引っ越したこと、娘が顔を覚えていないこと弁護士費用を払って貯金がなくなったこと等の件から、捕まっていた?ということを匂わせているけれど、居留守から始まり避けられている様な態度ねぇ…。 肝心な時にいなかったのはそうなのだろうけど、面接での事情が示されると、奥さんちょっと厳しくありませんか?と疑問が湧いてくる。まあ、確かに出所後すぐに来ないのは疑問でしかないが…何て思っていたらなるほど絶叫ですか…。 たびたびみられる他の親御さんの寄り合いだったり、墓参りだったりのリアクションは、死生観価値観の違いもあるし、否定するつもりはないけれど、一概には共感出来ず。 集合写真を受け取りに行ったところの電話の件とか正にね。 もし、自分が主人公達と同じ経験をしていたらまた見え方が違うのかも知れないけれど、向き合うこと引きずることは違うと思うのですよね。 今までどこか避けてきた現実と、誕生日会を通じて向き合う様は、痛く悲しく、でも温かくてとても良かった。
泣かせるねー。
セウォルゴウの船舶事故が最近のことすぎてリアル。とにかく泣かされます。誰もが悲しい。亡くなった息子の家族に友達に、周りの人達それぞれの悲しみかあるんだなー、と。いろんな人達がさらっと出てきて最後に全員つなげるのやっぱり確実な韓国映画。とにかく泣かされます。
愛する人を失ったときの哀しみと共感に対する普遍的な解などありえない
本作は2014年4月のセウォル号沈没事故を題材にしつつも、セウォル号事件はこの作品のクリティカルなテーマではない。 実際、事件に関する背景や事故原因、一方的な解釈、責任の追及等は全く触れられていない。 何の前触れもなく、一瞬のできごとで家族のひとりがこの世からいなくなり、残された家族一人ひとり、家族関係が昨日までとは全く別のものに変わってしまう、そんな関係性の破壊と再生の過程を丁寧な描写で描いている。 天災でも人災でも、「家族の死をどうむかえるか」、受けとめかたは100家族いれば100家族とも違うはず。政府や関係者は補償金を払って、早々に幕引きをしたいと思っていると思うが(それはどこの国でも同じ光景)、時間はかかっても遺族それぞれに寄り添った丁寧なアプローチが必要だ。 長男スホをセウォル号沈没事故で失った、家族3人の思いはそれぞれ微妙に違っている。 Jeon Do-Yeon演じる母スンナムは自責の念と、海外に離れて暮らしていた夫への行き場のない感情、そして娘イエソルとの不自然な親子関係。遺族仲間に想いを打ち明けることもなく、社会との関係性を自ら断ち孤独に苛まれている。 Sul Kyung-Gu演じる父親ジョンイルは、事件当時家族のもとにいてやれなかった(理由は後々明らかにされる)苦悩と、自分を責める妻スンナムに戸惑いつつも、寄り添い力になりたいと家族の再生を願い静かに語りかける。 妹イエソルは母親の苦悩を頭で理解しつつも、自分にきちんと向き合ってくれない母(洋服を兄の分だけしか買ってこなかったシーンはとても切ない)と、兄を突然失ったため、自然な感情を押し殺し、努めて明るくいようとしている。父親が再び現れて、戸惑いながら徐々に感情を取り戻していく。 本作の圧巻は息子スホの誕生会。家族3人の感情のズレやわだかまりが溶け、昔の思い出とともにあらたに息子と向き合っていこうという気持ちが芽生えてくる。 会の参加者それぞれの思い出の語りがとても自然でドキュメンタリーのよう(本事件の多くの遺族とのインタビューや誕生会にも参加してきたとのこと)。 誕生会を頑なに拒否してきた母親スンナムが、息子スホがいかに多くの人に愛され今も彼らのなかに生き続けているかを知り、彼女の表情が徐々に「溶け」て再生していくようだ。 分断や苦悩に満ちた現代。社会や家族のなかでの「共感」の力をふたたび取り戻す。苦しんでいる、身の回りの人にそっと寄り添う。そんな強い力や思いをもらう映画だ。
間違いなく今年1番の映画
泣くって感情は特別なもの。【全米が泣いた】とか【号泣しました】とか、どんだけ涙腺弱いねんって思っていた。私の感情がおかしいだけなのかも知れませんが、、、。でも、この作品はそんな私の感情でさえ爆発させてくれました。涙活したい方にお勧めしたい。
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