「ピザ屋の姉ちゃんがカッコいい!」コリーニ事件 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ピザ屋の姉ちゃんがカッコいい!
予備知識なしで観たため、展開が予想できなかった。要は黙秘を続ける殺人犯であるファブリツィオ・コリーニ(フランコ・ネロ)の動機を解いていく物語であるが、犯行の残忍な状況から怨恨だとわかるものの意外な史実が浮かび上がってくるというもの。
犯行に使われた拳銃がワルサーP38というキーワードも序盤に登場し、新米弁護士カスパー・ライネンが記憶の片隅に残っていたものと符合するという点で深みにはまっていく。カスパーの恩師でもあるマッティンガー教授がそのまま検察側となり、ここでは検事も弁護士と同じように民間なんだというドイツの制度にも驚いてしまいました。
この教授がまるで司法取引のように減刑する話をカスパーに持ちかけるところや、被害者の孫ヨハナがカスパーの元恋人だったところ、さらには捨てられたという確執から不仲となっているカスパーに対してコリーニが「仲良くしとけよ」などと呟くところと、注目すべき点が多い。
そんな興味の湧く題材の中で、ちょっと難しいのが“謀殺”と“故殺”という法律用語。日本の今の刑法には区別がないが、言ってみれば計画的殺人か否かという違いだ。もちろん謀殺の方が罪が重くて最大で終身刑(ドイツには死刑がない)。教授にしてみれば、コリーニが黙秘を続けて裁判を長引かせることを避けたいがために、「自白すれば故殺に持ち込んで刑を軽くしてやる」とカスパーに語ったのだった。
マッティンガー教授にも恩があるし、なにしろ被害者マイヤー氏は彼を育ててくれた恩人なので、被告人は憎むべき相手。さっさとこの公判を片づけたい気持ちもあったが、初めての弁護を疎かにするわけにはいかないと、弁護士としての矜持が許さなかったのだ。おかげで審理を中断させ、4日間のうちにイタリアへ飛び、大嫌いな父にも翻訳を頼むことになるのだ。
マイヤー氏がナチスのSS将校だった事実、さらにコリーニが一度はマイヤー氏を訴えたことがあるという事実、却下された理由などなど、二転三転する証拠対決が緻密であり、とても素晴らしい。もう涙なしでは見ていられない!ナチスの行った10倍返しの報復はなぜ認められたのだ?などと、国際法的にも興味がわくほど法の矛盾といったことまで踏み込んでいく重厚なストーリーでした。
強力な証人となった通訳の息子さん。ナチスの協力者として死刑になったという事実も本当に悲しい事実。なぜ何もしない通訳が死刑となり、虐殺実行者がお咎めなしなのか?という世の矛盾も伝わってきます。来ないかと思っていたのに証言台に立ち、コリーニとの関係も浮かび上がって、ついには喋る気になってくる・・・
ただし、動機が明らかになったから良しではなく、どう考えても“謀殺”にしかならない。減刑という弁護をするどころか逆に重たくしてしまったのだ。しかし、ナチスの罪を暴き、「ドレーアー法」という悪法を糾弾する上では国家をも断罪した形となるのです。教授がその草案に関わっていたことは敢えて問題にせず、「本当に法治国家なのか?」という答えを引き出したに過ぎない。戦争も知らない若造が!こしゃくな・・・といった心も見え隠れする。
未だにドイツ国民はナチスの行った罪を恥じ、反省さえしている。挙手するときに人差し指を突き出す形になっている小学生の姿も思い出される。この作品もまたナチスの罪、さらにその後の残党が大臣になった事実をも糾弾しているのです。そして無念を晴らしたものの悲しい結末。コリーニの気持ちが手に取るようにわかる最後でした。
ラストのテロップには多くの戦争犯罪者が許されてしまった事実が書かれていて、これはもうドイツだけの問題じゃないというメッセージも伝わってきます。日本でもA級戦犯のはずなのにアメリカとの取引によって逃れ、総理大臣にまでなった人がいますもんね・・・
kossyさん、コメントありがとうございます。いや、偉そうなこと書きつつ、原作まだ全部読んでません。もったいない~!がひとつ。仕事の合間に読みたくない~!がひとつ。とても薄い文庫本なので、あっつうまに読めます。だからこそ勿体なくて読めない状態です。馬鹿だと思います、自分。すみません💦いつも言い訳ばかりです!
今やっと原作読んでるんです。チョー薄い文庫本ですが読めない!ドキドキしてしまうから。あと読了もったいない~!あと仕事が始まって気が散ってしまう~!と言い訳ばかりです!