「ドレーア法の欺瞞」コリーニ事件 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
ドレーア法の欺瞞
ドイツの暗部ドレーア法の欺瞞を暴くシーラッハの法廷ミステリー小説を映画化。
ホテルで年配の実業家ハンスが殺される、犯人コリーニは完全黙秘、弁護人は法廷経験のない新米ライネン、しかも被害者のハンスはライネンの大の恩人という普通なら不適格な胡散臭い設定。
死体の惨状から相当の恨みを持つ者の犯行と誰でも察しはつくだろう、ドイツだからおそらくナチス絡みだと予想は着くが犯人がユダヤ人でなくイタリア人なのでそう単純ではなさそう、仕事絡みの怨恨かとも思えるし・・、ハンスの孫のヨハナとのラブシーンなど挟まり一向に調査は進まないので前半は耐えるのみ。そういえば冒頭のボクシングシーンは何だったのだろう、不屈の闘士と言う面を見せたかったのか・・。
イタリア人迫害は意外だったが早々にイタリアが降伏してしまいナチスとしては不甲斐なく見下していたのだろう、ナチスの戦争犯罪の免責時効を狙ったドレーア法は本作で初めて知りました。
ナチスが軍資金や技術資料をもって敗戦前に国外逃亡、実業家として成功していた例はよく聞いたので温厚で面倒見の良い好好爺が元ナチスという設定もあながちフィクションともいえないのだろう、映画だからドラマ仕立ては分かるが骨太のテーマだけに色恋沙汰や親子の確執などのサイドストーリーは要らなかった気がしました。特にヨハナはロンドンに夫が居るようだし「祖父が支援しなかったらあんたなんかケバブ店の店員がいいところ」とライネンを明らかに見下したセリフを吐いていただけにしおらしいところを見せても白けます。見方を替えればライネンは恩を仇で返したようにも思えます、著者のシーラッハさんの祖父も元ナチスだったそうですから複雑な思いをライネンに込めたのかも知れませんね・・。