「セウォル号事件」君の誕生日 M hobbyさんの映画レビュー(感想・評価)
セウォル号事件
2014年に韓国で起きた船の沈没事件を題材にした本作品。
実際に起きた事件や事故を映画化するのは、普通に映画を作るよりも配慮したり、下調べなどいろんな苦労があるだろうなと想像する。それだけに、丁寧に作り込まれているなと感じた。
今回の事件は、犠牲者に多数の高校生が含まれており、また、あまりにその杜撰な船の乗組員や船長などの様子が報道され、他国の事件だったが、私もよく耳にした事件だった。
2014年に渡韓した際には、首都ソウルでデモや追悼のイベントのようなものも目にした。
ある日突然、大切な我が子スホがこの世を去ってしまった、母親スンナム。その現実をかんたんに受け入れることも出来ず、また、遺族の会にも近づかずに一人悲しみを抱きながら生きている。一緒に暮らす娘のイェソルに、どうしても気持ちの持っていきようがなくなり、辛く当たるシーンは本当に辛い。
夫のジョンイルは、理由があって海外におり、事件があった時に家族のそばにいられなかった。その彼がある理由で家族の前に戻ってきた(理由は最後の最後にわかります)
夫婦にとって大切な我が子の突然の死。政府は、遺族へ賠償金を払ったり、事故の被害者に対して国からの進学金援助などをするが、それも本当に心を込めて行うわけでもなければ、社会の中では批判も少なくない。
大切な家族を失って、その後どうやってその現実と向き合うのかは人それぞれ。
友達にしろ、元クラスメートにしろ、それぞれの思いがあり、それが終盤に明かされる。
しっかし、母親の叫び声に近い亡き声には、計り知れない悲しみと喪失感と、やり場のない気持ちが溢れていて、観ているのが本当に辛かった。今もなお、こんなふうに悲しんでおられる方がいるかと思うと気の毒でならない。
離れていた夫も夫で、理由があったにせよ後悔の気持ちが溢れて、最後は感情が爆発。
誕生会で、優しかった息子の姿が、いろんな人の話から聞くことができて、こんなにも慕われていたのだということを知った夫婦。
悲しみの中に、少しの光を見いだせるようなそんな時間を過ごせたようだった。
後半どのくらい泣いてしまっただろうかと思うくらい、ひたすら泣きました。
韓国の名優、ソル・ギョングとチョン・ドヨンの演技は素晴らしかったです。
エンターテイメントである映画を通して、社会の中では起こる悲しみを、敢えて事故の様子や具体的なニュースを伏せて伝えてある。それでも十分に、その事故が与えた悲しみややるせなさ、衝撃、憤りは伝わってくる。
さすがやなぁー、韓国映画。